
コミュニケーションはまず「ボンジュール」から

旅行先などで道に迷って、知らない人に声をかけるときは、日本ではまず「すみません」という一言から入りますよね。フランスでも「Excusez-moi(エクスキューズモア)」という「すみません」を意味するフレーズがありますが、実はこの一言から入るのは御法度。場合によっては失礼と捉えられることもあります。日本の習慣が染み付いている筆者も、このようなシチュエーションで「すみません」と言ってしまったことが過去に何度かありましたが、「そういう風には言わないよ」とフランス人に言われてしまう始末・・・。
では、何と言って声をかけるのかといいますと、「ボンジュール」(こんにちは)。日本人からすると、誰か知らない人から「こんにちは」といきなり話しかけられると、距離の近さにちょっと驚いてしまいますが、フランスでは「ボンジュール」と言って声をかけることが当たり前なんです。
そもそもフランスでは、コミュニケーションの最初は「ボンジュール」から始まります。例えば、お店に入店するときは、必ず「ボンジュール」と言って、お店に入らなければなりません。「ボンジュール」はフランスにおいて、挨拶の基本のマナーなのです。
男性は握手、女性はビズ

フランスでは、ホームパーティーなどで初めて会う人や知っている人に出会うときに、男性は握手、女性は「ビズ」と呼ばれる頬と頬をくっつけてする挨拶のルールがあります。
握手はそもそも「武器を持っていないことを示す」ために行われるようになった欧米での挨拶の習慣のひとつ。日本では挨拶の際にお辞儀することが習慣となっているので頭を下げますが、フランスではしっかり目を見て握手をしなければなりません。握手のときに目を逸らしてしまうと失礼にあたるので、注意しなければなりません。

挨拶において、頬と頬をくっつけることは、日本だとかなり驚きの挨拶の仕方かもしれません。知り合いのフランス人女性が、東京に住むフランス人の友達にクラブで会ったときにビズをしたら、「きゃー、みんなでキスしてる!」と、隣に居合わせたほかのお客さんたちに驚かれたのだとか。日本人からすると距離が近すぎるように感じますが、逆にフランスでビズをしないと、「この人は私と親しくなりたくないのかな」「私と距離を取りたいのかな」など、勘ぐられる理由となるのです。
コロナ禍で握手やビズは自粛中
フランスでは3月のロックダウン以前から、握手やビズで挨拶をしないようにと自粛のお達しが政府からありました。というのも、フランスで新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大した理由のひとつが、握手やビズであると考えられたからです。フランスでは、握手やビズをする人はほとんどいなくなりました。ロックダウン解除の直後には、伝統的な挨拶方法ができなくなり、「距離感を感じてしまって寂しい・・・」と話すフランス人もいました。

しかし、フランスのメディアは握手やビズに代わる挨拶の方法を紹介して話題となっています。例えば、2006年の鳥インフルエンザや2014年のエボラ出血熱の際に、アメリカの保健当局が握手の代わりに行っていた、「Elbow bump」(肘バン)と呼ばれる、2人の肘が触れる挨拶の仕方や、足と足でタッチして挨拶する「武漢シェイク(武漢握手)」など、非接触型の挨拶方法が取り入られつつあります。
フランスでは、ここ最近、以前のような挨拶の仕方である握手やビズがほとんどなくなったことが不思議と当たり前のようになってきています。新型コロナウイルスの収束後には、どのような挨拶の仕方が主流となっているのでしょうか。
今回はフランスの挨拶の仕方をお届けしました。フランスに来た当初は、日本とはかなり違う挨拶の仕方に戸惑ってしまった筆者ですが、フランス流の挨拶をすることによって、フランス文化にちょっぴり溶け込んだような気がしました。挨拶を通して、ほかの国のことを理解する。挨拶は異文化を知る最初の手段のように思います。

あなたが知りたかったことが、この記事で参考になりましたか?
Nanako Kitagawa ライター
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。
【世界の立入禁止スポット人気記事ランキング】遺跡や聖地・心霊スポットまで
Jan 2nd, 2023 | TABIZINE編集部
遺跡や宗教の聖地、人が住まなくなった廃墟の街、心霊スポットなど、世界のミステリアスで美しい立入禁止スポットを紹介する連載「世界の立入禁止スポット」。これまで公開した記事の人気ランキングを発表します。
【今行ける海外2022】「フランス」の渡航条件情報・ワクチンやパスポート
Nov 5th, 2022 | TABIZINE編集部
新型コロナウイルスに関連して、海外への渡航条件や入国制限措置は刻々と変化しています。海外旅行の際は、最新情報の事前確認が必須です。世界各国・各エリアの入国に関する情報から、帰国の際の水際対策までをまとめてお届け! 今回は2022年11月時点でのフランスの情報を紹介します。
【あの国はなぜ親日国なのか?】「フランス」が欧州の中でも親日的な4つの理
Oct 24th, 2022 | アンダルシア
世界には「親日」といわれる国や地域がたくさんあります。海外旅行をするときも、親日国を訪れると、なんとなく過ごしやすかったり、現地の人とのコミュニケーションがスムーズだったり、なんてことがないでしょうか? そこで、比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者が、なぜその国や地域が親日なのか、政治や歴史の背景から解説します。
【世界の立入禁止スポットvol.1】2万年前に人類が残したアート〜フラン
Sep 18th, 2022 | あやみ
世界のミステリアスで美しい立入禁止スポットをご紹介する新連載。第1回は、フランスのモンティニャックにある世界遺産「ラスコー洞窟」にフォーカスしました。人類最古のアートと称される見事な洞窟壁画の数々には目を見張るものがあります。そんなラスコー洞窟は誰が発見し、どうして立入禁止になってしまったのでしょうか?
マネしてみたい!?フランス流、残暑を快適に過ごす4つのコツ
Aug 31st, 2022 | sweetsholic
記録的な熱波に見舞われた、2022年度のフランスの夏。今年は40℃を超える日も目立ち、外を歩けば汗だく、おまけに家にはクーラーなし(!)。フランス人はどのような暑さ対策をしているの? ということで、残暑を快適に過ごすフランスならではの方法を、現地よりレポートします。
今行きやすい国ランキング!外国人観光客訪問数ランキングTOP10の入国緩
Aug 28th, 2022 | あやみ
欧州を中心にコロナによる入国規制がなくなりつつある今。円安、燃油高、物価上昇率などの影響が少なく、もっとも行きやすい国はどこでしょうか? 今回は、まさに今、行きやすい国TOP4をご紹介。また、2019年の外国人観光客訪問数ランキングTOP10と、それぞれの国の現在の入国緩和状況もあわせてご紹介します。
【2022年最新版】日本が1年ぶりに単独1位に!世界最強のパスポートラン
Aug 25th, 2022 | あやみ
ビザなしで渡航できる国・地域の数をランキングにした、イギリスのコンサルティング会社「ヘンリー・アンド・パートナーズ(Henley & Partners)」の最新版が2022年7月19日に発表されました。最強ランキング常連の日本。さて、今回のランキングにはどんな変動があったのでしょうか?
【フランスなるほど雑学13】シャンプーすると髪がパサパサに !?フランス
Jun 20th, 2022 | 北川菜々子
現地の人には当たり前なことでも、日本人からするとあっと驚いてしまうような雑学が世界にはあります。気がつけば在仏歴13年になる筆者も、びっくりしてしまうようなフランス人の行動や習慣、文化などに日々遭遇しています。理由や文化背景を知れば「なるほど、そうだったのか」と思わず納得してしまうフランスの数々の雑学。今回はフランスの「水」事情をお伝えします。
【フランスなるほど雑学12】サバイバルなフランスの「宅配事情」とは?
Jun 1st, 2022 | 北川菜々子
現地の人には当たり前なことでも、日本人からするとあっと驚いてしまうような雑学が世界にはあります。気がつけば在仏歴13年になる筆者も、びっくりしてしまうようなフランス人の行動や習慣、文化などに日々遭遇しています。理由や文化背景を知れば「なるほど、そうだったのか」と思わず納得してしまうフランスの数々の雑学。今回はフランスの「宅配便」事情をお伝えします。
【フランスなるほど雑学11】洗車もあまりしないし傷だらけでもOK!?フラ
May 4th, 2022 | 北川菜々子
現地の人には当たり前なことでも、日本人からするとあっと驚いてしまうような雑学が世界にはあります。気がつけば在仏歴13年になる筆者も、びっくりしてしまうようなフランス人の行動や習慣、文化などに日々遭遇しています。理由や文化背景を知れば「なるほど、そうだったのか」と思わず納得してしまうフランスの数々の雑学。今回はフランス人の「車」事情をお伝えします。