
漁師家庭で受け継がれてきた郷土食

(C)農林水産省
まずは「ごまだし」について少々説明させてください。ごまだしとは、焼いた魚の身を胡麻、みりん、醤油、砂糖とすり合わせた調味料のこと。魚の旨みと胡麻の風味が濃厚で、お湯を注ぐだけでおいしい出汁が完成。うどんやお茶漬け、さらには洋食など、さまざまな料理に合うのも魅力です。
塩分が高いため作り置きも可能とあって、まさに漁師町ならではの保存食。このごまだしを2番めに商品化したのが「合同会社漁村女性グループめばる」(以下めばる)なのです。
漁師の妻たちにより結成!「漁村女性グループめばる」

「めばる」の作業所が佇むのは佐伯市・鶴見漁港。複雑に入り組んだリアス式海岸が続く海域は豊後水道。山々から天然のミネラルが豊富に流れ出し、さらに2つの海流が混ざり合う急流域で、日本屈指の好漁場と知られています。
鶴見漁港周辺では巻き網漁が盛んで、獲れる魚は多種多様。なかでもアジやサバ、イワシの水揚げ量は東九州トップクラスなのだそう。

「めばる」が発足したのは2004年。こちらの加工所で週に3〜4日ごまだし作りが行われています。縁あって、見学させていただきました。

訪問した際は、魚のほぐし作業の真っ最中。お母さんたちが手際よく黙々と作業を進めています。

こちらはシイラという魚。小骨も一本一本丁寧に取り除きます。大変手間のかかる作業ですが、魚を熟知するお母さんたちならお手のもの!
水揚げ直後の魚を使うから、抜群のおいしさに

旨みが詰まった頭やエラもしっかり身をほぐしていきます。メンバー5人は全員漁師の奥さん。それゆえ水揚げ直後の新鮮な魚が入手できるのだそう。鮮度抜群の魚を使うことによって、クセがなく、素材の味が生きた仕上がりに。これこそ「めばる」の強みなのです。

ほぐした身はグラインダーですりおろされ、鍋で醤油、胡麻、みりん、砂糖とともに煮つめてペースト状に。瓶に詰めたらできあがりです。

「市場に並ぶ前の新鮮な魚を使えるのは、漁師の妻ならではの特権!」
そう話すのは代表の桑原政子さん。日本人の魚の消費量が減っていく中、「少しでも多くの人に魚のおいしさを知ってほしい」という考えから佐伯の郷土食「ごまだし」の普及に乗り出したのだそう。
「魚と胡麻をたくさん使ったごまだしは栄養満点。骨を取る面倒な作業は私たちおばちゃんが引き受けるから、若い人はごまだしをどんどん食べて栄養つけて!」と桑原さん。
「めばる」のメンバーは平均年齢60代後半。桑原さんをはじめ、みなさん元気で生き生きした笑顔が印象的でした。
添加物不使用!素材へのこだわりもひとしお

「めばる」の特筆すべきは新鮮な魚を使うことだけではありません。醤油は本醸造醤油、砂糖は喜界島産さとうきび糖など、素材へのこだわりも徹底されています。保存料などの添加物は一切不使用。
生産するごまだしは、エソ、タイ、鯵、シイラの4種類。それぞれの魚によって風味や味わいが異なるので、食べ比べするのも楽しいですよ。
「牛乳やチーズとの相性もバッチリ。グラタンやバーニャカウダに使ってもすごくおいしい。万能調味料としてたくさんの料理を楽しんで!」(桑原さん)

お母さんたちが作るごまだしは、少しずつ県外にも広まり、次第に販路も拡大。今では百貨店や成城石井、DEAN&DELUCAなどの店頭に並ぶほどに。
さらに桑原さんは著書『海の恵み 佐伯ごまだしレシピ』(講談社エディトリアル)を出版、また料理教室や販売活動で全国各地を飛び回っておられるのだとか。パワフルな活動に頭が下がります・・・。
「めばる」のごまだしは、大分空港売店でも販売。賞味期限は5カ月と長めなので手土産にもおすすめです。漁村のお母さんたちが作る、栄養も愛情もたっぷり詰まった逸品をぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
[Photos by Nao]

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Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
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