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総重量2300トン!30個の巨石で作った「石舞台古墳」現地ルポ【奈良橿原&飛鳥の旅1】

Posted by: 鈴木幸子
掲載日: Apr 6th, 2021.

いや~、巨石の古墳があったとは驚きです。古墳の外観は土とばかりと思っていました。奈良の明日香村に残る石舞台古墳は、常に有名古墳サイトで人気ナンバー1に挙がるスター古墳。日本の国の骨格が築かれた飛鳥時代、大和の旅を6回にわたりご紹介します。

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古墳について簡単におさらい


まずは軽く歴史のおさらいから。これから3度にわたってご紹介する古墳は、大和政権が国内をほぼ統一する「古墳時代」(3~6世紀)と、聖徳太子や蘇我入鹿、中大兄皇子などが登場する「飛鳥時代」(7世紀)のものです。日本の歴史は、考古学的には弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代、平安時代・・・と続きますが、卑弥呼の邪馬台国が登場するのは弥生時代。古墳時代はその後です。


古墳とは、3世紀頃から7世紀頃にかけて築かれた、土を高く盛った墳丘をもつ墓のこと。当時の有力者が権威の象徴として作り、地位によってその大きさは違ってきます。古墳時代中頃になると、全国の至るところで小古墳が爆発的に増えたそう。現在、国内に残る古墳は16万基以上ともいわれています。形状は、円墳、方墳(四角)、前方後円墳、ホタテ貝型、八角形墳など10種類以上あります。


副葬品は時代によって変わりますが、銅鏡、武器や武具、勾玉などの装飾品、土器、埴輪など。上写真(高松塚古墳、海獣葡萄鏡)のようなデザイン性の高い銅鏡もあります。

石舞台古墳の概要


石舞台古墳は、7世紀初め頃に作られた、両袖式・横穴式石室をもつ方墳または上円下方墳。わが国最大級の巨大な石室(玄室/棺を納める部屋)が見ものです。墳丘の盛り土(封土)が全く残っておらず、石室が露出した独自の形状をもち、天井石の上面が平らで舞台のように見えることから「石舞台」と呼ばれています。

石は全部で30数個使われており、もっとも大きな南側(写真左)の天井石は77トン(観光バス約6台分)、総重量は約2,300トン。付近に大和政権の有力豪族、蘇我馬子の庭園があったことから、馬子の墓ではないかといわれています。蘇我馬子といえば、聖徳太子とともに天皇中心の国づくりを目指し、仏教の普及に力を注いだ大和政権下のスーパースターです!

とにかく、美しい石室の内部!


長閑な田園風景の中に突如と現れたその巨石群の物体!それまで持っていた「古墳」のイメージがガラリと崩れます。この石造物は、古墳内部に収める棺のための石の部屋。つまり石室。玄室(げんしつ)とも呼びます。地上に出ている部分は天井石です。


石室の中に入ってみて、また仰天。圧倒的な石組の美しさに目を見張ります。石室の大きさは、長さ7.7m、幅3.5m、高さ4.7m。内部は8坪(約16畳)。ほぼ同じサイズの長方形の石が規則正しく積まれ、巨石の隙間には、小さな石がはめ込まれています。ご覧ください! 天井から薄日が差し、石の側面に生えた苔がまた風情を醸し出しています。

鑑賞ポイント1:高度な土木・運搬技術


こちらは西側からみた外観です。石の組み合わせ方にご注目ください。


大小の石が、バランスをとりながらうまく積み上げられています。


石は、明日香村の近くで採れる、黒い斑点入りの石英閃緑岩(せきえいせんりょくがん)、つまり花崗岩が使われています。


これらの巨大な石を、人の手でどう運び組み立てたかというひとつの説が上のイラストです。1段目の石は地面を掘って入れ、石がはみ出た部分の外も中も土で埋める。2段目、3段目の石は上から置き、同様に土で埋める。全部埋まったところで天井石をのせて、横穴から土を掘り出す。そして中に棺を入れる、という説が有力です。

飛鳥時代に大地震があったという記録が残されていているようですが、現在でも壊れずに残されているということは、大変高度な土木技術であったという証です。


「両袖式」とは、石室の出口の袖部を左右に有するものを言います。

鑑賞ポイント2:治水対策も万全


こちらは、羨道(せんどう・えんどう)といい、石室に通じる通路。この羨道の上にも天井石があったそうですが、現在はありません。


元々、石室は盛り土に覆われていましたが、雨が降れば雨水は石室にも落ちてくるので、雨水を外に出すための排水溝も作られています。それも横穴の方へ流れる仕組みで、棺が水浸しにならないよう工夫されています。

鎌倉時代に泥棒が入っていた!


玄室に収めてあった石棺(棺)のレプリカが敷地内に展示されています。発掘当時、壊された石棺の破片(凝灰岩)と灯明皿が残っていたことから、鎌倉時代に盗堀されたことがわかったそうです。石棺の材料は、加工しやすい柔らかい凝灰岩(石灰岩)が使われており、これは二上山(ふたがみやま)から運ばれてきました。石舞台古墳の西の方角にこの二上山を仰ぎ見ることができます。


石舞台というネーミング。これは、満月の夜にキツネがこの天井石の上で舞を見せた、との言い伝えが残っていることからも来ているそうです。


ちなみに、この外堤に積まれた貼石(はりいし)も1400年以上昔の築造当時のものとのこと。想像を絶する年月の遺物が原形のままで残り、21世紀に出合えるという奇跡!古墳初心者でも十分に満喫できる古墳です。

古墳の周りには約60本の桜の木が植えられいて、春にはお花見スポットに!これからの季節は新緑を愛でながら、先人の知恵が詰まった石舞台古墳をゆっくりと鑑賞してみませんか。

※新型コロナウイルス感染症減少のタイミングで、日本旅行のツアーが開催される予定です。

石舞台古墳
住所:奈良県高市郡明日香村島庄133
電話:0744-54-9200
http://asukadeasobo.jp/kankou/ishibutai

[All Photo by SACHIKO SUZUKI]

鈴木幸子

sachikosuzuki 旅行記者、エディトリアル・ディレクター
出版社勤務や地球の歩き方編集を経て2001年に独立。世界60か国以上を頻繁に取材し、一期一会のハッピーな記事を書いています。JTBるるぶ「アンコールワットとカンボジア」初版制作。著書『もち歩きイラスト会話集タイ/池田書店』、『みやざきの自然災害』ほか。有限会社らきカンパニー主宰。「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒の名前です。


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