大阪府和田市→大阪府岸和田市
以上、訂正いたしました。
世界の選手団を魅了した日本の桃
桃といえば、もともと中国が原産のフルーツです。しかし古くから日本でも栽培されていて、邪気を払う食べ物として重宝されてきたようです。
桃の花は春の季語。桃の実は秋の季語として歌にも詠まれてきました。日本人にとっては親しみ深いフルーツで、出荷量の多い産地としては山梨県・福島県・長野県が現在のトップ3です。
こうした桃が海外の選手団の口に入ったわけですが、「甘い」「おいしい」「こんなに甘い桃を食べた記憶がない」と口々に評価された理由はそのとおり、日本の桃が世界で最も甘いと評価されているからなのです。
「世界で最も甘い桃」は最初に大阪で生まれる
『ギネス世界記録』にも「世界で最も甘い桃」として、大阪府岸和田市東部の包近(かねちか)で栽培される「まさひめ」という桃が、現に掲載されているそうです。つくり手はマルヤファームの松本隆弘さん。産地としての包近は全体で年間120トン程度しか出荷していないため、例えば長野県の出荷量と比べると100分の1の規模に過ぎません。
しかし、都市からすぐ近くという近郊農業特有の立地を生かして、ぎりぎりまで収穫せずに木の上で完熟させる栽培方法を可能にしました。その手法で松本隆弘さんは、25.5度を上限とする糖度センサーの針が降り切れるくらい甘い桃「まさひめ」を誕生させたといいます。
ちなみに桃の平均的な糖度は11~13度です。必ずしも糖度が高ければ甘く感じるとは限らないようですが、シュガースポット(黒い斑点)の出たバナナの糖度が21~24度とされていますので、あの完熟バナナ以上の糖度の桃が生まれたのです。
とはいえ、糖度が高ければ甘く感じるとは限らないと先ほども書いたように、「まさひめ」もその甘すぎる甘さゆえに「しつこい」とマイナスの評価を当初は受けたそうです。そこで松本隆弘さんは、品質を改良しながらギネス世界記録に挑戦し、結果として2015年に糖度22.2度の桃が「世界一甘い桃」として認定されました。
福島では糖度35度以上の桃も
一方で日本の産地を広く見渡すと、糖度だけでいえば「まさひめ」を超える桃も続々と生まれています。2020年の米ABCの報道でも、糖度(sugar content)32度に達する福島の桃が紹介されています。
そうです。原発事故で風評被害に遭った福島が産地の桃です。
具体的には古山果樹園の古山浩司さんの育てる桃で、公式オンラインショップを見ると、糖度35度以上の「とろもも」が1個200万円で販売されています。
同じ果樹農家を取り上げたNHKの2018年の番組では糖度23.4度とも放送されています。米ABCの取材を受けるまでの2年で糖度が改良されたと考えられます。米ABCの取材では、果樹農家の古山さんが40度の糖度を目指すと発言していました。現在進行形で挑戦は続いているのですね。
試行錯誤を続けながら高品質の果菜をつくる技術
もちろん福島を訪れた外国人選手団に、糖度35度以上の「とろもも」が配られたとは、収穫量から判断しても考えられません。しかし、一般的な桃よりも甘い桃が配られたはずで、そのおいしさが瞬く間に選手団の間で話題になりました。
海外を頻繁に旅する人なら誰でも気付くと思いますが、日本以外で食べるフルーツはそれほど甘くないことも少なくありません。欧米の一流ホテルの朝食で出るフルーツであっても、東南アジアにあるフルーツ大国のマーケットで食べる果物であっても、期待して口にすると日本のフルーツとのギャップが感じられて、かえってがっかりしてしまうことがあります。
日本の農業は「ガラパゴス化」している、国際競争力がないなどの指摘もたくさんあります。しかし、試行錯誤をねばり強く続けながら高品質の果菜をつくる技術に関していえば、世界で一番、少なくともトップクラスにあるのではないでしょうか。
このオリンピック・パラリンピックをきかっけに、日本のフルーツが世界中に飛び出すようになればいいですね。
[参考]
※ 【農家の贅沢【悦】】糖度35度以上の桃!1個 – 古山果樹園
※ 糖度計が振り切れた。ギネスが認める世界で一番甘い桃。 – やるやん!大阪農業
※ 甘さ世界一「包近の桃」 岸和田の農家ギネス登録 – 産経新聞
※ Japan is home to the world’s sweetest peach, and it just happens to grow in Fukushima – ABC NEWS
※ 糖度ギネス記録越え!福島の超高級桃1個5万4000円!原発事故の風評被害はね返したい
※ 桃の豆知識①世界一甘い桃は日本産!【鈴木杏樹のいってらっしゃい】 – ニッポン放送
※ ももの生産量はどこの県が多いのですか。 – 農林水産省
※ バナナの食べごろは – 西山青果
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