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「〇〇高速道路」と呼ばれる路線は4つ

名神高速道路
全国高速道路建設協議会によると、2022年(令和4年)3月5日現在で、日本の高速道路の延長(すでに走れる部分)は9,128kmあるといいます。地球を4分の1周移動できるくらいの距離ですね。
日本各地にいろいろと路線がありますが、これだけ高速道路が各地を走っている中で、実は「〇〇高速道路」と呼ばれている路線はたった4つしかないのです。
路線番号で言えばE1とE1A。
- 東名高速道路(E1)
- 名神高速道路(E1)
- 新東名高速道路(E1A)
- 新名神高速道路(E1A)
名神高速道路は、本格的ハイウエーとして日本で最初につくられた路線です。東名高速道路も1969年(昭和44年)開業で、日本の高度経済成長期にデビューが重なりました。いずれも歴史ある路線と、その代替機能を果たす新路線ですね。
一方で、これら4路線以外の高速道路は「〇〇自動車道」となっています。冒頭でも紹介した北陸自動車道のような感じ。この違いには、どのような理由や背景があるのでしょうか。
「東名高速道路」も「名神高速道路」も通称

名神高速道路 (C) Osaze Cuomo / Shutterstock.com
その真相を知ろうとしたら、高速道路の法定名が記された関連の法律を見るとわかりやすいです。
例えば、国土開発幹線自動車道建設法の別表に各路線の法定名が書かれています。一見すると、国土の普遍的開発をはかる高速道路の一覧に、東名高速道路も名神高速道路も名前がありません。日本を代表する路線なのでおかしい話です。
しかし、理由は意外に簡単。東名高速道路も名神高速道路も正式名称のように感じがちですが、どちらも実は通称なのですね。
東名高速道路は法定名を「第一東海自動車道」といいます。名神高速道路については、「中央自動車道西宮線」(中央自動車道は富士吉田線・西宮線・長野線がある)が法定名になります。
第一東海自動車道も中央自動車道(西宮線)もいわば「〇〇自動車道」です。言い換えると、高速道路の法定名は「〇〇自動車道」がスタンダードで、通称である「東名高速道路」も「名神高速道路」も法定名を見る限りでは例外ではないのですね。
例外的に通称を採用している

とはいえ、自動車を走らせていると「東名高速道路」や「名神高速道路」との文字が道路標識に見られます。この理由は何なのでしょうか? その理由については、NEXCO西日本の公式サイトに書かれています。
<「東名高速」「名神高速」という通称が広く使用され、一般的に定着して馴染みのある名称となりました。この歴史的な背景を考慮し、「高速道路」はお客さまが最も受け入れやすい道路名称として例外的に採用されたものです>(NEXCO西日本の公式サイトより引用)
日本の高速道路としていち早く誕生した「東名高速道路」と「名神高速道路」は、開業期に大変な注目を国民から集めました。「第一東海自動車道」「中央自動車道西宮線」が法定名ながら、通称の「〇〇高速道路」のほうが利用者に定着しており、ドライバーにも受け入れられやすいとの判断から、例外的に通称を道路標識などに採用しているのですね。
その例外を認めた路線に、代替機能を果たす新路線が生まれます。「東名高速道路」と「名神高速道路」が圧倒的に認知されている事実を考えれば、その新路線にも例外的に「高速道路」の名前を付けた方がいいとの判断になり「新東名高速道路」「新名神高速道路」の名称が道路標識などにも採用されたのですね。
いわば、私たちの使う「高速道路」の言葉自体が通称との話。そもそも論で言えば「〇〇自動車道」のほうがセオリーなのですね。
新型コロナウイルス感染症の影響でなかなか遠出が思うようにできない状況が続いています。しかし、自動車での旅行は、不特定多数の人との密な対面を避けられるので、コロナ禍においても安心できる旅の形なのではないでしょうか。
ドライブ旅行へ出かける際には、高速道路の名称にも注目してみると、長い道中の楽しみが1つ増えるかもしれませんよ。
[参考]
※ 高速道路ナンバリング – 国土交通省
※ なぜ「高速道」に種類が存在? 全国に4つしかない「高速道路」とは – くるまのニュース
※ 「日本に高速道路は4本のみ」の豆知識は通称名から広まったウソ! 知られざる高速の正式名称と本当の区分 – WEB CARTOP
※ よくあるご質問 – NEXCO西日本
※ 高速道路のこれまでの経緯について – 国土交通省
※ 高速自動車国道法 – e-gov
※ 国土開発幹線自動車道建設法 – e-gov
※ 高規格幹線道路網の現況 – 全国高速道路建設協議会
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の媒体に日本語と英語で執筆を行う。北陸3県を舞台にしたウェブメディア『HOKUROKU』の創刊編集長も務める。
https://hokuroku.media/
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