日本の伝統菓子「おはぎ」
日本では古くから小豆は、赤色が「邪気を払う」として重宝され、和菓子や季節の行事の料理に利用されてきました。「おはぎ」もそのひとつ。春と秋の彼岸にご先祖様へのお供え物としてつくられ、家族や親族が集って食す伝統的な餅菓子です。
縁起が良く、分けて食べやすいことから、お祝い事やお祭りなどのイベント時に登場することも多く、また、腹持ちがいいのでおやつにも食べられています。伝統食とはいえ素朴で気取らず口にできるので、日常の暮らしの中に溶け込んでいる和菓子です。
定番はあんこときなこ
おはぎの基本的な材料は、もち米とあんこです。蒸したもち米を俵型に成形し、小豆と砂糖でつくったあんこで包むと、誰もが知る王道のおはぎの完成です。
もうひとつの作り方は、もち米であんこを包む方法。周りにきなこをまぶして食べることが多く、あんこでくるんだおはぎと、きなこをまぶしたおはぎがセットで販売されているのをよく見かけます。
しかし、地域によっては、きなこ以外の食材もおはぎに利用されていることが多々あります。その代表例が関西の「青のり」です。
東西で違う!3色おはぎ
関東ではあまり見かけない「青のり」のおはぎ。その発祥は京都ともいわれ、昭和の時代から関西圏で青のりのおはぎが食べられるようになったのだとか。関西ではお好み焼きやたこ焼きのトッピングで青のりが使われており、日常的に青のりを口にする機会も多く、おはぎとして味わうのも受け入れられやすかったのかもしれませんね。
前述のとおり関西では、「青のり」を含めた3色おはぎが親しまれていますが、関東では写真のように「きなこ・黒ごま・あんこ」が一般的。黒ごまのおはぎは、あんこ・きなこに次ぐ3色目のおはぎとして、北海道から中部地方までの広いエリアで親しまれています。
地域によって変わり種おはぎも
また、青のりや黒ごま以外にも、その地域ならではの変わり種おはぎがあります。
京都では白あんに抹茶を加えた「抹茶あん」のおはぎが人気。仙台を中心とする東北南部の一部地域では、黒ごまではなく、「ずんだ」あんのおはぎが主流です。「ずんだ」は枝豆をゆでて皮を取り除き、砂糖を加えてすりつぶして作るあんこ。鮮やかな黄緑色が特徴で、鼻を抜ける枝豆の香りがクセになりますよ。
そして、最近、注目を浴びているのがカラフルな進化系おはぎです。
行列ができる東京・桜新町のおはぎ専門店「タケノとおはぎ」はSNSでも話題沸騰中です。季節の食材を使ったオリジナルおはぎは、色とりどりでまるで花のよう。繊細で美しいデザインにうっとり見惚れてしまうはずです。
昔ながらの素朴でほっとする味わいの定番おはぎから、その土地で親しまれてきた珍しいおはぎ、進化系カラフルおはぎまで、全国に広がるご当地おはぎ。今年のお彼岸の時期には、さまざまなおはぎを取りそろえて、食べ比べてみるのもおもしろそうですね。