久しく立ち寄る機会のなかった温泉街、伊豆稲取へ
伊豆半島は2,000を超える源泉を有する国内屈指の温泉密集地です。筆者はそんな伊豆の地に、月に数回の通う生活を20年近く続けているせいか、周囲の人にはさぞかし伊豆の温泉に精通していると思われています。
ただ、朝も晩もない仕事をしていると、投宿することはほとんどありません。「せめて温泉だけでも…」とは思うものの、利用できるのは時間に融通の効く共同浴場や立ち寄り専門の入浴施設が主になります。そうなると、宿泊施設しかない温泉街にはなかなか縁がありません。
前回立ち寄った伊東温泉から30kmほど南下したところにある稲取温泉も、日帰り専門の私にとって縁が薄い温泉街のひとつ。
大型の温泉宿が立ち並ぶ人気の温泉地ですが、かつて存在していた共同浴場や温泉銭湯が10年ほど前に姿を消しており、それ以来すっかり足が向かなくなっていました。
路地を彷徨って発見した無料の足湯で温泉気分を満喫
そんな稲取の街に用ができ、南伊豆の下田へと向かうタイミングで立ち寄ることになりました。海沿いを走る国道から外れて狭い道を通り抜け、稲取の港を目指します。
ただ、朧げな記憶をあてにしてに進んだ結果、すっかりルートを見失ってしまいました。急ぐわけではないものの、狭い路地を行ったり来たりするのは非常に気疲れするものです。
温泉街の狭い路地で右往左往を繰り返していると、入り組んだ路地を抜けた先に「文化公園」「足湯」という看板が見えてきました。公園内には広い駐車場とトイレ、広場があり、奥には足湯と思しき建物も見えます。約束の時間まではまだ余裕があったため、偶然の発見を楽しむことにします。
足湯は東屋に設けられた半屋外式のものと、小屋の中に設置されたものの2カ所があり、いずれも無料とのこと。身体はさほど疲れていませんでしたが、数時間の運転後に浸かる足湯は格別の気持ちよさ。温泉の効果もあってか、数分の入浴ですっかり足が軽くなりました。
大物は掛からずとも稲取港の魚は反応良し!
しばし足湯を堪能してから用事を済ませ、あとは南伊豆へ移動するのみ。ですが、せっかく海辺まで来てしまったので、目の前の稲取港でしばし遊ぶことにしました。付け根まで車を乗り入れられる堤防へ向かい、空いていた先端部から仕掛けを投じます。狙うのは天ぷらダネとして人気のシロギスです。
30mほど投げた仕掛けをズルズルと引いてくると、やがて「ビビビビビッ!」と激しい魚信が。水温が上がって魚種が増える時期だけに、引き上げてみるまで何が掛かっているかはわかりません。魚の種類や大きさに想像を働かせながら寄せてくる間、ほんの数秒だけ味わえるワクワク感が釣りの醍醐味でもあります。
水面を割って出たのは、手のひらにも満たないマダイの幼魚でした。成魚になると沖の深場に生息しているマダイも、幼魚のうちは磯や堤防近くの浅場に群れています。そっとハリを外して海に返し、次を狙います。しかし、群れで寄っているのか同じようなサイズが次々に掛かります。
仕方なく、仕掛けを投げる方向を変え港内向きを探ってみます。すると、先ほどまでと違う感触でパールピンクの魚体が水面下に浮かび上がりました。本命のシロギスです! 釣れたのは15cmほどとそれほど大きくはありませんが、食材としては十分。ハリを飲み込んでいたこともあり、持ち帰ることにします。
シロギスは港内に溜まっていたようで、その後も飽きない程度にハリに掛かってきます。ときおり茶系の体色と体表から出る粘液が特徴のメゴチもまじりましたが、天ぷらダネとしてはこちらも大人気。ありがたくクーラーボックスに入れて持ち帰ります。
暇潰しのつもりで竿を出したのですが、気がつけばあっという間に夕方。無料で楽しめる足湯の発見もあり、久々に訪れた稲取で、実に有意義な時間を過ごすことができました。
[All photos by オオモトユウ]
oomotoyuu 編集者/ライター/フォトグラファー
スポーツウエアメーカー勤務、雑誌編集などを経てフリーライターに。好きなことを仕事に選び続けた結果、周囲からは「ラクをして生きている」と思われているのが悩み。四国、北海道については愛車で単独周遊済みなので、九州に照準を定めている。旅先での酒場巡りとノルウェー旅行の再開に思いを募らせる日々。
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