(C) ben bryant / Shutterstock.com
カフェにもなる鍾乳洞で世界最古の釣り針が見つかった
釣りは好きですか? 根っからのファンであれば、釣りそのものが旅の目的になると思います。そうでない人でも、例えば、湖に面した旅先の宿の部屋から釣り糸を垂れられると知れば、とりあえず試してみるのではないでしょうか。
最低限必要な釣り道具といえば、さお、糸、針とえさですね。これら釣り道具のうち、世界最古の釣り針が日本で見つかっている、日本に存在するとご存じでしょうか?
発掘当時の報道を振り返ると、沖縄県立博物館・美術館(那覇市)が2016年(平成28年)9月19日、沖縄本島南部にある南城市のサキタリ洞遺跡を発掘調査中に、ヘッドライトで虹色に輝く半円形の貝製釣り針を鍾乳洞内の暗がりで発見した のですね。
サキタリ洞遺跡と言われると、筋金入りの旅人であり沖縄ファンであれば「CAVE CAFE(ケイブカフェ)」を思い出すかもしれません。まさに、世界最古の釣り針が見つかった鍾乳洞は、ガンガラーの谷のガイドツアー参加者が利用できるCAVE CAFEとしても活用されています 。
ガンガラーの谷は、もともと自然公園でした。環境汚染によって閉鎖に追い込まれた自然公園の環境を回復させ、ガイドツアーのコースとして観光ルート化し、一般公開した場所です。
そのツアー参加者だけが利用できる鍾乳洞のカフェがCAVE CAFEです。サキタリ洞をそのまま飲食店につくりかえた空間で、その一角には発掘区もあり、2万3,000年前の地層の中から大きさ約1.4cmの貝製釣り針が見つかったのですね。
旧石器人も釣り針を使っていた
貝製釣り針は、貝の底を割り、先端を徐々に細くなるようにとがらせた形で、戦国武将・上杉謙信のかぶとの前側に付いている飾り(大前立て)の大日輪、あるいは三日月のように美しい曲線を描いています。旧石器時代の人たちが魚を釣っていたという貴重な出土品です。
旧石器時代は縄文時代よりも前、人類史上で最古の時代ですね。もはや絶滅した種の動物が多く暮らす地球上で、採集・狩猟・漁労をしながら人々は暮らしていました。土器もまだつくりません。ナウマンゾウを追いかけて、先端に石器を付けたやりで狩猟するイメージ、あの時代の話です。
しかし、ナウマンゾウのような大型獣はどこにでも見つかるわけではありません。海を越えて移動を繰り返すホモ・サピエンス(現生人類)は、ナウマンゾウやシカ、イノシシなどが移動先で手に入らない場合、ほかの食べ物を口にしなければいけませんでした。
当然、場所によっては魚や貝が主な食料になるのですが、その魚を捕る手段として、旧石器人も釣り針を使っていたことがわかったのですね。
しかも、このサキタリ洞に暮らしていた旧石器人は、石器製作に適した石が少ない沖縄の環境に適応するために、貝がらを割って木を削ったり、穴をあけてビーズにしたり、釣り針をつくったりしていたそう。
沖縄本島を近く旅行する予定があり、いつもとは違う沖縄の姿をゆっくり楽しみたいと思う人は、CAVE CAFEを含めたガンガラーの谷のガイドツアーに参加してみてはどうでしょうか。
「自然」「古代人」「祈り」をテーマにした空間を散策しながら、感覚を大いに解放したいですね。
[参考]
※ 旧石器人もフィッシング…世界最古、沖縄で出土 – 毎日新聞
※ World’s oldest fish hooks found in Japanese island cave – BBC
※ 世界最古釣り針を発見 沖縄・南城のサキタリ洞 2万3000年前、貝製 – 琉球新報
※ 世界最古の釣り針が語る沖縄旧石器人の暮らし – 海洋政策研究所
※ 博物館特別展「港川人の時代とその後-琉球弧をめぐる人類史の起源と展開」にむけて (3) – 沖縄県立博物館・美術館
※ ガンガラーの谷プロデューサー高橋が語る、ガンガラー秘話 – ガンガラーの谷
※ 沖縄で世界最古の釣り針発見!サキタリ洞 – ガンガラーの谷
※ サキタリ洞遺跡 – 日本旧石器学会
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
【日本の禁足地ランキング】美しくも恐ろしい!オソロシドコロ・八幡の藪知ら
Jan 23rd, 2024 | あやみ
【2024年1月16日更新】禁足地とは、歴史や宗教的な背景などで立ち入りが禁止されている場所……。日本全国には、一般人の立ち入りが禁止されていたり、限られた人しか入ることができないスポットなどが点在しています。今回は、美しくも恐ろしい日本の禁足地を18カ所ご紹介。なんと東京23区にも禁足地が存在するんです。いずれのスポットも、圧倒的な神秘のパワーを感じますよ。
【2024年開運】沖縄県のパワースポット3選!琉球王国最高の聖地、神が降
Jan 2nd, 2024 | 青山 沙羅
【2024年1月2日更新】2024年こそ、パワースポットのよい運気をいただき、人生に立ち向かう勇気を養いたいものです。日本全国にあるパワースポットで、災いを退け、健康運や金運、仕事運を上げましょう。北海道から沖縄まで、47都道府県のパワースポットをご紹介します。今回は沖縄県です。
「ikigai」を知っていますか?世界が注目する日本発の人生哲学
Dec 30th, 2023 | 倉田直子
【2023年12月30日更新】そのまま世界でも通用する日本語の単語に、数年前から「Ikigai」が加わったのをご存知でしょうか。ただそれは、日本人が想像する「生きがい」に新たな解釈が加わり、「Ikigai学」とでも呼べるような哲学として世界に広がっていったのです。
【温泉が少ない都道府県ランキング】2位奈良県・3位徳島県・では1位は?
Aug 27th, 2023 | TABIZINE編集部
47都道府県のすべてに温泉がある日本は、世界に誇る温泉大国。旅の目的地としても、温泉は大人気ですよね。中でも大分県は温泉の源泉数・湧出量ともに全国1位を誇ります。では、日本一最も温泉が少ない都道府県はどこでしょうか? ランキングトップ5を紹介します。
【日本の不思議スポット10】古代文明の跡!? 与那国島に眠る「海底遺跡」
Jul 19th, 2023 | あやみ
日本の最西端に位置する沖縄県の「与那国島」。そんな日本最果ての島の海底には、世界的に有名な「与那国島海底遺跡」があります。東西約250m、南北150mに広がる巨大な一枚岩に階段や道路に見える壁や隙間があることから、古代文明の遺構なのでは? といわれています。果たして、この海底遺跡は人工的なものなのでしょうか。それとも自然がつくり出したものなのでしょうか。
続々誕生している車中泊場所「RVパーク」ってどこにあるの?6・7月新規オ
Aug 20th, 2022 | Mayumi.W
車の中で寝泊まりをする車中泊。安く自由に旅ができて気軽とも思える車中泊ですが、日本ではまだなかなか浸透しているとは言えません。そんな中、安心して車中泊を楽しめる場所「RVパーク」が続々誕生しています。今回は、全国に広がりつつある車中泊スポット「RVパーク」をご紹介。「RVパーク」を知れば、旅の選択肢がもっと広がるかも!
【沖縄観光おすすめスポット】橋を渡れば離島気分!「瀬底島」の絶景&グルメ
Aug 20th, 2022 | 渡邊玲子
今回の旅の目的地は、沖縄・那覇空港からおよそ1時間半ほど北上した、国頭郡本部町に位置する「瀬底島(せそこじま)」。沖縄本島から大きな橋を一本渡っただけで一気に離島ムード漂うエリアです。沖縄屈指の透明度を誇るプライベート感満載のビーチやおしゃれカフェ、やんばるの心づくしのおもてなしが堪能できる極上BBQなど、「瀬底島」の魅力が存分にあじわえるスポットをたっぷりご紹介します!
【沖縄そば】現地で食べたおすすめ8選!ソーキ・ゆし豆腐・ジューシーも
Jul 27th, 2022 | 石黒アツシ
本土復帰50年の今年、沖縄がいろんな意味で熱いです! そんな沖縄のご当地グルメといえば、ゴーヤチャンプルー、ジーマーミ豆腐、海ぶどう、ちんすこう、それにステーキなどたくさんありますが、その代表格は「沖縄そば」。沖縄に星の数ほどある沖縄そば店の中から、ご当地グルメに目がない「旅行家・食事家・写真家」の石黒アツシが、沖縄本島と久米島で食べ歩いて厳選したおすすめの8軒を紹介します。
【実は日本が世界一】最古の「釣り針」はカフェにもなる沖縄の洞窟で発見され
Jul 19th, 2022 | 坂本正敬
意外な世界一を紹介するTABIZINEの連載。今回は、旅の目的にもなる釣りに関する世界一を紹介します。
【日本の美しい禁足地vol.7】誰も入ることができない神が宿る聖域~沖縄
Jun 27th, 2022 | あやみ
歴史や宗教的な背景などで立ち入ってはいけない場所。それが「禁足地」です。今回は、沖縄県・久高島の「フボー御嶽」をご紹介。琉球開闢(かいびゃく)の祖「アマミキヨ神」が最初に創ったとされる久高島……。この場所が、なぜ禁足地になったのか、詳しく調べてみました。