【実はこれが日本一】「最長のフェリー航路」は読者投票10年連続No.1

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Jul 20th, 2022

意外な日本一を紹介するTABIZINEの連載。今回は、船旅に関する日本一を紹介します。

北海道苫小牧
苫小牧 (C) Shutterstock.com

 

所要2泊40時間の船旅


「いしかり」(3代目、大阪港) ※就航前の寄港時に撮影 image by 日本語版ウィキペディアのSi-take.(Wikipediaより)

船旅の経験はありますか? 筆者にも何度かあって、茨城県の大洗から北海道に出かけたり、北海道から福井県の敦賀(あるいは京都府の舞鶴)に出かけたり、アジア各国を周遊するフェリーに乗ったりと、楽しい思い出がいろいろとあります。

そんなフェリーの旅、日本で最長の航路といえば、どこになると思いますか? 2014年(平成26年)までは東京・沖縄というフェリー航路があって、1,743kmの距離を約50時間かけてマルエーフェリーが結んでいました。

しかし、飛行機と比べて時間がかかる上に、運賃も航空機の割引運賃のほうが安いという状況が続き、旅客だけでなく荷物の輸送も不利な状況があって、2014年12月にフェリーとしての運行は休止となってしまったのですね。

では、東京・沖縄のフェリー航路が事実上の廃止となった今、日本最長のフェリー航路はどこなのでしょうか?

1,330kmの距離を所要時間40時間、船上で2泊して移動する現役のフェリーがあります。名古屋~仙台~北海道(苫小牧)を結ぶ太平洋フェリーですね。

船旅好きの人たちにもっとも愛されるフェリーのひとつ


名港西大橋を横断する太平洋フェリー「いしかり」 image by Oka21000(Wikipediaより)

太平洋フェリーは、航路の長さだけがセールスポイントではもちろんありません。クルーズ専門誌「CRUISE」(海事プレス社)が毎年発表する読者投票「クルーズシップ・オブ・ザ・イヤー2021」のフェリー部門で、同航路を走る船舶のひとつ「いしかり」が第1位の「フェリーオブザイヤー」を受賞しました。

<船の外観・内観のすばらしさと、サービスの質、ともに光るものがあった>(クルーズ専門誌「CRUISE」2022年春号P42より引用)

しかも、この「いしかりは」は、2011年の第20回から2021年の第29回まで、読者投票のなかった2020年を除いて10回連続受賞を果たしています。

太平洋フェリーでは、ほかのカーフェリー「きそ」「いしかり(2代目)」も含めると、通算で29年連続の受賞となります。要するに、船旅を愛する人たちにもっとも愛され続けるフェリーのひとつが太平洋フェリーなのですね。

客室のみならず、シアターラウンジや大浴場、カラオケ、レストラン、ショップなど2泊の船旅を楽しむには十分な船内施設の充実度はもちろん、うねりの強い海でも横揺れを防止するフィンスタビライザーなどの存在も、安定した船旅の提供に寄与していると、船旅に詳しい同業者のライターが言っていました。

仙台港に寄港した「きたかみ」
写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

太平洋フェリーのうち「きたかみ」は、東日本大震災で被災した時に、36人の乗組員が仙台港から沖に緊急避難し、冷静な対応で4波の津波を乗り越えた様子がテレビでも報道されています。

最近では、日本通運と協定を結び、自然災害時のバックアップ輸送体制の一翼を担うべく(あるいは長距離トラック輸送のドライバー負担を軽減すべく)、東京方面から貨物駅まで鉄路で輸送された貨物を仙台港で荷積みし、北海道へ運ぶサービスを提供するとの報道もありました。

一流のスタッフで上質の船旅を提供するだけでなく、物流の安定輸送という社会的な役割も大きく担う太平洋フェリー。今までとはちょっと違う旅の形を楽しみたい場合は、名古屋から苫小牧の国内最長の船旅を、場合によっては愛車と一緒に楽しんでみてもいいかもしれませんね。

[参考]
日本最長の航路「東京・沖縄フェリー」が2014年12月に事実上の廃止へ。マルエーフェリーが撤退を決定。 – タビリス

太平洋フェリー – Cruise Planet

ニッポンの豪華な船旅(1) 太平洋フェリー(名古屋〜仙台〜苫小牧) – ニッポン旅マガジン

フェリー・オブ・ザ・イヤー受賞紹介 – Taiheiyo Ferry

10mの大津波と対峙 その瞬間が写真に 太平洋フェリーの“あの日”乗組員の証言〈宮城〉 – 仙台放送

日本通運/太平洋フェリーと協定、災害時の輸送をバックアップ – 物流ニュース

クルーズ2021年秋号 – CRUISE

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

SHARE

  • Facebook