島国の日本に住んでいると、「国境越え」という響きにどこかロマンを感じることはないでしょうか? 世界には数多くの国境がありますが、「出入国が異常に厳しい」国境があることでも知られています。
中でも複雑な歴史、政治、宗教問題が絡んだヨルダンからイスラエルへの陸路国境越えは、旅好きの間では「世界一厳しい国境越え」との声も。今回は筆者が2012年に体験した、そんなヨルダン→イスラエルの陸路国境越えをご紹介しましょう。
まずはヨルダン側の国境を目指す
ヨルダンのアンマン空港から、タクシーにてイスラエルとの国境「キングフセインブリッジ」に向かいます。
国境は死海近くにあるので、標高がどんどん下がっていくのを実感。
ヨルダンのイミグレはフレンドリーで安心
キングフセインブリッジに到着。
窓口にて手続き。パスポートにイスラエル出入国のスタンプを押されると、敵対するアラブ諸国への入国ができなくなるため、ヨルダン側の時点で「No Stamp」とお願いしました(筆者は当時オマーンに住んでいたのでNo Stampにしましたが、今後アラブ諸国に行く予定がない場合は特に気にしなくても良いかと思います)。
別紙に押された出国スタンプ。同じような旅行者が多いのかヨルダンでは何も咎められることなく、スムーズに手続きしてもらえました。しかもかなりフレンドリー。
バスに乗っていよいよイスラエル側のイミグレに向かいます。何人か集まってから発車。他のメンバーを見ると、イギリス人、ドイツ人、ポルトガル人などの旅行者がほとんど。
次のページでは緊張感ある緩衝地帯のルポです!
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緊張感ある緩衝地帯
緩衝地帯を通過中。荒野が広がります。
厳しい雰囲気を醸し出す監視台。
こちらでバスが一時停止。係の人が乗り込んできて「別紙」を回収。
いよいよイスラエル側イミグレに
ついにイスラエル側イミグレに到着。すんなり入国できる人もいれば、何時間も待たされることもあるという噂のイミグレ。筆者のパスポートはアラブ諸国のスタンプだらけで、敵対国のシリアビザまであったのでかなり不安でした。
最初の窓口で荷物&ボディチェック。普通のベルトをしていたのですが、まるで小型爆弾でも探すような様子でじっくり調べられることに。その後パスポートにこの謎のシールを貼られました。
そして入国審査。パレスチナ人用とその他外国人用に分かれていました。外国人用の入国審査官はいかにも性格キツそうな女性。
入国に関する質問では、「なぜ、No Stampなの?」「なぜ、オマーンに住んでいるの?」「なぜ何度もアラブの国に旅行してるの?」「なぜひとり旅なの?」「なぜシリアのビザがあるの?」「なぜイスラエルに友達がいないのに、旅行するの?」「ホテルは予約してあるの?」「観光以外の目的はあるの?」など噂通りものすごい質問攻めに合うことに。おそらく人生で最も「Why〜?」と聞かれた日でした・・・。
その後女性審査官はパスポートを持ってどこかへ行ってしまい、筆者はしばらく放置されることに。10分後戻ってきたと思ったら、突然笑顔で「OKよ! 旅行楽しんでっ!」と別紙にスタンプをバシッと押したのです。
あれこれ質問攻めしたわりには、最後はあっけなく入国審査が終了。ちょっと拍子抜けでした(笑)。
次のページではエルサレムの「嘆きの壁」へ向かいます。
荷物チェックと入国審査で所要時間は約2時間! 世界一厳しい国境というのは本当のようです。
イミグレ出口にある両替所にてイスラエル・シュケルを入手。ミニバスに乗ってエルサレムに向かいます。
ユダヤ教の聖地エルサレム
約1時間後、ついにエルサレムに到着! 当然ながら中東なのにアラブでない街で、改めて不思議な感覚になります。これぞ陸路国境越えの醍醐味でしょうか。
ユダヤ人にとっては聖地中の聖地、嘆きの壁。たくさんの信者が祈りを捧げていました。
イスラエルへはテルアビブのベン・グリオン空港からでも入国できますが、アラブの国ヨルダンから陸路で国境を越えることで、宗教や文化の違いを肌で体感できました。なかなか解決の糸口が見えない中東問題ですが、一日も早く和平が実現するように祈るばかりです。
※現在の外務省の危険情報では、ヨルダン、イスラエルともに「レベル1(十分注意)」が発出されています。
[All photos by Nao]