7月10日から始まった「ジブリの立体建造物展」。スタジオジブリ作品でおなじみの印象的な建物のスケッチやミニチュアなどが展示されています。
撮影禁止だったためお見せできないのが残念ですが、中でもハイジの家のジオラマはふもとの町や列車まで再現されていて、見た瞬間アルムの山に心が飛んで行きそうでした。「千と千尋の神隠し」の油屋も高さ2mほどあり、映画のシーンを思い出しながらじっくりと見入ってしまいます。ちなみに油屋のデザインは擬洋風建築といって、明治の大工たちがルールおかまいなしに好き勝手に洋風建築を取り入れた遊び心を彷彿とさせるものなのだとか。
「天空の城ラピュタ」でパズーが働く鉱山のミニチュアでは、地中にこっそりとロボット兵が埋まっているのを発見し、思わず微笑んでしまいました。
たてもの園のレトロな町並みに迷い込む
会場となっているのは、都立小金井公園の中の江戸東京たてもの園。約7ヘクタールもの広大な土地に、江戸時代から昭和初期までの建物が30棟復元されています。レトロな町並みはジブリの世界にも通じるわくわく感で満ちていて、とても見応えがあるんです。
昭和の下町情緒を感じる商店街
醤油屋、荒物、乾物屋・・・建物の中に再現されている商品たちも、懐かしさを誘います。
花屋や文具店も。どの商店も、オレンジ色の明かりに癒されます。ちなみに、現代の日本では一般的な蛍光灯はヨーロッパの人々は絶対自宅には使わないそう。オフィスの明かりをなぜ家に持ち込むんだといって嫌うのだとか。
昭和の銭湯を再現した子宝湯
商店街の奥には昭和の銭湯があります。古くから続く日本の銭湯文化ですが、江戸時代の銭湯はたいてい2階建てで、2階は湯女(ゆな)と呼ばれる女性たちがサービスをする妖しい社交場となっていたそう。
内部は当時の贅を尽くしたつくりになっています。それにしても・・・現代に比べて格段に男湯女湯を仕切る壁が低い! 今より平均身長が低かったとはいえ、大らかだったんですね。
子宝湯の隣には居酒屋も。思わず風呂上がりの一杯に誘われてしまいそう。©Aya Yamaguchi
民家や洋館、邸宅も
西のゾーンには様々な建築様式の建物が並びます。こちらはドイツ人建築家によるデ・ラランデ邸。今は武蔵野茶房という飲食施設になっていて、食事やお茶を楽しめます。
茅葺き屋根の農家では、いろりが炊かれていました。畳は昔高級品で、庶民に普及したのは江戸時代から。一人で一番落ち着けるのは4畳半で、庶民の憩いの場としては8畳、お金持ちでも18畳以上はなかったそう。今とは空間感覚や人との距離が違ったのかもしれません。
ジブリ作品とたてもの園の建物たちに共通するのは、自然との距離が近いこと、建物が画一的でないこと。
同じような間取りのマンションやお行儀のよい建て売りの一軒家が増える昨今、人までも画一的になりがちではと思い、住まいについて改めて考えさせられました。
ちなみに、建築にまつわるウンチクは、「ジブリの立体建造物展」で紹介されていたもの。展覧会で建築トリビアを仕入れてから園内を回ると、より楽しめるかもしれませんね。
住所 東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
電話 042-388-3300(代表)
開園時間 4月~9月:9:30~17:30、10月~3月:9:30~16:30(入園は閉園時刻の30分前まで)
※月曜(祝日または振替休日の場合は、その翌日)、年末年始定休
入園料 大人400円、大学生320円、中高生・65歳以上200円、中学生(都内在学または在住)・小学生・未就学児童無料(「ジブリの立体建造物展」も含む)
※「ジブリの立体建造物展」は2014年7月10日(木)~12月14日(日)