あなたが知らない、ニューヨークの子どもたち【TABIZINE with Kids】

Posted by: 青山 沙羅

掲載日: Jul 31st, 2017

あなたが知らない、ニューヨークの子どもたち【TABIZINE with Kids】

子連れ旅行やお出かけ、家族や子どもにまつわる世界の話題を特集する夏休み特別企画【TABIZINE with Kids】。今回は、ニューヨークの子育て事情について、現地から。

ニューヨークは、世界中から異なる民族が集まる街。みなが凌ぎを削って生きて行くこの街で、子どもたちはどのように生まれ、育っていくのでしょう。ニューヨーク在住の筆者が見聞きしたニューヨークの子どもたちについて、一部を語ってみたいと思います。

アメリカ人として生まれる子どもたち

あなたが知らない、ニューヨークの子どもたち【TABIZINE with Kids】

語学学校のクラスメートがいつの間にか
セメスター(学期)の間に休みが入り、休みが明けてクラスに戻ってみると・・・
中国人の女子クラスメートのお腹が大きくなっていました(汗)。それも2名とも。いつの間に? 彼女たちが既婚なのか、独身なのかも定かでなかったのですが、あのお腹では入学した時には既に妊娠していたのでしょう。

臨月のお腹を抱えて入学した女子生徒
臨月に一人で渡米し、ニューヨークの語学学校に入学したご婦人(彼女の国籍は失念)。担任教師に出産できる病院を聞いていたそうです。ご主人は渡米していなかったそうで、他人事ながらどういう状況なのか心配になりました。

ニューヨークで出産するメキシコのママ
あるメキシコ人のママは、臨月になるとメキシコから来て、子どもを出産していました。ニューヨークでは、無保険者や低所得者用に無料で出産できる市立病院があるのです。出産後は赤ちゃんを抱いてメキシコに戻り、子どもはメキシコで育ちました。子どもは3人ともニューヨーカー。高校卒業後は、アメリカ市民としてメキシコからニューヨークへ来たそうです。

彼女たちの目的は「アメリカで赤ちゃんを産むこと」。アメリカで出産すれば、子どもはアメリカ国籍になるからです。手続きは病院でしてくれます。アメリカ市民の子どもが成人し21歳になれば、親の永住権取得のスポンサーになることが可能。長期計画ですね。女性という武器を最大に活かして、アメリカ人になることを願う女性たち。女性はいつでも強いです。

アメリカの登下校は13歳まで保護者の送り迎えが必要

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アメリカでは13歳になるまで「親もしくは保護者の監視下にいなくてはならない」という法律があり、学校の送り迎えは必ず保護者(親、家族、ベビーシッター、ナニーなど)が行う必要があります。登校時は学校まで子どもを送り届け、下校時は教師から子どもを受け取ります。

親以外が送り迎えをするときは、事前に教師と顔あわせをして、面識を持たなければいけません。「私が新しいベビーシッターで、月曜日と金曜日は彼(彼女)を迎えに来ますのでよろしく」と親と一緒に担任に挨拶しておくのです。ニューヨークでは下校時子どもを受け取る際、子どもを受け取ったというサインが必要です。距離が遠い場合はスクールバスでの送迎で、子どもはバスドライバーの監視下に置かれます。

学年によって下校時間は異なり、子どもが2-3人いる家庭は、何度も子どもを迎えに行かなければならず大変なのです。雪の日や雨の日の登下校時間は、学校の周りは保護者の車で渋滞になるほどです。アメリカは誘拐が多く治安が悪いため、日本のように集団登下校などは考えられないのです。

次は子どもたちの夏休みと言語・文化事情です。

子どもたちの夏休み

あなたが知らない、ニューヨークの子どもたち【TABIZINE with Kids】

アメリカでは6月(地域、学年によって初旬〜下旬と異なる)から始まり、レイバーデイ(9月第1月曜日)明けまで、約3か月の夏休みがあります。新年度は日本の4月とは異なり、レイバーデイ(9月第1月曜日)明けの9月がスタート。担任教師も学年も変わるため、長い夏休みの間に宿題はありません。学校からは読書を奨励される程度です。羨ましいですね。

ところが親にとっては、夏休みは恐怖の時期。子どもは13歳まで保護者の監視下に置いておかなければならないため、夏休み中に子どもをどうするか頭痛の種なのです。ニューヨークの多くの親は共働きですので、夏になったからといって、一緒に長期の夏休みを取ることはできません。子どもをひとりで留守番させておくのは違法ですし、夏は誘拐や変質者の事件も多いので心配なのです。

そのため、夏には親の救世主(?)「サマーキャンプ」があります。山や海へ行くキャンプとは意味が異なり、夏の間の特別夏季クラスのようなものです。

●デイキャンプ(学校のように朝から夕方までの丸1日、または午前中か午後の半日のみ)
●オーバーナイトキャンプ(泊まり込み)

子どもの年齢によりクラスが分かれ、絵画やダンスのアート系、水泳・サッカー・テニス・バスケットボール・乗馬などスポーツ系、コンピューター等理数系などさまざま。ほとんどは有料ですが、地域やYMCA主催で、無料で行うものもあります。内容のよいものは、費用も高くなります。夏は親にとって大変な出費で、家計には大きな痛手です。

駐在員や将来帰国予定のある日本人家庭は、6月にアメリカの学校が終わるやいなや日本の学校へ子どもを送り込み、早い時期に日本に馴染ませることも多いようです。

言語間で戸惑う子どもたち

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アメリカへ来て、親は異なる環境、文化、言語で苦労するかもしれません。子どもはどうでしょうか。

アメリカで生まれ育った子どもでも、英語が習得できるかどうかは、個人差があるようです。親が日常日本語を話していても英語が得意な子もいますし、日本語が話しやすく英語が不得意の子もいます。日本語と英語の言語間で混乱するのか、5歳過ぎても日本語でも英語でもない赤ちゃん言葉を喋っている子どももいました。こういった子どもたちのために「スピーチセラピー(言語療法)」が無料で受けられます。アメリカの子どもの言葉は早い(オムツが取れるのも早い)ので、子どものためにも大きくなり過ぎないうちに対応することをおすすめします。

早期介入プログラム(Early Intervention Program/通称EI)
http://www.kodomosupport.com/index.php/ei-about

駐在や日本帰国の可能性のある家庭では、土曜日に日本語補習校に通わせている場合が多いです。しかしながらアメリカで生まれた子どもは、外見はアジア人でも気持ちはアメリカ人。英語以外の言葉を学ぶのを面倒がり、子ども本人がいやいや行っていることも。

留年する子ども

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アメリカの学校は「賢ければ飛び級できる」ということを聞いたことがあるかと思います。でも、逆に落第もあるのです。小学校前の幼稚園(キンダーガーデン)から落第、酷ければ退学もあります。

留年するポイントとしては、

●教師(目上の人)のいうことが聞けない、尊敬しない
●集団生活(ルールを守り他人と共存)が出来ない
●学習能力が低い
●言語能力が低い
●出席率の不足

があげられるようです。

学校や教師によってポイントは違うかもしれませんが、教師のいうことが聞けないというのが一番まずいかもしれません。また先生との相性もあるので、新学期に親はどの先生が担任になるかヒヤヒヤものなのです。言語が不足する場合は、アフタースクール(放課後の学童保育)へ通うことをすすめられます。アフタースクールは、学校、教会、YMCAなど地域により異なり、無料の場合も有料の場合もあるようです。

次は知り合いのベビーシッターさんから聞いた、忘れられないお話。

僕の頭の上には雨雲がある

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ベビーシッターEさんから聞いた話です。経験のないEさんが、はじめてベビーシッターを務めた家庭には、幼児2人の兄弟がいました。

4歳のお兄ちゃんTくんは泣き虫で、眠りから目覚めたとき、登校時にお気に入りのソックスが見つからないとき、パジャマが着替えられないなど些細なことで泣いてしまうのです。

2時間以上も大泣きに泣くのは学校でも同様で、教師から呼び出しの電話がかかってくることもしばしば。「男の子は泣いちゃいけない」「もう赤ちゃんじゃないよ」と周りで言い聞かせましたが、赤ちゃんからの性格はなかなか変わりません。EさんはTくんをどう扱っていいのか、途方にくれたそうです。

ある日、子どもたちが絵を描いていた時のこと。Tくんの絵を見ると、子どもが二人描かれていました。ひとりの頭上には雨雲があり、雨が降って泣いています。もうひとりは、頭上に太陽が輝き笑っています。Tくんに説明を求めると、雨雲が頭上にあるのはTくん、太陽が頭上にあるのは弟のOくんだということでした。「僕の上にはいつも雨雲がある。だから涙が止まらないんだ」そう言われて、Eさんは何と返してよいのかわからなかったそうです。

ベビーシッターを辞めて数年たった今も、時々Tくんのことを思い出し、彼の頭上の雨雲は去ったのだろうかと考えるそうです。

あなたが知らない、ニューヨークの子どもたち【TABIZINE with Kids】

あなたの知らないニューヨークの子どもたち。子どもだって、ニューヨーカーになるのは大変なのです。

また日本の教育は「協調性」が求められますが、アメリカでは「自分の意見」を求められます。授業には出席しているだけでなく、内容を理解した上で、どれだけ自分の考えを積極的に述べたかということが評価されます。受け身で参加する日本とは大きく異なる点です。

[All Photos by shutterstock.com]
※写真はすべてイメージです。

PROFILE

青山 沙羅

sara-aoyama ライター

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

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