岐阜県の代表的な観光地の1つ、郡上八幡(ぐじょうはちまん)に訪れた経験はありますか? 水路の美しい城下町で、TABIZINEの過去記事「悲しくなるほど美しいと言わしめた城も。日本の天空の城3選」でも紹介した天空の城の1つと呼ばれる郡上八幡城、やなか水のこみち、いがわこみち、宗祇水(そうぎすい)、郡上おどりのように見どころがいっぱいありますが、実は食品サンプルの町としても知られています。
ラーメンの食品サンプル
そこで今回は食品サンプルの本場、郡上八幡でサンプルづくりを楽しめる場所を紹介します。実際に筆者も体験してきましたので、飛騨高山や下呂温泉などの旅行に出かけた際には、郡上八幡で食品サンプルづくりにもチャレンジしてみてください。
食品サンプルの始祖・岩崎瀧三は郡上八幡生まれ
岩崎瀧三の生家の前に飾られた食品サンプル
そもそも食品サンプルと言われて、何の話をしているのかピンと来ていない方も居るかもしれません。洋食屋やレストランのサンプルケースに飾られている、実物そっくりの食品ディスプレイですね。パフェだとか、ラーメンだとか、スパゲティだとか、さまざまなサンプルを見かけますが、あの食品サンプルはそもそも郡上八幡(八幡町)出身の岩崎瀧三という人が、大阪で初めて事業化に成功させたところから歴史が始まるのだとか。
岩崎氏は故郷の郡上にも会社を設立し、地場産業として大きく発展させます。今では全国のシェア7割を占めるほど、郡上八幡では食品サンプルづくりが盛んに行われています。確かに町を歩いてみると、歴史ある城下町のそこかしこに食品サンプルを制作・販売する場所があります。風情ある町並みになじんでいるかどうかは別の問題ですが、旅行先での体験プログラムとして、ぜひとも体験しておきたいです。
サンプル作りはデートでも楽しめる
さんぷる工房の外観
数ある制作体験所の中で、今回筆者が訪れた場所は、食品サンプル創作館さんぷる工房になります。宗祇水(そうぎすい)から宮ケ瀬橋を渡った場所にある工房で、食品サンプルの購入はもちろん、製作体験、プロの制作現場の見学ができるスポットになります。お店の方に聞くと、食品サンプルづくりは平日だと要予約で、休日は当日申し込みでも構わないと言っていました。お店、訪問する日にちによって異なりますので、要注意ですね。
同工房で体験できるサンプル作りは、カップアイス作り、スイーツタルト作り、天ぷら作り(1人3本+レタス)となります。筆者はスイーツタルト作りと、天ぷら作りにチャレンジしました。
スイーツタルト作りはフルーツを5種を選び、専用のクリームをカップに注ぎ込んで、盛り付ける制作体験になります。未就学の子どもでも10分程度で楽しめるプログラムですので、家族でチャレンジするのもいいですね。
制作風景
一方で天ぷら作りは、小学生以上の子どもはもちろん、大人にもカップルにも大人気のプログラム。実際に筆者が体験したときは、名古屋から来たという大学生のカップルと一緒になりました。エビやカボチャ、ナスなどあらかじめプロが制作した食品サンプルに衣を付ける作業と、レタスを一から作る作業が主な体験内容です。
衣づけ作業の段取りとしては、ぬるいお湯の中に天ぷらの衣の色をしたロウを葉っぱのように垂らし、その上に食材を乗せ、再びロウを垂らして衣で包みます。レタスはおたまで2色のロウを円形に垂らし、円の端にお湯をかけてから両手の指先でつまんで、水中に引きずり込みます。
熱いロウが温かいお湯との温度差で、北海道の冬空に干した使い古しのぬれ手ぬぐいみたいに、平たくしわしわの状態で固まります。その緑色の平たいシートを丸めればレタスの出来上がり。
参加者の作業風景
最初は自分を含めて体験者の皆さん、恐る恐るやってみますが、
「上手です」
というスタッフさんの業務上のお世辞に職人魂が騒ぎ始め、参加者全員が熱心に創作に取り組んでいました。しかも食品サンプル創作館さんぷる工房の場合は、体験スペースを貫くように廊下が通っています。店内を見学する観光客が足を止めて、声を掛けてきたりしてきます。さまざまな場所で笑い声や歓声が上がるアットホームな雰囲気がとてもいいですよ。
ちなみにロウでできた食品サンプルですから、熱に弱いとの話。特にレタスは直射日光などに弱いため、最も保存に適した場所は冷蔵庫なのだとか。スタッフさん鉄板のクロージングのネタですね。
以上、郡上八幡の食品サンプル作りを紹介しましたが、いかがでしたか? 同館の販売コーナーにはお土産用の食品サンプルもたくさん売っていました。人気商品の第1位は薄皮つきみかんのマグネット、2位は切り身の焼きザケ、3位は柿の種のマグネットでした。
イチゴの食品サンプルマグネット
筆者はお土産にリアルすぎるイチゴのサンプルをチョイス。家に持ち帰って冷蔵庫の扉に張り付けておきました。その光景がわが家の3歳の娘には理解できなかったようで、娘は牛乳を取り出そうと歩み寄った冷蔵庫の前でイチゴを見かけ、絶句しながら立ち尽くしていました。
「絶対に食べないように」
という店員さんの掛け声は、お店の中ではジョークのように聞こえていましたが、小さい子どもが身近にいる人は、本当に注意した方がいいかもしれませんね。
さんぷる工房
http://samplekobo.com/ さんぷる工房 本館
開館時間/AM9:00~PM5:00
休館日/毎週木曜日(夏季期間は無休)
入館料/無料(サンプル体験は有料)
住所/岐阜県郡上市八幡町橋本町956番地
TEL/0575-67-1870
さんぷる工房 北町館
開館時間/AM10:00~PM5:00
休館日/毎週水曜日
入館料/無料
住所/岐阜県郡上市八幡町殿町7番地9
[All photos by Masayoshi Sakamoto]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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