本場ドイツでも特に有名なクリスマスマーケットのひとつが、東ドイツの古都・ドレスデンのクリスマスマーケット。ニュルンベルクとシュトゥットガルトのクリスマスマーケットとともにドイツ3大クリスマスマーケットに数えられるだけでなく、ドイツ最古のクリスマスマーケットとしてその名をとどろかせています。
現在のドイツのクリスマスーケットの源流となった、ドレスデンのクリスマスマーケットを現地からレポートします。
ドイツ最古のクリスマスマーケット
本場ドイツ最古のクリスマスマーケットといわれるのが、「ドイツの京都」とも呼ばれる東ドイツの古都・ドレスデンのクリスマスマーケット。ドレスデンの市内11か所で開催されるクリスマスマーケットのうち、メイン会場となるアルトマルクト広場で開催される「シュトリーツェル・マルクト」は、1434年にはじまって以来、583年ものあいだずっと同じ名前を保っています。
フランクフルトのクリスマスマーケットをドイツ最古とする説もありますが、正式な記録として残っているのが、このドレスデンのシュトリーツェル・マルクトなのです。
「シュトリーツェル」とは、ドイツにおける伝統的なクリスマス菓子「シュトレン」に由来します。ドイツのクリスマスマーケットはもともとキリスト教に根ざした宗教行事ではなく、シュトレンを楽しむための庶民の市だったのです。
豪華絢爛なシュトリーツェル・マルクト
ドレスデンのクリスマスマーケットの「顔」といえば、なんといってもメイン会場のアルトマルクト広場で開催されるシュトリーツェル・マルクトです。
ギネスブックにも認定されている世界最大のクリスマスピラミッドは高さ14.62メートル。クリスマスにちなんだ羊飼いや東方の三博士、天使の人形などが飾られた6段のピラミッドがクルクルと回転し、見る者をおとぎの世界へといざないます。
メルヘンチックなクリスマスピラミッドと立派なクリスマスツリー、観覧車などが一体となった景観は、まさに豪華絢爛。
さらに、サンタクロースや天使、小人、星、ベルなど色とりどりの飾りで彩られた屋台がその美しさを競い合い、数あるドイツのクリスマスマーケットのなかでも屈指の華やかな光景を繰り広げています。
ドイツで一番おいしいドレスデンのシュトレン
ドレスデンのクリスマスマーケットに欠かせないのが、ドライフルーツやナッツ入りの焼き菓子「シュトレン」。ドイツ各地で食べられているシュトレンですが、その発祥の地といわれるのがドレスデンです。
「シュトリーツェル・マルクト」の名前の由来になったことからもわかるように、ドレスデンのクリスマスにとってシュトレンは特別な存在。「ドイツで一番おいしい」といわれるドレスデンのシュトレンは「ドレスドナー・クリストシュトレン」と呼ばれ、ドレスデンで作られたものだけがその呼称を得ることができます。
なかでも、選ばれた製パンマイスターたちが焼いたものは、本物のドレスドナー・クリストシュトレンの証として、管理番号が入った黄金色のシールを貼ることができるのです。ドライフルーツがぎっしり詰まったドレスデンのシュトレンは、リッチな味わい。ずっしりと重量感があるのにほろりと崩れるような食感がクセになります。
ドレスデンのクリスマスマーケットではいくつものシュトレン屋台が出ているので、お土産にどうぞ。
寒空の下で楽しむクリスマスマーケットグルメ
ドイツのクリスマスマーケットは、ただ見るだけではなく、飲んだり食べたりしてこそ本当の良さがわかるというもの。
クリスマスマーケットの定番ドリンクといえば、スパイスの効いた甘いホットワイン「グリューワイン」。ドレスデンのクリスマスマーケットでグリューワインを飲むと、可愛らしい公式マグカップが手に入ります。
ドイツのクリスマスマーケットでは、飲み物を注文するときにデポジット込みの金額を払う仕組みなので、カップが気に入った場合は返却せず持ち帰ってオッケー。カップを持ち帰りたい人はあらかじめビニール袋などを用意しておくといいでしょう。
ほかにも、ホットドッグやソーセージと野菜の煮込み、魚のフライのサンドイッチ、窯焼きパン、レープクーヘン、バウムクーヘン、ワッフル、クレープなど、多種多様な食べ物屋台が並ぶクリスマスマーケットはB級グルメの宝庫。
レストランで食事をするのもいいですが、せっかくドレスデンのクリスマスマーケットを訪れるなら、一度は寒空の下で屋台グルメを頬張るというドイツらしい体験を楽しんでみては。
タイムスリップ気分が楽しめる中世風マーケット
ドレスデンのクリスマスマーケットのお楽しみはメイン会場だけではありません。シュトリーツェル・マルクトとあわせて必ず訪れたいのが、城のうまや跡で開催される中世風のクリスマスマーケット。屋台もスタッフの衣装もすべてが中世風で、タイムスリップしたかのような雰囲気が味わえます。
商品のラインナップもメイン会場とはずいぶん異なり、革製品やフェルト製品、毛皮製品、陶器、銀製品など、中世をイメージした商品を扱う屋台がずらり。中世風の衣装をまとった鍛冶屋や木工職人による実演もあり、臨場感たっぷりです。
なんと樽型のお風呂もあり、伝統薫るシュトリーツェル・マルクトとはまた違ったテーマパークのような遊び心あふれる演出に驚かされることでしょう。
肉のグリルや窯焼きパン、ポテトチップスなど素朴な食べ物屋台も充実していて、あちこちから漂ってくる香ばしい匂いに食欲をそそられます。
ここでは、グリューワインも素焼きのカップで登場し、ムード満点。
伝統を大切にしながらも進化を続け、誰もが童心に返って楽しめるドレスデンのクリスマスマーケット。庶民のための市としてはじまったクリスマスマーケットの精神は、数百年の時を超えて今なお受け継がれているのです。
[All Photos by Haruna Akamatsu]