東ドイツの古都・ドレスデンに、「世界一美しい牛乳屋さん」と呼ばれるお店があります。
「世界一美しい○○」というのは数あれど、牛乳屋さん!? あなたは「世界一美しい」と「牛乳屋さん」がくっついた姿をイメージできるでしょうか・・・。
とっても気になる! ということで、実際に世界一美しい牛乳屋さんを訪れてみました。
世界一美しい牛乳屋さん
東ドイツの古都・ドレスデンに店を構える「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント(Dresdner Molkerei Gebrüder Pfund)」。このお店は、1998年に「世界一美しい乳製品店」としてギネスブックに認定されました。「自称世界一」ではなく、ギネス公認なのです。
舌を噛みそうな長い店名は、「プフント兄弟のドレスデンの牛乳屋」という意味。1880年、創業者のプフントさんは農場から運んできた新鮮な牛乳を町で売り出します。しだいに牛乳だけでなく、チーズやヨーグルトなどの乳製品も販売するようになり、1891年には現在の場所に店舗を構えるようになりました。
130年以上の歴史をもつプフントさんの牛乳屋さんは、今も変わらず地域の人々に親しまれているのみならず、その美しさをひと目見ようと世界中から観光客が訪れる観光名所にもなっています。
ヴィレロイ&ボッホのタイルに覆われた空間
歴史を感じさせる雰囲気はあるものの、外観だけを見ればごく普通の食料品店。しかし、店内に一歩足を踏み入れると見事な装飾タイルに彩られた空間に息を呑みます。
天井から壁床にいたるまで、店内全体を覆う華麗なるタイルの数々は圧巻。隅から隅まで美しく芸術的で、まるで宮殿か美術館にいるかのような気分になります。
内装を手掛けたのは、ドイツ発の世界に名だたる陶磁器メーカー、ヴィレロイ&ボッホ社。これらのタイル装飾はすべて手作りなんだとか。気の遠くなるような作業と、卓越した技術力に脱帽です。
壁一面に精緻な壁画が描かれ、天井には植物模様や動物などをデザインした装飾が施されています。
牛乳屋さんらしからぬ豪華絢爛な店内ですが、牛乳屋さんらしく牧場の風景を描いたタイル画も。
柱に施された装飾だって、こんなに立体的。絵が描かれた平面的なタイルのみならず、立体的に形作られたタイルまで、装飾のバリエーションは実に多彩です。
ショーケースに並んでいるのは、世界各国のさまざまなチーズの数々。「牛乳やチーズといった日常的なものを売るお店がこんなに豪華でいいの!?」と思ってしまうほどです。
新鮮な牛乳やバターミルクを店内で
店内では、新鮮な牛乳をグラスで飲むことができるほか、現地在住日本人ガイドが「日本では飲めない」と断言するバターミルクも味わうことができます。
日本ではほとんど耳にすることがない「バターミルク」とは、牛乳からバターを分離させたときに残った液体のこと。バターを作る過程で、牛乳に含まれる乳酸菌によって酸味が生まれます。
「バター」と名が付くことから、高カロリーのこってりとした飲み物をイメージしがちですが、バター製造のための脂肪分が取り除かれていることから、バターミルクはむしろ普通の牛乳よりもカロリーや脂肪分が低いといいます。
いったいどのようなものか、筆者も試してみることに。バターミルク自体はほとんど味がないために、フルーツジュースを混ぜて飲むのがおすすめだとか。筆者はマンゴージュースとのブレンドを選びました。
実際に飲んでみた感想は、「飲むヨーグルトみたい」。マンゴージュースの風味とともに、バターミルクそのものの酸味も感じられ、すっきりとしたのどごしが楽しめます。ヨーグルトが好きな方なら、間違いなくおいしく飲めるでしょう。
お土産にもぴったりの牛乳製品
「世界一美しい牛乳屋さん」を訪れた記念がほしいと思っても、まさか牛乳を日本に持って帰るわけにはいきません。でも、ここでは美しい陶器のプレートやポストカード、牛乳石鹸や入浴剤、キャンディやチョコレートなどのお菓子、牛乳を使ったリキュールなど、お土産にぴったりの品々が揃っています。
なかでも人気なのが、オリジナルの缶に入った牛乳石鹸。お店の内装同様、クラシカルな雰囲気のパッケージが女心をくすぐります。お土産にしたら喜ばれること間違いなし。
その空間美はもちろんのこと、可愛らしいオリジナル土産にも心奪われる「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」。ギネスも認めた世界一美しい牛乳屋さんは、だてではありませんでした。
[All Photos by Haruna Akamatsu]
※通常店内の写真撮影は禁止ですが、特別に許可をいただき撮影を行っています。(協力:ドイツ観光局)