ニュージーランドのおいしいものって?
ニュージーランドはオーストラリアタスマン海を隔てた東に浮かぶ島国。面積は日本の2/3ほどで人口は約1/9の約440万人が住んでいます。
ニュージーランドの食べ物と言えば、キウィフルーツや、最近では日本のスーパーでも手に入るラム肉などが頭に浮かびます。もともとはイギリスの植民地。ですから、典型的な朝食は目玉焼きにソーセージ、焼きトマトにベイクドビーンズだったり、フィッシュアンドチップスや、ラム肉の料理なども一般的です。
そんな保守的ともいえる食文化の国に登場した、「ファーム・トゥ・テーブル」という新しい食のトレンドに注目が集まっています。
ファーム・トゥ・テーブルがコンセプトのリバーストーン・キッチンへ行ってきました。
11年前にオープンしたリバーストーン・キッチン。ニュージーランドの南島の、クライストチャーチ(ニュージーランド第2の都市)から南に車で3時間、ダニーデン(ニュージーランド第3の都市)からなら北へ2時間、酪農地帯のど真ん中にあります。海も近く、静かで落ち着いた雰囲気です。
シンプルな建物の裏に回ればテラス席が気持ちよさそうで、さらにその先には農園が広がっています。解放感いっぱい。店内は広くゆったりとした作りで、毎日多くの人が訪れる人気店です。
採れたての野菜がおいしい!
秋の気配が感じられる4月、シェフでオーナーのビーバンさんにお会いしました。オークランドのレストランでも成功したシェフですが、生まれ育った土地に帰ってこのレストランをオープンしました。まずはこれを食べてみてと、テーブルに運んでくれたのが、秋が旬のイチジクとブルーチーズのサラダ。
「葉野菜はすべてここの農園で栽培しているし、リンゴやアプリコットの果樹園もある。ラム肉や魚、まだ作っていない野菜はここから20分以内の生産者から手に入れているんだ。」というビーバンさん。
自家農園には3人の職人がいて、そこに育つものでフレキシブルにメニューを変えるそう。たとえば、イチゴがおいしいのは10月の4週ほど、そのあとはラズベリーに、それからサクランボにといったように、その時の旬のものを使うそうです。
「大都会なら、あっちこっちの産地から季節にかかわらず材料が送られてくることもあるけど、ここにはそういうシステムはないから、自分たちで作らなければいけないし、地元の農場ともうまくやってるんだよ。」畑にはケールだけでも数種類。試行錯誤して種類を増やしているそうです。
自家農園や顔見知りのローカルな農園、牧場、港から手に入れるヘルシーな食材を自ら調理して、自分のレストランのテーブルにだすのが「ファーム・トゥ・テーブル」なんです。果樹園には、季節最後のリンゴがいくつか残っていました。
最初に来たのは地元の農家の皆さんだった!
リバーストーン・キッチンをオープンした時、最初に来てくれたのが実は地元の農家の皆さんだったそう。それまでは、このあたりで外食と言えば加工されたソーセージやバーガーなどの肉料理にフライドポテトといった、あまり健康とは言えないメニューばかりだったそうで、ヘルシーな食事を楽しむというアイデアがなかったそうです。
今では、地元産の材料を使ったメニューは地元の人たちにも、ニュージーランドを旅する人にも大人気で、小規模の団体ツアーを受け入れることもあるそう。「誰でもちゃんとしたものを食べてほしい」というビーバンさんの願いが、広く受け入れられるようになりました。
敷地内にはアンティークなテイストのグッズを売るお店も併設されています。カントリー・テイストのリネン、食器、小物などが売られています。
旬の食材、職人技、サステイナビリティが大切!
ビーバンさんは、地元にはもともとなかった植物を育てるなど、これまでにも様々なことに挑戦してきました。ラムやポークの飼育ももうすぐ開始する計画があるそうです。
なにしろ「旬の食材」を用いて、みんなにヘルシーな食生活を提供したい。そのためにも、農作業や調理のためにはいい職人が重要だといいます。クリスマスには10日間もお店を占めるのも、25名のスタッフ全員が家族との時間を過ごすため。スタッフも幸せでなければと、7年前から思い切って休むようになったそうです。
必要な量の野菜を作り、近隣の生産者から必要なものを手に入れて、豚や羊は1頭買いして無駄なく調理。わざわざ遠くから仕入れる際の運送も不要です。人にも地球にも優しいプロジェクトです。アンティークの店ではセカンド・ハンド(中古品)のものも売られているのもその一環のようです。
料理をいくつかご紹介!
ポークのリエット(煮込んで肉を崩したもの)にハーブを混ぜたものを、自家製のチャパタ(パン)で。ピクルスももちろん自家製。
仔牛のラグーは、クリームチーズとアメリカ南部の燻製唐辛子を使ったチポトレソースとフラットブレッドで。
このラム・レッグのグリルに載っているのはケールに「サルサ・ヴェルデ」というハーブをいくつか使ったメキシコのソース。ミントも入っててラムに合います。
バナナスフレとチョコレートアイスクリーム。もちろん、アイスクリームも自家製です。
このお店が始まってから11年。ビーバンさんのお店は評判を呼んで、その新しい取り組みは多くの人たちに影響を与え続けています。料理をいただくと、その成功の秘密のひとつはもちろん、おいしかったということじゃないかなと思いました。
[All photos by Atsushi Ishiguro]