海外旅行の計画を立てるとき、パスポートの有効期限をチェックしますよね?
ところが、実はそれだけでは不十分なのです。というのは、パスポートの有効期限が足りていても、渡航先の国が求める残存期間に満たないと旅行ができないという事態が発生することがあるからです。
「残存期間」って何?どこに気をつければいいの? ― 盲点になりがちなパスポートの残存期間について、詳しく解説します。
パスポート有効期限内でも旅行中止!?
海外旅行をする際、ほとんどの人がパスポートの有効期限を確認するはずです。旅行終了予定日までに期限が切れるようであれば、パスポートの更新、あるいは、まだパスポートを持っていない人は新規に取得することになりますね。
しかし、旅行終了予定日がパスポートの有効期限内に収まっていたとしても、旅行を中止せざるを得なくなってしまうこともあります。
それは、外国人が自国に入国するにあたって、一定のパスポートの残存期間を要求する国が多数存在しているからです。
「残存期間」とは、パスポートの有効期限を迎えるまでの期間のこと。パスポートの有効期限が2022年12月だとすると、2022年6月時点の残存期間は6カ月となります。
パスポートの残存期間が足りず出国できない!
ときどき、「パスポートの有効期限は確認していたけれど、残存期間のことは知らず、旅行ができなかった」という話を耳にします。
筆者の知人にも、パスポートの有効期限は数カ月先だったにもかかわらず、渡航先の国が指定する残存期間に満たなかったため、日本を出国できず、旅行が中止になってしまった人がいました。
知人が旅行しようとしていたのは、東南アジアのマレーシア。パスポートの有効期限が数カ月先なら一見余裕がありそうですが、マレーシア入国時に必要とされるパスポートの残存期間は6カ月なのです。
残存期間は現地滞在期間に関係なく要求されるもので、マレーシアに滞在を予定している期間がわずか数日でも、6カ月以上の残存期間がなければ入国は認められません。
多くの場合、フライトのチェックイン時にパスポートの有効期限を確認されるため、その時点で残存期間不足が発覚すると、搭乗を拒否され日本から出国できなくなる可能性が高くなります。
たまたまチェックを受けることなく現地の空港にたどり着いたとしても、パスポートの残存期間が足りなければ入国審査時に入国を拒否されることに……。
日本と関係の深い一部の国では「残存期間不足でも入国できた」という体験談もありますが、残存期間が足りなければ、入国できないのが原則と考えておきましょう。
必要な残存期間は国により異なる
パスポートの有効期限はチェックしていても、意外と忘れられがちな残存期間。しかし、この確認を怠っていると、旅行中止というとんでもない事態になりかねません。
必要とされる残存期間は国によって異なり、帰国日まで有効であればよいという国から、入国時3カ月以上、入国時6カ月以上などさまざま。
渡航先に応じて都度確認する必要がありますが、求められる最長の残存期間は「滞在日数+6カ月」のため、旅行開始時に7カ月以上の残存期間があればほぼ問題ないといえます。
なお、原則として入国要件が統一されているヨーロッパのシェンゲン協定加盟国では、シェンゲン協定加盟国出国予定日に3カ月以上の残存期間が必要です。仮にシェンゲン協定加盟国に合計2カ月間滞在する場合、最初のシェンゲン協定加盟国に入国する際に、5カ月以上の残存期間がなくてはならないということになります。
航空券の予約前に残存期間のチェックを
ツアー旅行の場合は、事前に旅行会社が残存期間を確認してくれますが、個人旅行の場合は、あくまでも旅行者一人ひとりの責任となります。そのため、海外旅行を計画する際は、航空券を予約する前にパスポートの残存期限をチェックするのが鉄則。
旅行直前になって残存期間不足に気づく人も少なくありませんが、申請からパスポートの発行までにはおおむね一週間程度かかります。申請日や混雑具合によっては、一週間以上かかることも……。
旅行の前日や前々日に残存期間不足に気づいたところで、すぐに新しいパスポートを入手するのはほぼ不可能。困った事態にならないよう、航空券を予約する前の段階でパスポートの残存期間を確認し、必要なら先に更新手続きを済ませておくことが大切なのです。
国別パスポート残存期間リスト
以下に海外渡航時に求められる国別のパスポート残存期間をまとめました。ただし、予告なしに変更される可能性もあるため、最新情報は渡航国の駐日大使館や在外公館などでご確認ください。
また、国によってはパスポートの残存期間に加え、事前に査証(ビザ)申請や電子渡航認証システム申請などをする必要があります。確認不足で「楽しみにしていた旅行が中止」なんてことにならないよう、海外旅行の計画を立てるときは早めに渡航先の入国要件をチェックしておきましょう。
アジア
オセアニア・南太平洋
ヨーロッパ
(アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロヴァキア、スロヴェニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク)
中東・アフリカ
北米・中南米
残存期間不足ならパスポートの更新を
自分が持っているパスポートの残存期間が、渡航先が定める残存期間に満たない場合、パスポートの更新(切替)が必要です。
申請から受け取りまでに一週間程度を要するため、時間には余裕を持って申請を。パスポートは、有効期限まで一年を切れば更新ができるので、有効期限まで一年未満になったら早めに更新しておくといいでしょう。
パスポートに「〇年〇月まで有効」と書かれていると、そのときまでは安泰という気がしてしまうものですが、出国時まで有効なら入国できるという国のほうが少数派。
パスポートの実質的な有効期限は、パスポートに記載されている日よりもずっと早いのです。
パスポートの豆知識について詳しくは、『パスポートはあそこに保管しちゃダメ!あなたは知ってる?パスポートの豆知識』『期限切れパスポート、そのままにしておいちゃダメって本当?〜正しい処分法〜』などもぜひご一読を。
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※2022年7月11日、情報を更新、追記しました