キリスト教の三大聖地は、バチカン、エルサレム、そしてスペイン・ガリシア州の「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」です。聖地巡礼と言っても誰にでも門戸が開かれていて、世界中から異教徒が「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」への道をすすみます。これが熊野古道の姉妹道ときいたら、もっと身近に感じますよね。
年間20万人が目指す聖地
サンティアゴ・デ・コンポステーラが聖地とされるのは、十二使徒聖ヤコブの墓がみつかったという説に由来します。記録に残っているなかで最も古い巡礼は、951年のこと。最盛期は12世紀で、年間50万人が巡礼したといいます。
現在は、年間20万人以上が聖地を目指します。巡礼路はカミーノと呼ばれ、全長780kmから900kmになるいくつものルートがあります。例えば、リスボン発の「ポルトガル人の道」、スペイン北部イルン発の「北の道」など。
中でも世界遺産に登録されている780kmの「フランス人の道」が人気で、7割の人々がこのルートを選びます。スタート地点は、フランスにあるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーというスペイン国境に近いまち。標高差が1,200m近くあるピレネー山脈を越えてゴールするまで、徒歩で1か月以上かかります。
そのため、巡礼者は夏休みがとれる時期が圧倒的に多くなっています。内訳は、スペイン人が半分くらい。それ以降は多い順にドイツ、イタリア、フランス、ポルトガルとなります。実は日本人も増えていて、過去14年の間に1万人以上が挑戦。国別の人数としては、25位です。結構多いですが、韓国が15位なのも驚きです。
巡礼者の動機は様々。宗教的な目的の人もいれば、文化的な興味がある人もいます。体力を試したい人、スピリチュアルな期待がある人、達成感を味わいたい人、普通ではない体験がしたい人などもいるのです。
たいていは徒歩で進みますが、自転車や馬、さらには車いすの人も。誰もが800kmを進む時間的な余裕、体力があるわけではないので、途中からの人もいます。最後の100kmを歩くという選択も人気です。それなら挑戦できそうですね。
ホタテ貝が目印
カミーノでは、ホタテ貝のマークが目印となって、人々を導きます。
そして、巡礼者も荷物に白いホタテ貝をつけます。ひょうたんの水筒を使う人もいるそうです。可愛い習慣ですよね。
巡礼者たちは声をかけあい、旅の出会いを楽しんだり、励まし合ったりすることもあるそうです。沿道の住人も応援すべく、軽食の寄付をしたり、マッサージしたりして巡礼者とふれあいます。ちなみに、これらはフルマラソン以上のマラソン大会にもよくある光景です。素晴らしいことですよね。
この巡礼のゴールは、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂。巡礼者のミサでは、国名と名前を読み上げてもらえます。
【住所】Plaza Obradoiro,15705 Santiago de Compostela
http://catedraldesantiago.es/
ただ本当のフィナーレは、フィニステレ岬のようです。中世の頃、大西洋を望むこの地は地の果てと考えられていました。カミーノの0キロポストが立っているそこまで、さらに3~4日かけて行く人が多いそう。近年、そこで巡礼に使った靴や服を焼くというのが、浄化のための儀式とされていました。それも強風のときに火が燃え広がったことから、2011年に禁止されています。ここで大西洋に沈む夕日を見るのも、新しい自分になれると言われているそうです。
巡礼者の特典
地元の人々の好意だけでなく、沿道一帯で巡礼者をもてなすのがすごいところ。巡礼者は3ユーロ(約389円)ほどの巡礼手帳に、道々でスタンプを押していきます。これを提示することで割引が受けられるシステムです。
例えば宿。公営の宿は、5~10ユーロ(約648~1297円)で泊まれます。飲食店では巡礼者メニューを用意しているところも多く、各地の大聖堂や博物館といった観光の割引もあります。また、帰りはこのまちからの飛行機や鉄道料金が割引になります(どの程度の割引かは不明ですが、鉄道は3割引、飛行機は先着順という情報があります)。
大聖堂の巡礼事務所では、手帳に押されたスタンプを確認した上で、巡礼証明書を発行しています。条件は、宗教的か宗教及び文化的興味で挑戦していて、最後の部分を徒歩なら100km以上、自転車なら200km以上を達成していること。あてはまらない場合は、歓迎証となります。
巡礼証明書は、中世のころは免罪符のようなものだったと聞けば、一層重みが感じられます。キリスト教徒以外もウェルカムということなので、挑戦したくなりました。
※1ユーロ129.68円で計算しています(2018年10月8日現在)
参考
[日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会]
[エアトリ]
[ブログ 百聞は一旅に如かず]
[Heritage, Pilgrimage and the Camino to Finisterre: Walking to the End of the World(eBook)]
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