年2回だけ公開される秘密の庭園
東京都国分寺市に、手つかずの自然が残された場所があります。そこは、なんと企業の敷地内。日立製作所中央研究所の中にあるのです。武蔵国分寺の跡地でもあるこの場所に研究所が創設されたのは1942年。創業者である小平浪平氏の「よい立ち木は切らずに、よけて建てよ」という言葉に従い、約70年間にわたって武蔵野の森が守られてきました。
普段はもちろん、関係者以外は入れない場所なのですが、毎年4月と11月には一般開放しています。NHKの散歩番組「ブラタモリ」で紹介されたこともあって、一般公開はとても気になる!というわけで、足を運んでみることにしました。
現地に行ってみると、実にたくさんの人が訪れています。広場には屋台が並び、中で食事ができますし、簡易トイレも設置されています。広大な敷地なので、中でゆっくりと1日過ごす人が多いのでしょう。
腹ごしらえを済ませたら、さっそく敷地内の散策へ。大きな樹木が生い茂り、どうみても企業の敷地内とは思えません。構内には約120種2万7千本の樹木が茂っているそうです。
川の水源地にもなっている池
中央研究所の中には、いくつかの湧水地があります。これらは国分寺市、三鷹市、調布市、世田谷区を経て多摩川に注ぐ野川の源流にもなっています。
触ってみたら、意外とぬるい。
湧水を集めて造られた大池は、一周するのに1時間弱はかかる、広大な池です。池のほとりに座ってゆっくりとくつろぐ家族連れの姿もたくさん見られました。
大池には立派な白鳥と鯉もいます。この白鳥は、なんと皇居のお堀にいる白鳥の子孫。天皇陛下が皇太子時代にここを訪れた時に、お堀の白鳥を下賜されたのだそうです。
ひととおり構内を回ると、半日かかりました。こんなにすごい環境を一企業が保有しているということに驚きを隠せません。めったに入れない場所だからこそ、これだけの自然が今なお保存されているのでしょう。
雨天になると公開は中止になるので、今年も晴れることを祈りつつ、また行ってみようと思います。
[All photo by Akiko Imai]