ベルギーではビールが「チェイサー」に?日本とは違う世界の意外なビール文化

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Aug 26th, 2021

お盆が過ぎたため夏の暑さも一服感がありますが、やはりこの時期はまだまだビールがおいしいですよね。新型コロナウイルス感染症の影響でお店へ出かけられなくても、家ではしっかり飲んでいる人が多いのでは。身近なビールに関する世界の意外な習慣を今回は紹介します。

ビールのイメージ

ベルギーではチェイサーとしてビールを飲む

ベルギービール

唐突な質問ですが、チェイサーと言われたら何を思い浮かべますか?『広辞苑』(岩波書店)を調べると、

<強い酒や濃厚な酒のあとで、口直しに飲む飲料>(『広辞苑』より引用)

と書かれています。ウイスキーなど強いお酒と一緒に注文して悪酔いしないように飲む水のイメージではないでしょうか。

しかし諸外国の一部では、チェイサーにビールを頼む文化が普通に見られるようです。

例えばベルギー(とオランダ)で生まれたジンに近いお酒『Jenever』を飲む時、ベルギーの人たちはチェイサーとしてビールを頼みます。ビールよりも強い『Jenever』を飲むために、ビールをチェイサーにするのですね。

標準的な日本人の感覚では「ビールがチェイサー?」と思うかもしれません。しかし『広辞苑』で「チェイサー」をあらためて調べると具体例として、

<水・清涼飲料やビールなどの軽いアルコール飲料を冷やしたもの>(『広辞苑』より引用)

と書かれています。そもそもチェイサーは水だけでなく、強いお酒・濃厚なお酒よりも軽い、口直しに飲む飲料全般を意味するらしいです。

口直しの意味では、炭酸飲料のビールは確かに適しているように思えます。自宅で何か強いお酒・濃いお酒を飲む際には、ビールをチェイサーにする飲み方にチャレンジしてみてはどうでしょう。とことん酔っても自宅なので安心ですし。

ちなみに、ビールに合わせるつまみとしてチョコレートを口にする楽しみ方もベルギーではあるみたいですよ。

ドイツでは16歳からビールOK

ビールグラス

ビール大国・ドイツの例です。日本では一律で20歳からしか飲酒できませんが、ドイツの場合はアルコール飲料の種類によって、飲める年齢に段階が設けられています。

ウイスキーなど強いお酒は、18歳からしか飲めません。しかし、ビールのような「軽い」お酒はもっと早くから飲めて、その年齢は16歳です。日本でいえば、高校1年生の時点で大手を振ってビールを飲んでいいとの話ですね。

しかもドイツのビールは水と同じくらいの値段で飲めてしまいます。若いころからビールを飲む文化が生まれ、ビール大国としての土台を分厚くしているようです。とはいえ、当のドイツではアルコール問題も指摘されています。

日本から見ると「ドイツ=ヨーロッパの優等生」のイメージがあるはず。第二次世界大戦までは不幸な歴史の当事者でしたが、その後の振る舞いは実に模範的で、国家としてそれほど大きな問題がないように見えます。

しかしドイツ人の飲酒習慣は国内で問題視されています。アルコール依存症の患者に加え、健康を害しかねない量のアルコールを日常的に摂取している人たちの数を合計すると、1000万人を超えるとの試算もあります。ドイツの人口は8300万人ほど。8人に1人はアルコールによって健康を害しかねない状況にあるのです。「アルコールを飲まない派」の若者も最近ドイツでは目立ってきていると、さまざまなメディアが報道しています。

日本の若者のアルコール離れも加速しています。アルコールを摂取する行為そのものが、喫煙などと同じで世界的に「時代遅れ」になろうとしているのかもしれません。

ブラジルではビールをゆっくり慎重に注ぐ

ブラジルのビール

最後は南米の大国・ブラジルのビール文化です。ブラジルは国土が広いため、気候も地域によってさまざまですが、一般的なイメージはやはり「南国」「太陽」「サンバ」ではないでしょうか。

それらのイメージは多くの場合で正しく、大変な暑さをしのぐためにブラジルではビールもきんきんに冷やされます。きんきんどころか、注ぎ方を間違えるとシャーベット状になってしまうくらい冷やすと、筆者のサッカー仲間であるブラジル人が言っていました。

ビールの凝固点(=融解点)である-3 ~-4 ℃を超えるまでゆっくり静かに冷やすと、本来は凍ってしまう冷たさなのにビールが凍っていない状態(過冷却)になります。そのビールに振動を与えたり中に何かを投入したりすれば、静かで安定した過冷却の状態が崩れ、何かを思い出したようにビールが瞬時に凍ります。過冷却状態のビールを日常的に扱うブラジルの飲食店では、お客へサーブする際にビールが凍ってシャーベット状になってしまわないように、注意を払いながら静かにゆっくりと注ぐようですね。

日本の飲み会で見られるようにビール瓶を大胆に持ち上げて注ぐ入れ方をすると、ブラジルではビールが凍ってしまうとは、ちょっとしたカルチャーショックではないでしょうか。

タイやベトナムではビールに氷を入れるなど、世界のユニークなビール文化はほかにもいろいろとあります。どのような習慣が世界にあるのか自分で調べて、そのエピソードをさかなに「宅飲み」を楽しんでみてはいかがですか?

 

【参考】

Drinking Traditions Around the World – LAST NIGHT OF FREEDOM

Drinking Traditions Around the World – TOIT

「世界の意外なビールの楽しみ方」を日本在住外国人に聞いてみた – マイナビニュース

氷点下飲料 – 日本冷凍空調学会

※ アルコール薬物問題全国市民協会

さらに進んだ若者のアルコール離れ-20代の4分の1は、あえて飲まない「ソーバーキュリアス」 – ニッセイ基礎研究所

[All photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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