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>>【実はこれが日本一】最長距離275.5kmを約4時間で走る「鈍行」とは?
日本一短い国道は174号線
神戸港
国道と言えば何号線を思い浮かべますか? 順当に考えれば1号線だと思いますが、埼玉県で育った筆者は国道16号線に親しみを覚えます。北陸の富山県へ引っ越した後は、8号線や156号線を思い浮かべるようになりました。
国道の定義を辞書で調べると、
<国の造営物である道路>(岩波書店『広辞苑』より引用)
と書かれています。道路交通法で言えば、
<高速自動車国道と併せて全国的な幹線道路網を構成>(道路交通法より引用)
し、重要な都市同士を連絡したり、高速道路、大きな港、および空港へのルートを確保したりする目的を果たすのだとか。
一般国道は、国が管理する国道(直轄国道)と、都道府県(政令市)が管理する国道(補助国道)に分かれます。
費用については、国と都道府県(政令市)が負担し、状況によってその負担額の割合が変化する仕組みになっています。
地方の幹線道路網となる都道府県道は一方で、費用負担も道路管理者も都道府県(政令市)と定められています。
まちづくりの専門家と富山のまちを歩いた時、歩道と私有地の境界線の処理が国道と市道で違っている様子を見せてもらいました。
道路は道路でも、どこの誰がつくって管理している道路なのかを意識しながら違いに注目して歩くと、思わぬ発見があるから面白かったです。
日本一短い国道とは
そんな国道についての話。国道と言われると長大なイメージがあるはずですが、日本で一番短い・長い国道はどこにあると思いますか? また、それぞれどのくらいの長さだと思いますか?
日本一短い国道は174号線で兵庫県の神戸市にあります。「日本で一番短い国道です」と現地には青看板で表示されているくらいで、その長さはわずか187m。短距離の陸上選手が全力で走り切れるくらいの短さですね。
日本の主要な国際貿易港(いわゆる5大港)のひとつである神戸港から主要な国道へと通じる産業道路です。山口県の岩国空港から延びる189号線(372m)が短さ第2位、東京港から延びる130号線(482m)が第3位。
いずれも空港や港などと近隣の国道を結ぶ路線です。国道は、その国の戦略を暗に示しますから(どこの道路を国道にするかによって重視する経路がわかる)、港や空港への交通網を日本が国家として大事にしている様子が伝わってきます。
海上と陸上の総延長が857.6kmに達する国道
一方で、最も長い国道はどこでしょうか? 旅慣れた人やクイズ王、あるいは東北に暮らす人たちの一部は、国道4号線と答えるかもしれません。
東京から青森へと通じる全長743.6kmの国道で、筆者は大学生のころ、埼玉県の春日部市あたりから宮城県の仙台市まで、10万円の中古車でひたすら走った思い出もあります。
その道が仙台を越えて青森まで通じていると当時は知りませんでしたが、すさまじい距離ですよね。一部ですが実際に走ったので、その距離感が体でわかります。
しかし、この国道も現実にはNo.2。さらに上を行く国道があります。全長857.6kmの国道58号線で、鹿児島市から沖縄の那覇市へと通じる道路です。
そう聞いて多くの人が「ん?」と感じるはずです。鹿児島市と那覇市の間は海です。まさにそのとおりで、海の上をフェリーで通過する海上国道と、薩南諸島・沖縄本島の陸上を走る国道の総延長が857.6kmに達しているわけです。
その海上と陸上を足したルートこそが、「日本で一番長い国道」と国土交通省からも公式に認められる国道なのですね。
沖縄返還の当日に一般国道58号と指定された
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地図上で確認すると、確かに種子島には国道58号線が走っています。奄美諸島の大島、沖縄本島にも確認できます。
オリオンビール奨学財団の公式サイトには、国道58号線に関する記述があり、沖縄の人には「ごっぱち」「ごーぱち」などと親しまれていると書かれています。
米軍統治下の沖縄で沖縄住民側が創立した自治機関・琉球政府が存在したころ、この「ごっぱち」は「琉球政府道1号線」と指定されたそうです。有事の際には、米軍機が離着陸できる滑走路としても利用が想定されていたといいます。その関係もあって、国道58号線沿いには今でも米軍基地が数多く点在します。ニュースでよく耳にするあの普天間基地も国道58号線沿い。
TABIZINEらしく観光客目線でいえば、北谷町(ちゃたんちょう)のアメリカンビレッジも国道58号沿いにあります。調べてみると、NAHAマラソンも国道58号線をルートの一部として開催されるのだとか。
それらの事実を並べるだけでも、国道58号線が沖縄を代表するシンボルのような国道だとわかります。
沖縄返還の当日である1972年(昭和47年)5月15日に、「全国的幹線」として琉球政府道1号線が一般国道58号に指定されました。
元日本道路公団総裁で土木工学の専門家である故・高橋国一郎さんの証言によると、片側2車線の4車線、中央分離帯でセパレートされた立派な国道に復帰後につくり直したそうです。
奄美諸島の大島、種子島の部分についても後の1974年(昭和49年)に追加指定され、「本土」の鹿児島市と結ばれます。
新型コロナウイルス感染症の影響が終息したら、鹿児島発で海路を使い那覇へと訪れる旅などもいいかもしれませんね。日本一長い国道をたどるうちに南方の歴史や文化、伝統に詳しくなれるはずですよ。
[参考]
※ 一番短い国道は何号ですか? – 国道交通省北海道開発局稚内開発建設部
※ 国道の歴史 – 国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所
※ 道路法 – e-Gov
※ 鹿児島―那覇 長さ日本一の国道58号は7割が海の上 – 南日本新聞
※ 「国道58号線」沖縄本島の旅には欠かせない国道沿いは魅力いっぱい – Orion
※ レファレンス事例詳細 – レファレンス協同データベース
※ 高橋国一郎氏が死去 元建設事務次官、元日本道路公団総裁 – 日本経済新聞
※ 一般国道の路線を指定する政令(昭和四十年政令第五十八号) – e-Gov
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