2006年5月19日 アップルストア フィフスアベニュー店オープン当時 [Photo by Hideyuki Tatebayashi ] Do not use images without permission.
アップル製品って値段が高いだけじゃないの?
筆者はパソコンはMac、携帯電話はiPhoneを使っておりますが、特にアップルのファンではありませんでした。Macは配偶者のお古、iPhoneは配偶者の大推薦に従ったものです。配偶者は大のアップルオタクで、Macはもちろん、iPhone、iPad、Apple Watchまで持っており、いずれもお高いのに、「そんなにアップル(Apple Inc)に貢いでどうするの」と心の中で思っておりました。
米ニューヨークではアップルの人気が高く、スタイリッシュなデザインもあって、ほとんどの人はパソコンも携帯電話もアップルのものを使っています。私が英語の語学学校に通っていた頃、学校の教師にスティーブ・ジョブズ氏(創業者)の自伝映画(Pirates of Silicon Valley、The Man in the Machine)を数度見せられ、洗脳させるつもりなのかと思うほどでした。「スティーブ・ジョブズはさまざまな災難に遭ったのに、ライバルであるビル・ゲイツには何も起こらなかった」とアップルオタクの語学教師が悔しがっていたのも、印象に残っています。個人的には「自分がやったことが、戻ってきているのでは」と思い、特に恋人や当初認知しなかった娘に対しての態度には、女性として許せないものを感じていました。
つまり、スティーブ・ジョブズ氏が天才で魅力があるのは認めるけれど、アップル製品が素晴らしいと分かるほど知識もなく、「アップル製品って値段が高いだけじゃないの?」と思っていたのです。
iPhone(初代SE)が固まってしまった!
Attila Fodemesi / Shutterstock.com
メカ音痴の私にとってiPhoneの新製品は興味の対象になく、プロバイダー契約(繋がりにくい回線で現在は解約)とセットで購入したら超お買い得だったSE(初代)を長く使っていたのです。
2022年1月末仕事帰りに配偶者にテキストしようとしたら、iPhoneがリンゴマークのロゴのまま固まっていました。帰宅してインターネットで調べて、アップデートやら復元やらなんとか動かそうとするものの、反応なし。今冬のニューヨークは寒さが厳しく、2022年1月は気温が氷点下11℃まで下がり、iPhoneのバッテリーがほぼ0まで飛ぶこと数回。温暖なカリフォルニア育ちのiPhone(初代SE)には、極寒がこたえたのかもしれません。
そこでプロバイダーのT-mobileに持っていきましたが、筆者のSE(とっくに保証期間対象外)に見むきもせず、「技術者はいないよ」「iPhoneは12以前はないよ、買うなら頭金700ドル払って、あとは分割ね」と客をなめた態度。その対応は「ふざけるな、そんな態度のヤツから誰が買うものか」と思わせるものでした。
近いうちに買い替えなきゃとは思っていたものの、データのバックアップを取っていない(メカ音痴あるある……)ので、できれば蘇らせたい気持ち。「困った〜」と思案した挙句、仕事帰りにグランドセントラル駅のアップルストアに行くことを思いつきました。アップルオタクの配偶者が、「あそこは技術者がいるから、絶対行った方がいい」と言うので、そこでダメだったら諦めもつくものです。
アップルファンでない筆者にとって、iPhoneは贅沢。直らなかったら、ギャラクシーにしようかなと考えていました。友人知人の持っているギャラクシーは画面が広く画像も綺麗で、小さいSEより使い勝手が良さそうだからです。
グランドセントラル駅構内のアップルストアへ行ってみた
アップルストア グランドセントラル駅店 大理石の階段を登った上階にある Bumble Dee / Shutterstock.com
グランドセントラル駅構内のアップルストア(2011年出店当時は世界最大級の店舗)で、プロバイダーではゴミ扱いされた初代SEですが、ダメもとでスイッチが入るかどうか聞くことに。2021年12月頃まで中に入れたのに、2022年1月末現在はコロナ感染予防のためか店内には入れず、入り口で「iPhone(初代SE)のスイッチが入らず、リンゴマークで固まっている」を伝えると、1時間後に技術者のアポイントを取ってくれました。
アップルストアの階段下で受け付けてくれるスタッフの誰もが感じが良く、対応がスムースなのにびっくり(アメリカは日本とは違い、一般的にガックリするほどカスタマーサービスや事務手続きのレベルが低い)。
保証期間対象外のiPhone(初代SE)修理に1時間も奮闘してくれた技術者
アップルストア グランドセントラル駅店 筆者が実際に修理を受けたのが、写真手前のテーブル Tooykrub / Shutterstock.com
誠実で真面目な印象のラテン系の若い技術者は、初代SEとバカにせず、ああでもないこうでもないと1時間以上「無料」で復活を目指してくれました。その時の彼の態度に感心した点を挙げてみます。
●心配している客に対して、ネガティブなこと(「直らないかもね」「古いからねえ」「買い換え時かもね」)を一切口にしない。
●何をやっている(修理の状況)のか、常に説明してくれる。
●なんでも答えるから質問があったら聞いてと言ってくれ、質問しやすい。
●修理をあきらめない
●売りつけようとしない
考えてみれば、初代SEは保証期間対象外。ただスイッチが入るのかどうか(すでに壊れていて回復の見込みがないのか)知りたかっただけなのに、技術者の予約を取ってくれたことは驚きでした。
アップル製品の価格の高さは、スタッフの質の高さに比例する?
アップルストア グランドセントラル駅店 Andriy Blokhin / Shutterstock.com
技術者の努力にも関わらず、筆者のSEが蘇ることはありませんでした。買い替える時はギャラクシーと思っていたのに、アップルストアの対応の良さに「どうせ買うのなら、今ここで買おう」と気持ちが変化していました。技術者からセールス担当にバトンタッチして、ミニノートブックで在庫を調べると、新製品を持ってきてくれました。目の前に新製品が来るまで、ものの5分。すっきりと手際が良いことも好印象。筆者の懐具合と技術者の勧めもあり、SEの第2世代にしました。
プロバイダーでは分割(2年間以上)でないと買えないiPhoneは、アップルストアなら一括払いできるのも良かったです。筆者はどうせ払わなければいけないのなら一度で終わらせたいので、消費者を長く縛りつけようとするプロバイダーの分割払いが嫌いなのです。
プロバイダーのシムのセットアップの手続きなどもセールス担当が小1時間ほどでやってくれ、使用できる状態で新しいiPhoneを渡してくれました。お会計はレジに並ぶことなく、セールスの人が持参のカードリーダーでテーブルで精算。レシートはEメールでくれました。修理だけで帰っても問題なし。壊れていても、ここでiPhoneを買わなくても問題なし。無理に売りつけようというセコイ根性もなし。それぞれが、プロフェッショナルで自分の仕事をしていました。修理を無料で引き受けるのは、品質改善の市場調査でもあるのでしょう。ニューヨークのどこのアップルストアにも技術者が多くいるわけではなく、グランドセントラル駅のみのようです。技術者は多くいましたが、筆者には特に良い担当が当たったように感じました。
アップル高すぎと思っていましたが、さすが一流と実感した日でした。信頼できて納得がいけば、買い物は楽しく、高く感じないものです。
住所: 45 Grand Central Terminal, New York, NY 10017
電話: (212) 284-1800
営業時間: 月〜木曜日8:00-20:00 金曜日10:00-19:00 土曜日11:00-19:00
URL: https://www.apple.com/retail/grandcentral/
修理予約など: https://www.apple.com/retail/geniusbar/