【特集】世界に誇れる「1番」が日本にはたくさん!貴重な職人技や意外な絶景も
世界選手権大会では「50%以上」が愛用
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卓球は見ますか? それとも、しますか? 温泉旅館に卓球台が設置されていることも多いように、日本人にも縁が深いスポーツだと思います。
さすがに、各地の公園に卓球台が置かれている中国での親しまれ方ほどではありませんが、日本のスポーツ競技人口でトップ10に入るほどの人気ですよね。
そんな卓球の分野で世界一を誇る日本の会社があります。卓球の競技に欠かせない道具、卓球ラケットとラケットのラバーをつくる会社の話です。
実はこの分野、東京に本拠地を構える「タマス」という会社が世界でトップシェアを獲得しているとご存じでしたか?
タマスは会社名。「バタフライ」のブランド名で出しているラケットとラバーは、世界選手権大会に出場する世界各国のトップ選手のうち、ほぼ毎回50%以上の人たちに愛用されています。
要するに、トップオブトップの選手たちにもっとも愛されているブランドがバタフライで、そのブランドの製品をつくっている会社が日本のタマスなのですね。
卓球用具で世界一を取りたい
2022年4月現在、世界ランキング第1位で、中国ナショナルチームの代表選手でもある樊振東(Fan Zhendong)さんもバタフライと契約したと、2021年(令和3年)11月1日に発表されました。
一般的な関心からすると、ちょっと縁遠いニュースかもしれませんが、卓球ファンであれば記憶に新しいのではないでしょうか。
もともとタマスは、戦後の1946年(昭和21年)に山口県柳井町(現・柳井市。屋代島を対岸に眺める瀬戸内海沿いの美しいまち)で生まれた「タマス運動具店」を起源に持ちます。卓球選手だった田舛彦介さんがお父さんと一緒に開業したそうです。
東京に出張所をつくった1949年(昭和24年)の全日本選手権を最後に、田舛彦介さんは現役を引退し、1950年(昭和25年)にお父さんと株式会社タマスを立ち上げました。初代社長にお父さんの田舛義一さん、専務に田舛彦介さんが就任したと同社の公式WEBサイトに書かれています。
田舛彦介さんは戦後の開業前に選手として卓球を再開しています。その当時は、日本製ラバーに満足できず、進駐軍を通じて外国製ラバーを手に入れたこともあったようです。
毎日新聞経済部による『増補版 日本の技術は世界一』(新潮文庫)によると、卓球選手の全盛期を戦争で逃した悔しさから、卓球用具で世界一を取りたいとの思いもあったとされています。さまざまな歴史的背景や思いを背負って開業へと踏み出していったのですね。
バタフライの快進撃
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1952年(昭和27年)に東京へ拠点を移すと、1954年(昭和29年)には自社工場を立ち上げ、同年から「世界卓球アンケート」も開始します。
この世界卓球アンケートについては『増補版 日本の技術は世界一』にも書かれています。海外の選手にアンケートを航空郵便で送ったり、世界選手権大会に出場する各国の主力選手を訪ねたりして、自社の卓球用具を試してもらったのですね。そのフィードバックを競技用の特注ラケットづくりに落とし込み、バタフライ快進撃の基礎とします。
一方で同社は、トップ選手へのコミットだけでなく、卓球業界のすそ野の拡大にも利益を還元する形で取り組んできたそうです。
世界の卓球情報や技術指導に関する情報を日本の卓球愛好者に提供する『卓球レポート』を創刊したり、宿泊施設を備えた練習場「バタフライ卓球道場」を若い選手の育成のためにつくったり、卓球講習会を開いたりといった感じですね。
そう思うと、今度の連休に温泉旅行へ出かける人は、どのようなラケットが館内の卓球台に置かれているか、チェックしてみてはどうでしょうか。
もちろん、100円ショップで売られている安価な卓球ラケットとボールの可能性も大いにありますが、バタフライのブランド名や蝶のロゴマークが見られたら、宿の主人は卓球の愛好家である可能性が高いはずです。
何かの折に「バタフライのラケットまで用意しているのですね」と声をかければ、宿の主人と一気に距離が近付くかもしれません。
同じ卓球業界で言えば、日本の卓球用品メーカー「Nittaku(ニッタク)」のプラスチック製卓球ボールも日本製で唯一、国際卓球連盟に公認されていて、世界トップクラスのシェアを誇るようです。
ラケットがバタフライ、卓球ボールもニッタクだとしたら、宿の主人か、あるいは従業員の中に、筋金入りの卓球愛好家がかなりの確率で存在していると判断できそう。
タイミングを見て関係者に話しかけてみると宿泊の体験がもっと楽しくなりそうですね。
[参考]
※ タマスの歴史
※ 卓球で「公式ボールの製造国が有利」は本当か – 東洋経済オンライン
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