標高5,800m!世界最高地点の車道はエベレストのベースキャンプより高い【旅に関する面白いギネス記録】

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Jun 10th, 2023

1955年に書籍から始まった「ギネス世界記録」。人間が達成した記録や、自然界で起きた「世界一」など、さまざまな世界記録を認定・登録しています。その中から、旅行に関するギネス世界記録を紹介していきます。今回は、世界で最も標高の高い場所につくられた車道を紹介します。

インド・レー
世界で最も標高の高い道路が通る村(レー) ©️Shutterstock.com
 


 

標高5,798.251mの道路


Newspinal, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

「世界で最も標高の高い道」というと、登山道も含まれるので勝敗が決しがたくなってしまいます。しかし、「車が通れる道路」という意味では、世界で最も標高の高い場所は決まっています。

最高地点は5,798.251m。日本国内には存在しない標高の高さですね。

では、世界で最も高い車道は、どこにあるのでしょうか?

それは、ラダックという地域にあります。この地名だけで、どこの国のどの辺にあるのかわかる方は、筋金入りの旅行者のはずですがどうでしょうか?

答えは、インドです。標高の高いエリアとなれば、北のヒマラヤ山脈の方だと予想が付きます。具体的にはどの辺でしょう。

世界史の教科書を思い出してください。インドとその西方にあるパキスタンは何度も戦争を繰り返していて、両国が国境を接する辺りには係争地があると習いませんでしたか?

ラダックはまさに、その係争地域にあります。インドの北部にある係争地に、世界で最も標高の高い道路「Umling La」があるのですね。

エベレストのベースキャンプよりも高い


Naresh Parate, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

あらためて、ラダックとはどんな場所なのか『ブリタニカ国際大百科事典』に詳しいので確認してみましょう。

インド・パキスタン・中国の間で帰属を巡って争いが起きている係争地・カシミール(インド洋に突き出た三角形の巨大な半島の北部)の東部にあると書かれています。現状で、停戦ラインに従ってインドに大部分が属するようです(とはいえ、いまだに死者の出るような争いが報じられています)。

5,000~6,000mの山々が連なり、モンゴロイド系のラマ教(チベット仏教)の信者が暮らし、ヒツジやヤクの放牧に加えて、小麦や大麦などの栽培もされている土地だとの記述もあります。

手元の地図を見てみました。中国との国境は正確に定められていないため、地図上の国境が点線になっています。

その点線の向こう側(中国側)には、チベット(西蔵)自治区やシンチャン(新疆)ウイグル自治区があり、古くから互いに交易が盛んだったそう。

チベットやウイグルのイメージを思い浮かべると、ラダックの風景や暮らしがなんとなく見えてくるかもしれません。

そのラダックに、世界で最も標高の高い車道があります。道中には、

<YOU ARE NOW HIGHER THAN EVEREST BASE CAMP>(道路脇の看板標識より引用)

といった標識が置かれていたり、最高点地点には、

<HIGHER THE HILL STRONGER THE WILL>(道路脇の看板標識より引用)

と書かれた石碑があったりします。

日本語に訳すと「あなたは今、エベレストのベースキャンプ(ネパール側は5,364m)より高い場所にいます」だとか「山は高く、志も高い」といった感じでしょうか。

エベレストのベースキャンプよりも高い場所にあるので当然、気温も低いです。標高の最高地点には、

<BRO WELCOMES YOU TO HIGHEST MOTORABLE PASS IN THE WORLD>(道路脇の看板標識より引用)

といった石碑も見られます。日本語にすると「ようこそ。世界最高所にある、車の通れる道路へ」といった感じでしょうか。

この道路は、世界最高所の車道を走れる秘境中の秘境なので、世界中のタフな旅人から注目の的になっているようです。この道を、愛犬と一緒にバイクで走ったり、電気三輪車で到達したりする人が、各種のメディアで報じられています。

その意味で言うと、SNS(会員制交流サイト)などで影響力を拡大したい人は、ユニークな旅の仕方を考えてUmling Laを走る計画を立ててみてはいかがでしょうか。

その挑戦を事前に、メディアに知らせて取材を取り付ければ、世界で有名な旅人の一人になれるかもしれませんね。

[参考]
Driving up the world’s highest motorable road: India’s Umling La Pass – Republic World
Highest altitude road – Guinness World Records
ラダック – 西遊旅行
【記者コラム】ヒマラヤのラダック、地球の高みへの旅 – AFP
Man and dog take a bike trip to Ladakh. Their journey is too good to miss – The Indian Express
World’s 1st Electric 3W to Reach Umling La Pass Driven by Female Driver – Indian Autos Blog
カシミール地方で砲撃戦、印パ双方で13人死亡 民間人も犠牲に – AFP

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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