【東京にある巨大地下空間に行ってみた】25mプール4800杯分!「TOKYO強靭化プロジェクト」とは?

Posted by: わたなべ たい

掲載日: Aug 2nd, 2023

東京の地下に眠る巨大空間…… 実はこれ、水害を予防するために造られている巨大な調節池。現在進行中の工事が終われば、なんと25mプール4,800杯分もの巨大地下調節池が完成するのだとか。今回はなかなか見ることのできない、都民の安全・安心を守る地下調節池に大潜入!

TOKYO強靭化プロジェクト

国内最大になる地下40mにあるトンネル式の巨大な水槽

TOKYO強靭化プロジェクト調節池

今回、取材が許されたのは「環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)」。完成すれば中野区野方5丁目から練馬区高松3丁目まで約5.4㎞に渡る、環七通りや目白通りの地下に整備されるトンネル式の調節池。

TOKYO強靭化プロジェクト調節池2

現在、工事の真っ最中。フェンスに囲まれた小さなエレベーターに乗車し、地下約40mの世界を目指します。

TOKYO強靭化プロジェクト調節池3

TOKYO強靭化プロジェクト調節池4

実は、この調節池の整備は2023年から始動した「TOKYO強靭化プロジェクト」のひとつ。1923年(大正12)年9月1日に発生した関東大震災から100年を迎えるのを機に、2040年代までに総事業費15兆円規模で実施される都市計画。風水害や地震、火山噴火、電力・通信などの途絶、感染症などに備え、被害を最小限に抑えるさまざまな施策を実施予定。

TOKYO強靭化プロジェクト調節池5

それにしても、足がすくんでしまう高さ!

TOKYO強靭化プロジェクト調節池6

TOKYO強靭化プロジェクト調節池7

階段で降りれば、工事中のトンネルの姿が間近に迫る大迫力。

TOKYO強靭化プロジェクト調節池8

煙や粉じんなどで覆われている過酷な環境と思いきや、空調も効き、ピンクのフェンスや柱などと、明るく整然とした雰囲気が印象的。

TOKYO強靭化プロジェクト調節池9

TOKYO強靭化プロジェクト調節池10

立坑から横に伸びるトンネルに入っていきます!

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間

まさにこのトンネルが調節池になるところ。豪雨時などは水でいっぱいになるのです。「環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)」は、1時間に75mmの降雨に対応できる能力があり、貯留量(貯水量)は約68万立方メートル(68万トン)。25mプールに換算すると約2,200杯分もあります。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間2

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間3

さらにこの調節池は、すでに完成し運用されている練馬区の「白子川地下調節池」と杉並区の「神田川・環状七号線地下調節池」を連結させる役割もあるんです。それぞれの貯留量は約21万立方メートル(21万トン)と約54万立方メートル(54万トン)。合計すると貯留量は約143万立方メートル(143万トン)となり、25mプール約4,800杯分もの水を貯めることが可能に。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間4

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間5

総延長は約13.1kmにもおよび、国内最大の地下調節池となるのです!

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間7

こちらが、外径約13.45mもの巨大なシールドマシンによって現在掘削中の最先端部。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間8

まったく音はせず、粉じんも立たず、削っているのかいないのかわからないほど。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間9

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間10

1分間に約4mm、1日に4mほど掘削しているんだとか。その状況は、トンネル内に設けられた中央監視室で24時間、常に監視され、2025年12月の完成を目指します。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間11

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間12

掘削された土砂は、1日で10トンダンプカー100台になることもあるとのこと。

調節池が密集する激レアスポットに広がる巨大な地下空間

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間13

実際に運用されている調節池はどうなっているのか興味ありますよね! ということで、これは練馬区の「白子川地下調節池」。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間14

内径は約10m。特別にライトアップされていますが、貯水のための施設なので通常は真っ暗。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間15

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間16

ぽっかりと口を開ける暗闇の向こうには、約3.2kmに渡りトンネル(調節池)が続きます。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間17

地下トンネル式の「白子川地下調節池」周辺には、異なるタイプの調節池が3つあり、白子川地下調節池群と呼ばれる都内有数の珍しいエリア。川の左岸に列柱が連なる取水口が見えるのは「比丘尼橋下流調節池」。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間18

「比丘尼橋下流調節池」は、地下に広がる神殿ような造りをもった箱式。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間19

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間20

左側から水が流れ込み、右側には流木などが流れ込まないようにフェンスが設けられています。

TOKYO強靭化プロジェクト地下巨大空間21

こちらは、川の向こうに広がるテニスコートやグランドに水が流れ込む「比丘尼橋上流調節池」。普段は目にすることや気にすることの少ない調節池ですが、東京都には、12の河川に27カ所のさまざまなタイプの調節池が設けられ、水害への備えが進められているのです。

TOKYO強靭化プロジェクト
URL:https://tokyo-resilience.metro.tokyo.lg.jp/

環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)
URL:http://kanzyou7.com/

白子川調節池群
URL:https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000053906.pdf

[Photos by ©︎tawawa]

 


 

PROFILE

わたなべ たい

TAI WATANABE ライター・エディター・ディレクター

10代のころ、自転車でメキシコ・グアテマラを縦断し多くのことを学ぶ。それをきっかけに情報誌・旅行誌の取材を通じて、中南米・カリブ海を中心に世界各国で豊富な取材を経験。海外を見てきたからこそ日本は大好き! 紙とWEB、ふたつの媒体特性に精通した複眼的視点を持っている。
https://taijin.mystrikingly.com

10代のころ、自転車でメキシコ・グアテマラを縦断し多くのことを学ぶ。それをきっかけに情報誌・旅行誌の取材を通じて、中南米・カリブ海を中心に世界各国で豊富な取材を経験。海外を見てきたからこそ日本は大好き! 紙とWEB、ふたつの媒体特性に精通した複眼的視点を持っている。
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