標高差1,250m! 北アルプス三大急登にも挙げられる「ブナ立尾根」(長野県大町市・富山県富山市)
北アルプス
北アルプスの深部に位置する烏帽子岳(えぼしだけ)は、長野県大町市と富山県富山市にまたがる標高2,628mの山です。花崗岩の岩が連なっている山容が特徴的で、岩塔が烏帽子に似ていることから、この山名がつけられたそうです。槍ヶ岳に向かう「裏銀座」と呼ばれる縦走コースの起点にもなっています。
「ブナ立尾根」があるのは、高瀬ダムの堰堤を通り過ぎたあと。高瀬ダムから烏帽子岳南側稜線上の烏帽子小屋までの所要時間は約6時間15分です。加えて、烏帽子岳山頂までは徒歩で約45分かかります。山頂の下にはクサリ場もあるため、十分な準備を整えてから登頂したい山だといえます。
また、ブナ立尾根は、北アルプスを代表する急登でもあり、標高差1,250m、地図上の勾配度23と急な登りが続いています。とはいえ、よく整備されていて、標高1,600mほどになるとブナの原生林が広がり、さらに登るとコメツガやダケカンバが見られます。ただし、ずっと登りが続くため、後半、疲労困憊にならないように、ペース配分を考える必要があるでしょう。
なお、高瀬ダム登山口へは、七倉ゲートからタクシーで向かうのがベスト。約15分、約2,400円で到着します。JR「信濃大町駅」からタクシーに乗車すると、約45分、約8,500円です。駐車場は七倉山荘前に約50台あり、公衆トイレもあります。
健脚であれば約4時間で登り切れる、登山家憧れの谷川岳にある「西黒尾根」(群馬県利根郡)
日本百名山のひとつ「谷川岳」は、標高1,963mのトマノ耳と標高1,977mのオキノ耳という2つの頂(双耳峰)を持ち、谷川連峰の中心的な存在です。これらは日本屈指の岩場とされ、特殊な気象・地勢から日本アルプスの3,000m級の山に匹敵するといわれています。
また、登山家が憧れる山としても知られ、中でも険しい岩一ノ倉沢は、ロッククライミングの聖地になっており、日本三大岩場にも挙げられます。
そんな谷川岳には、標高差1,160m、地図上の勾配度19.5の「西黒尾根」があります。この尾根は前半は樹林帯、後半は岩場やクサリ場があり、健脚であれば約4時間で登ることができます。ただし、急登であるため、下山には不向きのルートです。特に冬季は滑落や転落に要注意。冬靴のほか、12本爪のアイゼン、ピッケルが必須です。
しかし、上級者向けだと思われがちな谷川岳ですが、「谷川岳ロープウェイ」を利用して「谷川岳山頂登山コース」に向かうことも可能です。ロープウェイを使えば、土合口駅から10分ほどで天神平に到着。その後、リフトで天神峠へ。天神峠から約3時間の尾根づたいに歩けば山頂にたどり着けます。
山頂からは、東に日光連山、南に赤城山、西に苗場山、北に日本海という絶景を拝むことができます。
2021年に開設された「谷川岳インフォメーションセンター」に立ち寄り、地形・地質や動植物のほか、歴史について学ぶのもおすすめです。
急で危険な箇所が盛りだくさん! 登山上級者向けコースにある「黒戸尾根」(山梨県北杜市・長野県伊那市)
南アルプスの北端に位置する標高2,967mの「甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)」は、険しい山容で知られています。山梨県側の麓から一気に2,500mの標高差で立ち上がっているのが印象的です。
この山には、武御雷命(たけみかづちのみこと)の魂が生んだ天津速駒(あまつはやこま)という白い天馬が甲斐駒ヶ岳の山頂で休憩した、聖徳太子に献上された「甲斐の黒駒(黒毛の良馬)」が甲斐駒ヶ岳を往復したといった数々の伝説が残っており、古くから信仰の対象として崇められてきました。そのため、修行のための登山や、駒ケ岳講と呼ばれる山岳信仰が盛んだった歴史があります。
甲斐駒ヶ岳の伝統的なルートとされるのが、上級者向けコース「黒戸尾根ルート」です。標高差は約2,200m、地図上の勾配度15.3で、麓の集落にある竹宇(ちくう)駒ヶ岳神社から登りは約9時間30分、下りは約5時間40分かかります。このルートには、片側が断崖絶壁の「刃渡り」があるほか、五合目から七丈小屋のある七合目までは鎖と梯子が多数! さらに、八合目より先の登りも、急で危険な箇所がいっぱいです。
しかし、山頂付近はライチョウの生息地。偶然出会える可能性があります。また、山頂からは富士山、北岳、仙丈ヶ岳、鳳凰三山、鋸岳を見渡すこともできますよ。苦労して登ったかいがあったと思えそうですね。
[参考]
信濃大町なび|長野県大町市公式観光サイト
信州Style|一般社団法人プレスマンユニオン
観光ぐんま|群馬県観光公式サイト
みなかみ町観光協会
ほくとナビ|北杜市観光情報サイト
山と渓谷オンライン
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