■あわせて読みたい 【連載】海外の嘘のような本当の話
第1回「オランダではキスマークが切手の代わりになる!?」
第2回「イギリスには狼男や吸血鬼に襲われた時のための保険がある!?」
第3回「王様と自動車整備工、二足のわらじを履く部族王」
第4回は、リビアのお話。
気候が春めいてくる頃から6月くらいまでは、日本でも結婚式シーズンなのではないでしょうか。ところで皆さんは、「結婚披露宴」「ウェディング・パーティ」ときくとどのような光景を思い浮かべますか?
きっとこんな風に、新郎新婦を友人たち老若男女が囲んでお祝いしている光景ではないでしょうか。けれど、かつて筆者が住んでいたイスラム教が国教のリビアでは、なんと披露宴は男女別々に行われるものでした。
男子禁制! 女性だけの披露宴会場
「男女別々の披露宴」と言われても、ほとんどの日本人は何のことだか分からないのではないでしょうか。イスラムの教えでは女性は保護しなければならない対象であり、外部の男性の目から極力遠ざけようとする傾向があります。
そのため、基本的に親族以外の男女が同席をする習慣がありません。結婚の宣誓など儀式めいたものは、親族だけの内輪で執り行われるので男女同席のようですが、友人知人を招く披露宴は全くの男女別々で行われます。
これは筆者が参加した披露宴の、新婦用(女性用)パーティ会場の様子。写真左に白い服の女性が二人写っていますが、彼女たちは新婦ではなく、同じく結婚式をつい最近行ったばかりだという新婦ご友人たちです。友人の結婚式に新婦用のコスチュームで行ってもOKというところも面白いです。そして普段はスカーフで顔を隠したり一切肌も見せない女性たちが、ここぞとばかりにドレスアップされているのも筆者には感慨深かったです。
ところで、「新婦用パーティ会場」と書きましたが、当然新郎新婦は別々に分かれます。この会場に来るのは新婦だけで、新郎は顔も出しません(新郎は、男性のみのパーティ会場にいます)! だから会場前方のひな壇にある椅子も一脚だけ。なんというか、これぞカルチャーギャップですね!
新婦は、まずゴージャスなカラードレスでご入場されました。お顔と名前は公開しないというお約束での撮影だったので、ご容赦ください。当時まだ19歳の、可愛らしい花嫁さんでした。
そして、花嫁の大撮影大会がひと段落したころに、ワンプレートのお食事。ちなみに、パーティ参加者が女性オンリーなら、会場のスタッフも女性オンリーです。こういう配膳をしてくれるのも女性だし、カメラマンなどもすべて女性が担当していました。普段の生活では男性が働いている様子しか目にしないので(スーパーのレジ係やレストランのスタッフなどはすべて男性)、女性の仕事はこういうところにあるのだなと感心した記憶があります。
お色直しは、民族衣装で登場!
そして、食事の後に新婦がお色直しして再登場です。今回は、伝統的な花嫁衣装にゴージャスなアクセサリーを身につけられていました。砂漠が国土のほとんどを占める土地柄、もともとは遊牧民のご先祖をもつ彼ら。自国の通貨をまったく信用していないので、価値の変わらない金は常に大事にされています。
いざ不測の事態が起きたときに全財産を身につけて逃げるため、女性でもこのように全財産をアクセサリーとして持つのだとか。もちろん普段から身に着けている訳ではありませんが、こういうビッグ・イベントでここぞとばかりにお披露目しているようです。
ヘナで指先もオシャレされていました。
ただしこのイスラム圏独特の男女別々の結婚披露宴パーティ、だんだん人々の意識が変わり、合同で行う人たちもでてきてはいる様子。イギリスで知り合ったイラン人の女性は、男女同席の披露宴を行われたそうです。
ただし地元である首都テヘランは宗教警察の目が厳しいので、わざわざ縁もゆかりもない地方都市まで出向いてパーティを開いたのだとか。地方は監視の目もゆるく、警察に賄賂(!)を渡すことで見逃してくれるのだとか。親戚や友人を連れていくためにツアーバスの手配が必要だったそうですが、新郎新婦が同席できる楽しい披露宴になったそうです。
我々日本の習慣からすると「女性しかいない披露宴」「男性のみの披露宴」なんて不思議に感じられますが、ところ変わればそれが常識。つくづく世界は広くて多様で、驚きに満ちていますね。
第1回「オランダではキスマークが切手の代わりになる!?」
第2回「イギリスには狼男や吸血鬼に襲われた時のための保険がある!?」
第3回「王様と自動車整備工、二足のわらじを履く部族王」
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