「ウクライナ」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか。美人の元大統領? オレンジ革命? それとも「その国、どこにあるんだっけ?」と思われるでしょうか。
筆者自身、ウクライナ東部に3か月滞在していたのですが、行くまでは何の知識も持たず、世界史の授業で習った「肥沃な国土」という言葉がウクライナについて知り得る全てでした。しかし実際に行ってみると、驚きと魅力に満ちた、実に面白い国であることがわかりました。
みなさんにもウクライナの魅力を知ってもらうべく、この地で見聞きして驚いたことを5つご紹介します。
スタバが見当たらない
1991年に独立するまでソビエト連邦の一地域であったウクライナは、アメリカの影響が非常に希薄です。博物館へ行くと、ヨーロッパの国々の展示品はたっぷりあるのにアメリカの展示品は両手で数えるほどしかありません。
いまや世界中に広がり、どの都市も同じような風景・食文化に染めてしまっているアメリカの外食チェーン――スターバックス・コーヒーやピザハット、ケンタッキー・フライドチキン(KFC)など――が街中に見当たらないのは、何とも不思議な光景です。
「世界=アメリカではない」という当たり前の事実を、ウクライナに行くと実感することができます。
格安料金でバレエやオペラが観られる
ウクライナは芸術の国。街の中心部には立派な劇場が建っています。劇場を中心に街が構成されているといってもいいくらいです。
週末になると(平日でもそうなんですが)、人々は着飾ってコンサートや、バレエ、オペラ鑑賞へ出かけます。音楽鑑賞が生活に根付いているからであり、何より料金が安いため、毎週でも通うことができるのです。日本円にして1000円以下で本格的なパフォーマンスが楽しめます。それも結構いい席で。現地の物価が安いからというだけではなく、芸術鑑賞にかかる費用が割安なのです。ウクライナに滞在するなら、きっと何度もコンサートホールやシアターへ足を運ぶことになるでしょう。
みんなお酒が強い
ウクライナは、ウォッカの国でもあります。このアルコール度数の高いお酒を、男性も女性も浴びるように飲みます。日本では「とりあえず、ビール」というところ、ウクライナでは「とりあえず、ウォッカ」。飲み会はウォッカの乾杯から始まります。
またマイナス20℃にも達する冬には、暖房をつけるより先に「お酒を飲んで温まろう」となります。ある雪の日、外に出かけようとしたら「今日はいつもより寒いからウォッカを飲んでいきなさいよ~」とウクライナ人の女友だちに呼び止められ、驚いてしまいました。
ウクライナ人は比較的シャイですが、ひとたびお酒が入ると饒舌になる人が多いです。ちょっと日本人に似ているかもしれません。一緒にウォッカで乾杯すれば、ぐっと距離が縮まるでしょう。
親日家が多い
日本人にとってウクライナは「それどこ?」な国かもしれませんが、ウクライナでは日本のことをよく知っている人が多いという印象を受けました。
日本人の筆者も知らないような日本人俳優のファンだという女の子がいたり、家でよく日本茶を飲んでいるという男性がいたり。「いつか日本に行くのが夢なの」という子もいました(ちなみにウクライナ人が日本に入国するにはビザが必要で、申請にはお金と時間がかかります。日本人は90日未満の滞在なら、ビザなしでウクライナに入国できます)。
ウクライナの人たちがこれだけ日本のことを知ってくれているのだから、私たちももっとウクライナに関心を持たなきゃね、と思ったものです。
自国に誇りを持っている人が多い
ウクライナはロシアをはじめ様々な国に支配されてきた歴史があるため、民族意識がとても強い国です。
友人間でボルシチ(ビーツのスープ)のことが話題に出ると「あれはロシア料理と思われているけれど、実はウクライナ発祥の料理なんだよ」と逐一釘をさされましたし、ウクライナ出身の詩人シェフチェンコの詩を、「シェフチェンコはウクライナが生んだ天才なのよ」とすらすら暗唱してくれる子もいました。「自分は、たとえば源氏物語の冒頭を暗唱できるだろうか」と考え込んでしまいました。
ウクライナの歴史や文化について知りたければ、現地の人に尋ねてみるといいでしょう。きっと胸を張って教えてくれるはずです。その姿を見て、「私は日本についてこんなに堂々と語れるだろうか」とも思わされるのです。
日本にいるとなかなか情報が入ってこないウクライナ。ぜひご自分の目で、その魅力を確かめてみてください。
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