世界遺産と聞いてイメージするのは、インドの神秘的な「タージ・マハール」やドイツの「ケルン大聖堂」など形あるものが一般的かもしれません。しかしユネスコ(国連教育科学文化機関)の保護対象は、歴史的建築物や遺跡といった文化財だけではありません。
民族文化財や口承伝統など形のない伝統的なものも「無形文化遺産」として保護対象になっているのです。 2013年に登録された「和食もそのひとつ。価値のある慣習を後世に残すことを目的に2003年より登録制度が始まりました。
このコラムでは、世界のユニークな無形文化遺産を食文化・舞踊・フォークロア・口承伝統などカテゴリーを問わず、毎回ひとつずつ取り上げていきます。今回はイタリア、キプロス、ギリシャ、クロアチア、スペイン、ポルトガル、モロッコの7カ国が誇る「Mediterranean diet(地中海の食事)」です。
地中海料理って何?
オリーブオイルや大地の恵みたっぷりの野菜に果物、豆類や魚介類などをふんだんに使うのが特徴の地中海料理。長寿食としても知られている体に優しいものです。例えばポルトガルのイワシ料理やスペインのタパス、ギリシャのオリーブとフェタチーズたっぷりの野菜サラダにモロッコのクスクスなど、地中海沿岸諸国で日常的に食べられているものをさします。
「地中海の食事」が無形文化遺産のワケ
「地中海の食事」が無形文化遺産に登録されたのは、この食文化を総合的に見てのこと。調理技術や知識に加え、食事を楽しむということに重点を置いているのが特徴です。多様性を尊重する地中海沿岸諸国では、みんなで食事をすることやおもてなしの心を大切にします。食事は社交の場であり、コミュニケーションを図る場所であることが分かりますね。
日常の食事に加えてフェスティバルやお祝い事も重要な構成要素です。また、料理を盛りつけたり保存したりするお皿やグラスなどの工芸品も「地中海の食事」に含まれるのだそうですよ。
パスタやパエリアが実は無形文化遺産だったなんて、文化の発見は意外なところにありました。次回はナイジェリアの占い制度「イファ占い」をピックアップしてみたいと思います。どうぞお楽しみに!
[UNESCO Intangible Cultural Heritage]
[Mediterranean diet]
[Mediterranean Diet Boosts Lifespan, Cuts Chronic Disease: Harvard]