掃除と清掃
最初は掃除と清掃。年末の大仕事として、大掃除があります。この「掃除」という言葉、似たような「清掃」という日本語もありますが、どう使い分ければいいのでしょうか?
「清掃」<きれいに掃除すること>
(ともに岩波書店『広辞苑』より引用)
両者はお互いに重なる部分を持ちながらも、清掃はより「きれい」に掃除をする意味だとも受け取れますよね。『類語例解辞典』(小学館)を見ると、両者は基本的に同じ動作を意味すると紹介されています。使い分けとしては文章語的な響きを出したいときに、「清掃」が好まれるのだとか。
しらたきと糸こんにゃく
冬になれば鍋を囲む機会も増えるかと思います。その具材にしらたきや糸こんにゃくを入れる場合もあるかと思いますが、その違いは何なのでしょうか?
「しらたき」<糸ごんにゃくのさらに細かく切ったもの>
(ともに岩波書店『広辞苑』より引用)
とあります。要するに、糸こんにゃくをさらに細かくした食べ物が、しらたきなのですね。
ただ、ところてんや寒天のメーカーである関越物産のホームページには「しらたき」と「糸こんにゃく」の違いについて、
との記述もあります。なるほど関東出身の筆者は小さいころから「しらたき」という言葉をずっと使ってきた記憶もあります。しかし、どちらかと言えば西日本に属する現在の住まい富山では、「糸こんにゃく」が一般的。地域によっても呼び方が違うのですね。
会席料理と懐石料理
次は会席と懐石について。年末年始となれば家族や親族で集まって、立派なお店で日本料理を食べる機会もあるかもしれません。どこか一流の旅館に泊まれば「今夜はカイセキ料理だよ」などと言われるかもしれません。ただ、カイセキと言われても会席と懐石、その違いがはっきりと分かりますか?
「懐石料理」<茶の湯で茶を出す前に出す簡単な食事>
(ともに岩波書店『広辞苑』より引用)
本膳とは冠婚葬祭で出される日本料理の正式なフルコースです。一の膳、二の膳、三の膳によって成り立っています。「会席料理」は一般的に会席膳と言われる、漆塗りの脚がない四角いお盆のような台に料理を並べるそう。一方の「懐石料理」は正式な茶会で提供されるシンプルな料理を意味するのですね。
元旦と元日
次は元旦と元日について。この違いに関しては「知っている!」という人も少なくないかもしれません。しかし年末年始にかけて使いそうな言葉の筆頭ですから、あえて復習しておきましょう。
「元日」<年の初めの日。正月の第一日>
(ともに岩波書店『広辞苑』より引用)
手元の『漢字源』で語源を調べてみると、「旦」とはそもそも「日の出」や「日の出るころ」を意味する言葉だそう。字の作りそのものも「日」と「一」でできています。面白いですよね。
玉露と煎茶(せんちゃ)と番茶とほうじ茶
最後はお茶シリーズ。年末年始はさまざまな場面で人と会い、お茶を出されるケースも少なくないはず。違いをおさらいしておきたいですね。
『類語例解辞典(小学館)』によれば、
玉露>煎茶(せんちゃ)>番茶
という順で高級度が違うのだとか。玉露は甘みがある最も上等なお茶で、番茶は茎や枝を含んだ、摘み残しの荒葉で作った品質の落ちるお茶だと言います。その中間に位置するお茶が煎茶(せんちゃ)ですね。
ほうじ茶に関しては、
<番茶を焙じてつくった茶>(『広辞苑』より引用)
とあります。焙じるとは「ほうじる」。『漢字源』(学研)で語源を調べると、丸く囲んだ容器の中で何かを包むように火であぶる意味になるそう。品質の落ちる茶葉を火であぶる、焙(ほう)じるお茶だから、ほうじ茶と言うのですね。
以上、年末年始で使いそうな紛らわしい言葉を紹介しましたが、いかがでしたか? 今回の言葉を調べるために『類語例解辞典(小学館)』を眺めていると、「年末」「年の暮れ」「年の瀬」という言葉の違いにも目が留まりました。
どの言葉も1年の終わりごろを意味するようですが、「年の瀬」だけは、より1年の終わりが差し迫った慌ただしさを感じさせる言葉だと言います。「瀬」とは、激しく水が砕ける急流を意味します。そう考えると、なるほど差し迫った感じがしてきますよね。併せて参考にしてみてください。
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