戦前に企画されたもう一つの「新幹線計画」
tackune / Shutterstock.com
世界初の高速鉄道としてスタートした東海道新幹線は、高度経済成長の象徴の一つであり、現在では年間利用客数が1億人を超えるほどの規模を誇ります。
そんな東海道新幹線が通る静岡県には「新幹線」という変わった地名が存在します。静岡県田方郡函南町上沢新幹線という土地です。開業後、人気にあやかって名づけられたと思った人もいるかもしれませんが、実は「新幹線」という地名誕生には戦前に企画されたもう一つの「新幹線計画」が大きく関わっているのです。
1939年、戦争に必要な物資や人員を運ぶため日本と朝鮮半島、中国を結ぶ「弾丸列車計画」が企画されました。戦争の激化で計画は頓挫しましたが、東京から大阪を結ぶために造られたトンネルや構想の一部はその後、東海道新幹線開発へと引き継がれ、有効に活用されています。
「新幹線」という地名は、この弾丸列車に由来します。
東海道新幹線開業前には「新幹線」と呼ばれていた
弾丸列車計画のために掘削されたトンネル付近には、従業員宿舎が置かれていました。宿舎撤去後、新しい高速鉄道用トンネル建造が計画されたその地に親しみを込め、住民が「新幹線」と呼び始めたことで地名として定着したようです。弾丸列車という地名にならなかった理由はわかりませんが、弾丸列車と同じ頃に登場していた新幹線という単語の方が、住民には親しみやすかったからかもしれません。
いつごろから新幹線と呼ばれるようになったかは正確にはわからないのですが、東海道新幹線開業前に刊行された地図にはすでにその名前が記されていたことがわかっています。
住所:静岡県田方郡函南町上沢747-4
【出典】
『知れば知るほど面白い!日本地図150の秘密』(日本地理研究会編/彩図社)
[All photos by Shutterstock.com]