国内外でナンバーワンのワイパー用「ゴム」
日本の車に関する世界一と言えば、何を思い浮かべますか?
トヨタ自動車の世界販売台数が3年連続で世界一になったなどのニュースを思い浮かべる人も多いとは思いますが、今回は販売台数の話ではありません。ワイパーの話です。
自動車のフロントガラスの水滴などを取り除いてくれるワイパーブレードのゴム、どこのメーカーがつくっていると思いますか? 言われてみると知らない人も多いはず。少なくとも筆者は知りませんでした。
その分野で実は、世界一の座に就く企業が日本にあります。自動車用ワイパーブレードのゴム製品づくりで国内市場をほぼ独占する「株式会社フコク」(埼玉県上尾市)です。
このフコク、その活躍は国内にとどまりません。ワイパーブレードのゴム生産量は世界一、市場シェアも世界一の40%を獲得しています。
言い換えれば、海外旅行に出掛けて旅先で乗り込んだタクシーやバスのワイパーのゴムも、フコクの製品が使われている可能性が高いのですね。
世界各地に進出している「フコク」
フコクとは、どういった会社なのでしょう? 創業は1953年(昭和28年)、まだまだ戦後と呼ばれる時代です。NHKと日本テレビの本放送が始まり、街頭テレビの前に群衆ができていた頃。奄美群島もその年に復帰しました。世界では、スターリンが死去、朝鮮戦争が休戦した年でもあります。
この同じ年に、東京都中野区で富国ゴム工業株式会社が誕生します。創業年から間もない1956年(昭和31年)には、ワイパーブレードラバーの技術開発に成功し、生産を開始しました。
自動車交通の発達(モータリゼーション)が日本で見られた時期は、第二次世界大戦後です。1965年(昭和40年)ごろから自家用自動車が急速に広まったと『日本大百科全書』(小学館)に書かれていますから、ちょうどその波に乗ったのですね。
そもそもワイパーブレードのゴムは、ゴムをカットした際にできる断面の角を利用してガラスの水滴を拭いているらしいです。同社は、そのカット方法に他社のまねできない技術を持っているのだとか。
タイや韓国、インドネシア、中国、アメリカなどに進出し、2005年(平成17年)には東京証券取引所第一部に上場します。その後、インド、ベトナム、チェコ、メキシコなどにも拡大し、2022年(令和4年)には、東京証券取引所のプライム市場(東証1部の中でも流動性の高い大型企業向けの市場)に上場します。
要するに、日本を代表する企業のワイパーブレードのゴムが世界中に行き届いているのですね。
旅行や留学で遠い海外へ出てホームシックになったら、そこら辺にある車のワイパーブレードのゴムに目を向けてみるといいかもしれません。世界進出を果たす日本の企業がつくった製品の可能性が高いです。そう思えば、自分も頑張ろうとちょっとだけ勇気をもらえるかもしれませんよ。
[参考]
※ 沿革 – FUKOKU
※ グローバルネットワーク – FUKOKU
※ フコク、ワイパー用ゴムで市場独占 光るカット技術 – 日本経済新聞
※ トヨタの世界販売台数、6・0%減の513万台…3年連続で世界1位 – 読売新聞
※ 1953年の出来事 – Aflo
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