「有馬記念」が世界一として評価されている
競馬は見ますか? あるいは、勝馬投票券(馬券)を買った経験がありますか? 残念ながら筆者は競馬を見ませんし、馬券を買った経験もないです。
ただ、かつてテレビ番組の制作に携わっていたころ、東京都府中市にある東京競馬場のスタンド前にある直線で長大な糸電話をつくって、何mの距離まで聞こえるかといった番組をつくった記憶があります。
もう、15年近く前の話なので詳しくは覚えていませんが、芝生のコースの上で、競馬場の巨大さを痛感させられた気がします。
今回は、そんな日本の競馬に関する世界一の話。筆者のように競馬に詳しくない人でも「有馬記念」という言葉を聞いた覚えがあるはずです。
百科事典を調べると、「G1」だとか「重賞レース」だとか詳しい意味がわからない言葉が解説に使われています。専門用語を使わずに「有馬記念」を説明すると、日本の競馬における重要なレースの1つで、ファン投票によって選ばれた馬が1位を競う、毎年12月に開催されるレースです。
千葉県船橋市にある中山競馬場が舞台なので、1956年(昭和31年)の初開催時は「中山グランプリ」と名乗っていたそう。しかし、初開催直後に大会の発起人である日本中央競馬会の理事長だった有馬頼寧さんが亡くなったため、以後はその功績をたたえて「有馬記念」と改称されたようです。
「有馬」という単語から、筆者はてっきり有馬温泉(兵庫県)周辺で開催される競馬大会だと思っていました。この「有馬記念」が世界一として評価されているようです。何が世界一なのでしょうか?
日本の競馬界そのものが世界一の売り上げを誇る
©︎ TK Kurikawa / Shutterstock.com
「日刊スポーツ」の記事などによると「有馬記念」が誇る世界一は、1レースにおける売り上げ(売得金)の最高額です。1996年(平成8年)に開催された「有馬記念」では、875億104万2,400円の売得金があり、日本競馬史上最高額を記録、当時のギネス世界記録にもその額が記録された そうです。
残念ながら、ギネス世界記録の公式ホームページで探しても同記録を確認できませんでした(更新の可能性あり)。しかし「有馬記念」を世界一だと描写する記述は、日本のほかのメディアにも見られます。ちなみに、売得金とは、勝馬投票券(馬券)の発売金から返還金を引いたお金です。
ただ、競馬の売り上げ額に関して言うと、現在のギネス世界記録に、日本の競馬界そのものが世界一の売り上げを誇ると記載されています。日本の競馬界全体の売得金の額が世界最大であるとして「Horse Racing (flat) – most money wagered」と登録されている わけです。
ギネス世界記録に記載された数字によると、世界中の競馬で生まれる売り上げ金(売得金)の総計は5兆3,000億円くらいで(年度は不明)、そのうち約43%の2兆3,000億円ほどが日本で発生 しているそう。そのギネス世界記録には「有馬記念」についての記述もあり、日本で最も巨額の売り上げを誇るレースだと書かれています。
1997年(平成9年)には4兆円の売り上げ
この売上高の数字は、日本中央競馬会(JRA)の公式記録を見ると、もっと大きくなります。「有馬記念」が、当時のギネス世界記録を更新したという1996年(平成8年)に、日本中央競馬会(JRA)全体の売得金は3兆9,862億円を記録しています。さらに、翌年1997年(平成9年)には4兆円の大台 に達して空前絶後のピークを迎えています。
この当時に開催されていた「有馬記念」を知るスタッフに取材した「日刊スポーツ」の報道によれば、
<発売能力限界の売り上げだったと思う>(「日刊スポーツ」より引用)
との話。要するに「有馬記念」も日本の競馬界そのものも、世界一の売上高規模を誇ると考えて間違いはなさそうなのですね。
競馬場は、地方競馬も含めると日本各地に意外に多く存在します。国内旅行で行先を考える際に各地の競馬場にも注目してみると、旅の楽しみの幅が広がるかもしれませんよ。
[参考]
※ Horse Racing (flat) – most money wagered – Guinness World Records ※ 【有馬記念】売上875億円がギネス記録に サクラローレルが制した平成8年/平成有馬記念列伝(1996年) – netkeiba.com ※ 売得金額・総参加人員 – JRA ※ コース紹介 – JRA ※ 売得金 – JRA ※ ギネス登録の96年売り上げ875億円/有馬記念 – 日刊スポーツ ※ 日本が「競馬先進国」であるこれだけの理由 – 東洋経済新報社 ※ 地方競馬とは – 地方競馬全国協会(NAR)
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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