東シナ海に面した九州にある入り江
海といえば、引き潮と満ち潮があります。月の引力が原因で、月に近い側の海水が引っ張られて、地球全体の海面が、ラグビーボールのように変形する現象です。引っ張られて盛り上がった部分を満潮、平らになった部分を干潮と呼びます。
この満潮時と干潮時に生じる海面の変化の差は、地域によって異なり、例えば、日本海側は、大潮時の干満差が小さく平均0.3~1mほど。一方で、太平洋側は、平均1~2mほどの干満差になります。
さらに、東シナ海に面した九州西部では、大潮時の干満差が平均2~3mに達します。東シナ海でなくても東京湾や伊勢湾、瀬戸内海西部などでは、大潮時の干満差が平均2~3mと大きくなる様子。
そうなると、東シナ海に面した九州西部の入り江では干満差が特に大きくなりそうですが、どうなのでしょうか。
信号機の高さ以上に生じる干満差
太良海中道路
日本地図が手元にあれば、九州のページを開いてみてください。東シナ海に面した九州西部には、一般に「有明海」と呼ばれる巨大な内海があります。
正確には、天草灘から早崎(はやさき)瀬戸を経て広がる内海の北部を「有明海」、南部を「島原湾」と呼ぶそうです。
案の定、大潮時の干満差が日本一大きい土地はこの有明海にありました。具体的には、島原湾の北にある有明海のさらに湾奥、六角川の河口付近になるのだとか。
河口部には、住ノ江という場所があり、最大で6.8mの干満差が確認されたそうです。『小学館の図鑑NEO+ぷらす もっとくらべる図鑑』によると、大人のキリンの体長でも3.8~4.7m。信号機の高さであっても一般的に5mちょっとです。
身近にある信号機を見上げてみてください。その高さ以上の高低差で、潮が満ち引きすると思うと驚きではないですか?
南北100kmと細長い有明海
どうして、東シナ海に面した九州西岸の有明海では、大潮時の干満差がこれほど大きくなるのでしょう?
気象台によると、外海の東シナ海から月の引力の影響を受けて出入りする海水のタイミングと、南北100kmと細長い有明海の内海で発生する独特の潮の動きが重なって、海水の揺れ方が大きくなり、湾奥の河口付近の海面を大きく押し上げるのだとか。
その干満差の大きさは土地(干拓地)に、多くの恵みをもたらしてきました。しかし、満潮時は、河口部(低平地)が海面より低くなる上に、水はけが悪く、地盤沈下も発生しているため、流域では水害も繰り返されています。
国や自治体がさまざまな対策を行い、住人も避難経路の確認などを進めているそうですが、同じ日本人として、遠い地域に暮らす人であっても、大雨などの災害が心配な季節に入ったら、佐賀県の南部、六角川流域のニュースには敏感になりたいですね。
[参考]
※ 日本で最も干満差が大きい海 – 日本記録
※ はれるんマガジン – 福岡管区気象台
※ 六角川について – 武雄河川事務所
※ 彼岸潮は年極小 – 海の気象
※ 六角川水系の危険か所 国や自治体が巡視 水害への備え確認 – NHK
※ 六角川を特定都市河川に指定 九州初 武雄、嬉野など水害対策策定へ – 佐賀新聞
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