進化が止まらないコンパクトな大都会「フランクフルト」
ドイツ西部のヘッセン州にある「フランクフルト」。マイン川が街の近くを流れていることから、正式名称は“マイン川沿いのフランクフルト”という意味の「フランクフルト・アム・マイン」といいます。
中世時代は商業の街として栄え、現在は経済・金融都市としてヨーロッパ屈指の規模を誇る都市。ユーロ通貨圏の金融政策を担う「欧州中央銀行」をはじめ、多くの金融機関、国際機関の本社が置かれています。
数多くの高層ビルが建ち並ぶ風景を目の当たりにし、ドイツで2~3番目くらいに大きい都市なのかと思っていたら、「人口規模で言うと国内5番目ですよ」と教えていただきました。高層ビルの建設は現在も複数進行中で、今後もビルは増え続けていくのだとか。
同行していただいたガイドさんや観光局の方が、口をそろえて「フランクフルトは“コンパクトな大都会”」と表現していたのですが、旅をしているとその意味を実感しました。滞在中1日は地下鉄を利用しなくても、徒歩で主要なスポットを巡ることができるほど。歩き慣れていない人は、地下鉄やトラムを乗りこなすことで効率よく回ることもできます。
今昔が入り混じる市街地
高層ビル群だけではなく、ビルと古い建物が混在しているのも特徴的。地下鉄やSバーン(近郊列車)の駅「ハウプトバッヘ(Hauptwache)」周辺や、その隣の地下鉄駅「アルテ・オーパー(Alte Oper)」にある旧オペラ座の界隈など、新旧の建物が入り混じる風景もフランクフルトらしさといえるでしょう。
在りし日の姿が再現された“新”旧市街
市街地からマイン川に向かって歩くと、見えてくるのが旧市街エリア。2012年から2018年までの約6年間にわたって再開発プロジェクトが実施され、「新旧市街(New Old Town)」としてヴェールを脱ぎました。「レーマー広場」から「聖バルトロメウス大聖堂」へと続く一帯がそれを象徴するエリアです。
第二次世界大戦で大きな被害を受けたこの一帯。昔の姿が忠実に再現されているのが特徴で、歴史を感じさせる建物にモダンなタッチが光る見事な復元ぶりです。おしゃれな雑貨屋さんや飲食店などが入っているところも多いので、休憩に立ち寄るのもいいですね。
メルヘンな雰囲気漂う「レーマー広場」
このエリアの中心的な存在が、旧市庁舎の前に広がる「レーマー広場(Römerberg)」。足元には石畳が広がり、三角屋根の木骨造の建物はカラフルに彩られ、ドイツらしいメルヘンな美しさが広がります。
階段状の切妻屋根を有した三角屋根が印象的な旧市庁舎の建物内には、かつて神聖ローマ帝国の皇帝が戴冠式の後に晩餐会を開いたという皇帝の間「カイザー・ザール」があり、見学も可能です。
ここでは婚姻届を出した後に記念撮影をする人も多いそうで、この日もウェディング姿のカップルがいらっしゃいました。観光客と地元の人、多くの人が行き交うにぎやかな広場です。
フランクフルトの名物ケーキ「フランクフルタークランツ」
この地区の再建プロジェクトの中で象徴的な建物のひとつ「黄金天秤の家」は、17世紀に建設されたものが復元されました。ドイツらしい木骨造の建物にフレームが赤茶に彩られ、カラフルな装飾が施されています。現在は、「コーヒーハウス ゴールデン ヴァーグ」という名のカフェになっていて、ここではフランクフルト名物のケーキ「フランクフルタークランツ」を味わえますよ。
さくらんぼでジュエリーのような装飾が施されたこちらのクランツケーキは、バタークリームがしつこくなく、さっぱりといただけました。店内はメゾネットタイプで席数も多め。大聖堂側にはテラス席があり、風にあたりながらゆっくりと過ごしている人の姿もたくさん見られました。
所在地:Markt 5 60311 Frankfurt am Main
公式サイト(ドイツ語):https://www.goldenewaage.com/
圧倒的な存在感を醸す「聖バルトロメウス大聖堂」
“ドム(Dom)”の愛称で親しまれている、街のシンボル的な存在「聖バルトロメウス大聖堂」。新旧市街の一番東側にあり、赤茶色の外壁が目を引きます。元々は680年以前に礼拝堂として建てられたとされており、14世紀以降は神聖ローマ皇帝の選挙や戴冠式が行われていました。
1867年に火災で焼失した後に再建され、その後、第二次世界大戦で再び大きな被害を受けました。1950年代に再建されて今の姿に。礼拝堂の内部は十字状に広がっており、赤く塗装されているのは、1992~1994年の修復の際に施されたもの。この大聖堂もまた、古い趣を残しながら新しいタッチが加えられているようです。
所在地:Domplatz 1 in 60311 Frankfurt am Main.
公式サイト(ドイツ語):https://www.dom-frankfurt.de/
ゲーテが執筆していた部屋も!ドイツの文豪ゲーテの生家
18~19世紀に活躍したドイツを代表する文豪、ゲーテの生まれ故郷としても知られる、フランクフルト。彼が生まれ育った家もまた、第二次世界大戦で大きな被害を受け一部の壁を除いてほぼ崩壊してしまいましたが、4階建ての大きな家は昔の姿に復元されています。
内部も在りし日のように再現されおり、ゲーテが生まれた部屋や、有名な『ファウスト』『若きヴェルテルの悩み』など初期の作品の大部分が執筆されたとされるゲーテの部屋なども見ることができます。ゲーテのことをよく知らない人でも、その贅沢な家具や調度品、シックな内装など当時の生活を垣間見られるような空間が楽しめるはずです。
内容盛りだくさんな「ドイツロマン派博物館」も必見
ゲーテの生家「ゲーテハウス」の隣の建物は1階がチケット売り場で、その上は4階(ドイツ式の3階)までが「ドイツロマン派博物館」(2021年に「ゲーテ博物館」から名称変更)となっています。ゲーテと同時代に発表された美術品などが展示されており、クラシックな絵画から、触ると仕掛けが動くようなインターラクティブな展示やビデオなど、多彩な作品が楽しめます。かなり充実した展示内容なので、時間をたっぷりかけて過ごすことをおすすめします。
所在地:Großer Hirschgraben 21, 60311 Frankfurt am Main
公式サイト(英語):https://frankfurter-goethe-haus.de/en/visit/
【ドイツロマン派博物館(Deutsches Romantik-Museum)】
公式サイト(ドイツ語):https://deutsches-romantik-museum.de/
臨場感がすごい!かつての風景を擬似体験できるVR施設「タイムライド」
重厚な大聖堂や歴史的な建物が再現されたフランクフルトの街を歩いていると、昔の様子を想像して心が弾むなんていうことも。そんな思いをよりリアルに体験できる施設「タイムライド」にお邪魔しました。馬車に見立てた客車に乗り込み、VR器具を装着してタイムスリップの疑似体験をできるというアトラクションです。
舞台となるのは19世紀のフランクフルト。貿易で栄えたフランクフルトの街を馬車で案内してくれるというストーリーが展開されます。VR体験前には、在りし日の雑貨店を模したコーナーを訪問。ガイド役の人が当時扱われていたコーヒーや紅茶、石鹸などのさまざまな品を紹介してくれたり、香辛料のにおいを嗅がせてくれたりと、いろいろな角度から感性を刺激してくれます。
VR映像を鑑賞している間は、座席部分が馬車の動きに合わせて軽く揺れるので、臨場感たっぷり。新旧市街の街並みやマイン川沿いなど、さっきまで実際に歩いた風景を通りながら、当時の街の人たちが会話しているのが聞こえたりと、どんどん引き込まれていきます。思わずVRの中で写真を撮りたくなってしまうほどでした。VR体験の間は、歩いたり動く必要はなく座っているだけなので、幅広い年齢層が楽しめるはずです。英語でも実施していますよ。
所在地:Berliner Straße 42a, 60311 Frankfurt am Main
公式サイト(英語):https://timeride.de/en/frankfurt/
郊外へ出かけよう!「ロールベルクの丘」
フランクフルトの市街地から地下鉄と路線バスを乗り継いで約30分、雄大な景色と自然を感じられる素敵な場所を紹介していただきました。「ロールベルク(Lohrberg)」と呼ばれるエリアは、市内を見渡せる丘になっていて、週末は市内の人の憩いの場としてにぎわうそう。この日は平日の午前中とあって人は少なめ。お散歩や自転車で行き交う人と数人すれ違うくらいでした。
このエリアにはブドウ畑もあり、リースリングワインを生産しているのだとか。生産量が多くないので市場にはあまり出回っていないらしく、隣接する果樹園の売店で販売していましたよ。
家族連れに人気の果樹園「マイン・エッペルハウス」
ロールベルクの丘に来たら、ぜひ立ち寄りたいのが、公園に隣接する「マイン・エッペルハウス」という果樹園。曜日を問わずいつでもオープンしていて、自由に出入りできます。園内にはところどころにベンチが設置されており、お散歩がてらのんびり日向ぼっこしていたりおしゃべりを楽しむ人の姿も。
園内にはリンゴジュースなどの飲み物やちょっとした食べ物を販売するスタンドがあるほか、ワインやジュース、ジャムなどを販売している売店もあります。定番ではないお土産を探している人におすすめです。
所在地:Klingenweg 90, 60389 Frankfurt am Main
公式サイト(ドイツ語):https://www.mainaeppelhauslohrberg.de/
フランクフルトはソーセージだけじゃない
フランクフルトで味わいたいグルメといえば、真っ先にソーセージを思い浮かべる人も多いと思いますが、そのほかにも意外と知られていない名物に出合うことができました。そんなグルメの数々を紹介していきます。
本場のソーセージは地元一番の市場で
まずは、「本場フランクフルトのソーセージを食したい!」ということでやってきたのが、市街地にある「クライン・マルクト・ハレ」。野菜や果物、肉、加工品、さまざまな食材がそろい、地元の人から観光客まで多くの人が利用する市場です。2階にはテーブルとイスがあってイートインできる気軽なレストランも。
この市場では、行列の絶えないと噂の人気ソーセージ店「シュライバー(Schreiber)」に行ってみました。前日の昼間に覗いたら途方もなく混んでいたので、次の日の朝10時頃に出直したところ大正解! 有名なマダム シュライバーが英語で接客してくださり、無事にお目当てのソーセージサンドをゲットできました。
茹でたソーセージが口の中でパキっと弾けて、程よい塩味とフカフカのパンの相性も良く、小腹の空いた午前中にさっくり食べるのにちょうどよいサイズ感。肉の加工品は日本へ持って帰れないので、現地で味わっておきたいですね。
所在地:Hasengasse 5-7, 60311 Frankfurt am Main
公式サイト(ドイツ語):https://kleinmarkthalle.de/
雰囲気抜群なビアガーデンでフランクフルト名物を食す
ビールで名高いドイツですが、フランクフルトではアップルワインの人気も高く、実際に食事と一緒に楽しんでいる人を多く見かけました。そんなアップルワインとフランクフルトならではの料理を楽しめるのが、「ダハイム・イン・ロスバッカー・タル」というレストランです。テラス席はドイツらしいビアガーデン感が満点!
アップルワインは、シードルのような味わいを想像していたのですが、飲んでみると全く別もの! リンゴの甘みはあまり感じられず、白ワインとビールの間のような味わいです。アルコール度数はビールと同じくらいだそうで、暑い夏は特に食事と合わせてサクサクと飲めてしまいそうな雰囲気。
アップルワインと合わせて前菜にいただいたのが、フランクフルト名物のチーズ「ハルツァーケーゼ(Harzer käse)」。モチモチした食感のチーズで、ビネガーソースと一緒に食べるとさっぱりした味わいに。チーズ独特の香りが気になる人もいるそうですが、お酒との相性はばっちりだと思います。
フランクフルトで忘れてはいけないのが「グリーンソース(Grüne Soße)」。数種のハーブとサワークリームを和えたもので、ゲーテが愛した味ともいわれています。
7月上旬にフランクフルトを訪れた際は、期間限定の「グリーンソース・フェスティバル」なるものも市内で開催されていました。さまざまな料理にグリーンソースを合わせて楽しもう! というイベントで、ステーキやソーセージなどと一緒に楽しんでいる人もいましたよ。フランクフルトの人たちの、グリーンソース愛を感じることができました。
所在地:Große Rittergasse 49, 60594 Frankfurt am Main
公式サイト(ドイツ語):https://www.lorsbacher-thal.de/
リニューアルオープンした「ウェスティン・グランド・フランクフルト」
フランクフルト鉄道駅から地下鉄で5分、中心地の「コンスタブラーヴァッヘ(Konstablerwache)」駅近くにあるホテル「ウェスティン・グランド・フランクフルト」。人気のショッピングエリア「ツァイル通り」もすぐそばで、観光に便利なロケーションです。“ウェルビーイング”をコンセプトに2年半のリノベーション期間を経て、2022年に新たな姿でお目見えしました。
クイーンルームの客室は広々としていて、ソファーも横になれるほどの大きさがあり、居心地のいい空間が演出されています。サイドボードはスーツケースを広げられる充分のスペースを確保。枕元の両サイドには電源コンセントのほかに、USBポートも1つずつあるので複数の充電にも困りません。
ホテル最上階には、プールやジムなどのフィットネス設備があり、宿泊客は誰でも利用可能。客室にバスタブがない場合も、サウナやスチームバスでゆっくりできるのはうれしいですね。
地元の食材を使用したタパス料理
ホテル地上階のアトリウムにある「マイン・タパス・ラウンジ(Main Tapas Lounge)」は、お酒を嗜むだけではなく、気軽に食事を楽しみたい人にもおすすめ。地元の食材を使った料理をタパススタイルで提供してくれます。「ハーザーケーゼ」や「茹で卵のグリーンソース添え」など、フランクフルトならではのメニューも。
旅行中はついつい食べ過ぎてしまって胃腸が疲れてしまった……なんてときにも、少量で頼めるので安心。しかもその土地ならではの料理を味わいたい! という願いも叶えてくれるので、食事だけの利用としてもチェックしておきたいところです。
お酒のセレクションも豊富で、作っていただいたカクテルも絶品! アルコール抜きのカクテルも対応してくれるので、好みを伝えて新たなカクテルの世界に挑戦してみてはいかがでしょう。
所在地:Konrad-Adenauer-Straße 7, 60313 Frankfurt am Main
公式サイト(日本語):https://www.marriott.com/ja/hotels/frawi-the-westin-grand-frankfurt/overview/well-being/
フランス・リヨン~フランクフルトの列車旅
今回のフランクフルトの旅は、フランス・リヨンからTGVを利用しました。乗り継ぎなしで約6時間、途中マンハイムやバーデンバーデン、ストラスブールを通るルートです。ゲーテがストラスブールに留学していたことを回想しながら、その時に鉄道が通っていれば、もっと楽に移動できただろうにと勝手に思い巡らせてしまいました。
ドイツの列車駅には改札がなく、チケットさえ持っていれば、当日該当のプラットホームを確認して列車に乗り込むだけ。検札は車内で行われます。直行便が運航しているフランクフルトを起点に、ヨーロッパを電車で巡るのも、サステナブルな旅のアイディアとしておすすめです。
[all photos by minacono]
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