日本の世界遺産【9】 平城京の信仰や生活のあり方を今に伝える「古都奈良の文化財」

Posted by: あやみ

掲載日: Oct 5th, 2023

奈良には考古学的に貴重な寺社や遺構が点在しています。聖武天皇の命に建造された「東大寺」、遷都にともなって平城京に移された「興福寺」、参道の石燈籠や廻廊の釣燈籠が印象的な「春日大社」などは、710年の遷都により、かつてない規模の壮大な都市計画のもと、造営されたのです。今回はそんな世界遺産「古都奈良の文化財」に注目。概要や見どころをはじめ、行き方、周辺の人気スポット・グルメもご紹介します。

奈良県・東大寺
 


 

日本の歴史に政治的・文化的変化をもたらした、8世紀の宗教や生活を伝える「古都奈良の文化財」

奈良県・元興寺
元興寺 ©️EQRoy / Shutterstock.com

710年から784年まで、「平城京」だった奈良は、政治・経済・文化の中心として繁栄。この時代に唐との交流を通して日本文化の原型が形成されました。首都が京都(長岡京・平安京)へ移った後も、大社寺を中心にした地域が宗教都市として存続して、栄えた歴史があります。

平城京とは、首都の北部中央に設けられた天皇の居所と、それに付随した行政機関の施設のこと。当時の宮殿や役所などの木造建築の遺構は、今日も良好な状態で地下に保存されています。さらに、首都とその周辺に造営された多くの寺社も残っています。

奈良県・興福寺
興福寺

薬師寺や唐招提寺には、当時の仏教寺院の伽藍を代表する8世紀の日本古代の建物も。加えて、東大寺と興福寺の境内にも8世紀の建物の一部が残っています。

これらは、日本の歴史に政治的・文化的変化をもたらした極めて重要な時代でもある8世紀(奈良時代)の宗教、生活のあり方を伝えているのです。そして、その伝統が現在も人々の生活に息づいています。

奈良県・唐招提寺
唐招提寺

このような点が高く評価され、1998年に東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城京跡、春日山原始林の8つが世界文化遺産に登録されました。

見どころは?

奈良県・東大寺外観
世界遺産に登録された東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城京跡、春日山原始林の8つは、いずれも一度は見たい寺社や遺構ですが、「奈良の大仏さま」で知られる奈良時代創建の代表的な寺院「東大寺」は必見です。

743年に聖武天皇が生きとし生けるすべてのものが栄えるようにと願い建造の命を出しました。752年に大仏が開眼。以降、堂塔が建造され、40年近くかけて伽藍が整いました。首都が京都に移った後も、厚い信仰を集めました。

奈良県・東大寺大仏
世界最大級の木造建造物の「大仏殿」や、像高14.98mの大仏様は一番の見どころです。さらに現在の伽藍の多くは江戸時代に再建されたものですが、奈良時代に建てられた東大寺最古の建物「法華堂」や、天平時代の東大寺の伽藍建築を想像できる唯一の遺構「転害門」、鎌倉再建の大仏殿の威厳を感じさせる「南大門」といった各時代を代表する国宝建造物は見逃せません。

奈良県・薬師寺
1,300年前の白鳳時代、天武天皇が皇后・鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ)の病気平癒を祈って造営された「薬師寺」もぜひ訪れたいスポット。

奈良県・薬師寺西塔
中央に本尊・薬師三尊像をまつる金堂、東西に2基の塔を配する日本初の伽藍配置は「薬師寺式伽藍配置」と呼ばれ、堂塔の各層に裳階(もこし)をつけた壮麗な「龍宮造り」でした。華麗な堂塔は幾度もの火災により焼失し、創建当時から現存する建造物は国宝の東塔のみです。

その後、金堂、西塔、中門、回廊、玄奘三蔵院伽藍などが復元され、大講堂も新築され、食堂も再建されました。そのため、現在も創建当時の壮麗な白鳳伽藍を見学できます。

奈良県・春日大社
768年、称徳天皇の勅命により造営された「春日神社」もおすすめです。境内にある「万燈籠」で知られています。さまざまな形の釣燈籠、石燈籠があり、それらの多くは庶民の寄進によるもので、庶民信仰の厚さをうかがい知ることができます。

奈良県・春日大社釣燈籠
釣燈籠がたくさん並ぶ東回廊や、最も聖域に近い「御蓋山浮雲峰遙拝所(みかさやまうきぐものみねようはいじょ)」、本殿のそばにそびえ立つ樹齢約800~1000年ともいわれる「大杉」など、見どころ盛りだくさんです。

奈良県・春日山原始林
バードウォッチングやハイキングが好きなら、標高498m、面積約250haの広さがある「春日山原始林」へ。古来、春日大社の神山として信仰されてきたため、ほとんど斧を入れず9世紀頃には禁伐令が出されるなど、積極的な保護活動が行われてきました。

渓谷沿いの「滝坂の道」の途中には、寝仏、夕日観音、朝日観音、春日山石窟仏(穴仏)などの石仏があり、能登川のせせらぎや、野鳥のさえずりを聴きながら、散策できます。また、原始林の中を車で走れる「春日奥山道路」も人気です。

東大寺・薬師寺・春日神社・春日山原始林への行き方

今回、見どころとしてご紹介した4カ所への行き方は下記の通りです。

東大寺

JR・近鉄「奈良駅」から市内循環バス7分「東大寺大仏殿・春日大社前」下車、徒歩約5分

東大寺
住所:奈良県奈良市雑司町406-1
電話:0742-22-5511
拝観時間:
【大仏殿】4月~10月 7:30~17:30、11月~3月 8:00~17:00
【法華堂(三月堂)・千手堂】通年8:30~16:00
【東大寺ミュージアム】4月~10月 9:30~17:30(最終入館17:00)、11月~3月 9:30~17:00(最終入館16:30)
拝観料:大人(中学生~大学生を含む)600円、小学生300円
公式サイト:https://www.todaiji.or.jp/

薬師寺

近鉄橿原線「西ノ京駅」からすぐ
JR・近鉄「奈良駅」から78系統「奈良県総合医療センター」行きバス約18分「薬師寺」下車すぐ

薬師寺
住所:奈良県奈良市西ノ京町457
電話:0742-33-6001
拝観時間:8:30~17:00(受付は16:30まで)
拝観料:大人1,100円、中高生700円、小学生300円
公式サイト:https://yakushiji.or.jp/

春日大社

JR・近鉄「奈良駅」から「春日大社本殿」行きバス約8分終点下車すぐ
市内循環バス約8分「春日大社表参道」下車、徒歩約10分

春日大社
住所:奈良県奈良市春日野町160
電話:0742-22-7788
開門時間:3月~10月 6:30~17:30、11月~2月 7:00~17:00
拝観料:御本殿特別参拝500円
公式サイト:https://www.kasugataisha.or.jp/

春日山原始林

JR・近鉄「奈良駅」から「春日大社本殿行き」バス「春日大社本殿」下車、徒歩約5分

春日山原始林
住所:奈良県奈良市春日野町
公式サイト:https://www.pref.nara.jp/item/73340.htm

四季折々の風景が楽しめて、気軽に登れる「若草山」

奈良県・若草山
年に1度の若草山焼き行事で知られる「若草山」は、あわせて訪れたいスポット。3つの笠を重ねたように見えるため「三笠山」とも呼ばれています。

この山の魅力は、山麓のゲート(南北)から入山し、一重目、二重目、山頂とそれぞれ異なる景色を望めること。山頂からは、東大寺や興福寺などを眺めることができますよ。山のあちこちで見られる鹿にも注目を。春は桜、秋は紅葉、ススキを楽しめます。

山頂までは徒歩約30~40分で、開山期間は3月第3土曜日~12月第2日曜日です。

茶粥のイメージ
奈良で味わいたいのは「茶粥」。9世紀初めに空海が唐から茶の種子を持ち帰り、宇陀市の仏隆寺で播いたのが日本における茶栽培の始まりとされています。

毎年3月に東大寺で行われる「お水取り」は、1,200年以上歴史があり、その練行衆(れんぎょうしゅう)の献立に「ごぼう(ゴボ)」「ゲチャ」を提供。「ゲチャ」は米をほうじ茶で煮て汁を取ったもので、「ゴボ」は茶粥の汁が多いものといわれています。つまり、1200年以上前から「茶粥」が食べられていたのです。

現在、「おかいさん」といわれる奈良の「茶粥」は、煮出したほうじ茶の中に冷やごはんを入れて炊いたもの。サラッとしていて食べやすいのが特徴です。奈良県内には工夫を凝らした茶粥を提供する飲食店が点在していますので、ぜひ一度味わってみてくださいね。

若草山
住所:奈良県奈良市雑司町469
電話:0742-22-0375(奈良公園事務所)
開山期間:3月第3土曜日~12月第2日曜日
開山時間:9:00~17:00
入山料:大人150円、大学・高校・中学生:150円、小学生 80円
交通アクセス:JR・近鉄「奈良駅」から市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車、徒歩約12分
公式サイト:https://www.pref.nara.jp/item/9270.htm#itemid9270

[All photos by Shutterstock.com]

PROFILE

あやみ

Ayami ライター

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

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