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【台湾の無人島】台北から日帰りで行ける「亀山島」は美しさと緊張感が共存する島だった

Posted by: 松田義人
掲載日: Oct 20th, 2023.

台湾と言うと、台北市内の無数のバイクが行き交う活気あふれる街並みを想像する人が多いと思いますが、日本の九州とほぼ同じの面積の島であり、台北市内から電車・バスなどで数十分も離れれば、周囲に綺麗な海が見えてきます。特に台北から東に約30キロほどいった基隆は、日本統治時代を終えた終戦直後、日本人が離れていった港町として知られています。ここ基隆エリアから東の海の向こうに見える離島があります。それが今回向かう亀山島です。

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美しさと緊張感を併せ持った無人島「亀山島」

台湾東部の「亀山島」は、宜蘭県に属する小島で、面積わずか2.9平方キロメートル。上空からその地形を見ると「亀の型」に見えることからこの名になったという可愛らしいエピソードがあり、周囲ではホエールウォッチングなども楽しめる美しい自然が自慢の無人島です。

他方、かつては中華民国(台湾)軍の重要拠点という側面も持っており、言わば美しさと緊張感を併せ持った島と言ってよいでしょう。ひいては美麗島・台湾が抱える問題を象徴すると言ってもよいかもしれません。そんな亀山島に今回初めて上陸することができました。

チケッティングサイトのおかげで容易になった亀山島上陸

亀山島へのアクセスは、最も近い宜蘭県の烏石港からのフェリーに限られ、約30分ほどで上陸することができます。

上陸に際しては、地元・東北角および宜蘭海岸国家風景区管理所(以下、管理所)にて事前に申請を申し込む必要がありますが、後述するツアーに参加する場合は旅行代理店が代行して手配してくれるため日本人観光客が直接申請をする必要はありません。

また、ほんの数年前まで台湾現地の旅行代理店を介してのツアー参加が一般的でしたが、現在は台湾発の観光チケッティングサイト「KKday」などを利用すれば、日本語での予約や決済が可能。手軽にチケットを購入することができるようになりました。

今回、筆者もこの「KKday」で販売されている「亀山島上陸ツアー+亀山島周遊クルーズ」(約3〜3.5時間コース)を利用しました。価格は時期によって変動するようですが、筆者が購入したチケットは4631円。フェリー代、上陸の申請費、そして中国語ではあるもののガイドや保険代全て込みとして考えればかなり安いと思います。

ただし、上陸には人数制限があること、さらに天候次第では欠航することもあるため、この点は事前に理解した上で余裕を持っての申し込みをしたいところです。

台北近郊の大渋滞に巻き込まれ集合時間に遅刻……

9月某日、前述の「亀山島上陸ツアー+亀山島周遊クルーズ」の日を迎えたわけですが、この日の出航時間は朝の9時。事前案内によると、「出航時間の最低30分前には烏石港にチェックインするように」と書いてありました。

そのため、8時30分着を目指し、朝7時前には台北を出発。レンタカーの自走で烏石港を目指しました。通常であれば1時間前後で着くエリアですので「全然余裕っしょ!」と思っていたのですが、すっかり頭から抜けていたことがありました。それが台北の朝の大渋滞。

台北とその近隣のエリアの主要道では、朝と夕方に仕事などに出かける車・バイクで渋滞を起こすわけですが、まんまとこの大渋滞にハマりました。牛歩状態の高速道路で、時計がどんどん進んでいきます。

「まさかフェリーに間に合わないなんてことは……」と、かなり焦りましたが、果たして烏石港にたどり着いたのが8時50分。受付カウンターは人もまばらです。

「うわー……やっちまったか」と思いながらも港のスタッフに尋ねると、「アンタ日本人でしょ。代理店の人がアンタのことを探していたよ。ちょっと電話で聞いてあげるからここで待て!」と言ってくれました。

仕事外のはずなのに、必死に代理店の担当者に電話をかけてくれる港のスタッフ。しかし、電話は繋がりません。すると、今度は乗り場のほうまで走ってくれ、この人のおかげでギリギリセーフで乗船することができました。汗ダクにさせてしまった港のスタッフに中国語で「助かりました。本当にありがとうございます」とお礼を言うと「間に合ってよかった」と一緒に喜んでくれました。

筆者が遅刻したせいで関係のない人にも迷惑をかけてしまったことを深く反省しましたが、同時に台湾人の親切心を改めて感じ感動しました。


なんとか間に合ったフェリーは、一直線に亀山島へと向かっていきました。周囲の海は透き通るように美しく、かなり深いところまで目視することができました。前述の「KKday」の亀山島関連ツアーの中には「ホエールウォッチング」などもあるので、自然の美しさをより強く体験したい人なら、こんなチョイスもよいなと思いました。

他方、フェリーが亀山島に近づくと、ある一帯の海が白濁化しているところもありました。そして、その白濁エリアからは硫黄と熱気も伝わってきます。聞けば、亀山島自体が火山島で近海に硫黄が噴出しており、そのためだとのこと。「海を眺める温泉」は数あれど「海に浮かぶ温泉」とはかなり珍しいです。

無人島とはいえ、かなり行き届いている管理と施設整備


さて、亀山島の港が見えてきました。港には管理所のスタッフが待ち構えています。申請を許可した人数と相違がないかなどをチェックした後、上陸が許可され、ツアー客は一同亀山島へと足を踏み入れました。

亀山島は無人島ではありますが、細部にわたって管理が行き届いている印象で、港には大きなトイレがあり、そして島の守り神を祀る廟もあります。歩道なども整備されており、お年寄りでも散策にはさほど困ることはないように思いました。

ただし、モタモタするのは許されません。ツアーの団体の先頭と後ろには進行を促すスタッフがおり、特に後ろのスタッフは拡声器を使って「どんどん前へ進んでください」と声をかけてきます。ここで万一迷子になる人が出たり、時間が押してしまわないための徹底した配慮で、これには頭が下がる思いでした。

風光明媚な島の内外とは対照的に存在する軍事施設


周辺の美しい海岸と対照的なゴツゴツした山間の自然が面白い亀山島でしたが、さらに進むと、迷彩柄の施設が見えてきました。軍事施設です。

前述の通り、中華民国(台湾)軍の重要拠点でもある亀山島には複数の軍事施設が存在し、中には砲台などもあります。現在は本格的な稼働はしていませんが、万一の台湾有事の際にはここ亀山島もやはり再び軍が配備されることでしょう。特に昨今、日本でも報道されている台湾有事を念頭とした緊迫感からか、軍事施設の散策で、台湾人のツアー客の大半が真剣にガイドの話を聞いていました。


また、実はここ亀山島は、中国人の渡航は許されていません。また、ほんの数年前まで一部の台湾の離島から中国大陸へとフェリーでアクセスできたエリアでも、渡航が中止になっています。台湾と大陸の問題は多くの日本人が想像する以上に緊迫したものであると、亀山島の軍事施設見学で改めて感じました。

亀山島上陸は、台湾の風土と今の緊迫感を知る貴重な体験だった


軍事施設見学を終え上陸ツアーも終盤です。1850年代に亀山島に入植した福建人にちなみ観光用に建設された福建様式の家屋などを見学し、再びフェリー港へ戻りました。

美しい自然と緊張感が共存する亀山島。今回の上陸ツアーは、台湾の風土と今の緊迫感を知る上でも貴重な体験になりました。

前述の通り、ほんの数年前までは日本人観光客にとっては少々ハードルが高い亀山島上陸ツアーでしたが、今は「KKday」などの日本語対応のチケッティングサイトのおかげで、かなり便利に申し込みをすることができるようになりました。

コロナ禍があけ、再び再燃の兆しを見せる台湾ブームですが、定番の台北散策、人気の九份・十分などの散策に加えて、ときにはこういったコアなツアーに参加してみると、より深い台湾を体感できるように思います。筆者はレンタカー自走で遅刻してしまいましたが、電車やタクシーなどを乗り継げば約2時間ほどで烏石港にアクセスできる利便性も魅力です。

 


 

松田義人

Yoshihito matsuda 編集者・ライター
多くの書籍・雑誌・WEBメディアの編集や執筆を行うかたわら、台湾分野では複数の著書を持つ。近著に『パワー・スポット・オブ・台湾』(玄光社)、『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)がある。2024年刊行予定の自著『台湾温泉ガイド(仮)』(晶文社)『台湾あるある(仮)』(なりなれ社)を鋭意制作中。


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