【水がきれいな川ランキング】荒川・川辺川・ 五ヶ瀬川は10年以上連続でランクイン!

Posted by: あやみ

掲載日: Nov 27th, 2023

国土の約75%を山地が占める日本の川は、標高の高い上流から河口までの距離が短く、川の水は急勾配で流れ落ちるのが特徴です。今回は、日本の一級河川で水がきれいな川のランキングをご紹介します。何気なく景色に溶け込んでいる近所の川や、旅先で訪れた場所に流れている川をじっくり観察したくなるかもしれませんよ。

宮崎県高千穂峡
 


 

水質汚濁の指標のひとつ「BOD」とは?

今回紹介する「水がきれいな川ランキング」は、国土交通省が毎年7月の河川愛護月間に発表している「水質が最も良好な河川」をもとに作成しています。なお、水質調査の対象となる全国一級河川は159で、以下の両方の条件を満たす川が「水質が最も良好な河川」とされています。

・対象河川の各調査地点のBOD(生物化学的酸素要求量)年間平均値について、全調査地点で平均をとった値が0.5mg/L(環境省の定めるBODの報告下限値)
 
・対象河川の各調査地点のBOD75%値について、全調査地点で平均をとった値が0.5mg/L (環境省の定めるBODの報告下限値)

BOD(Biochemical Oxygen Demand)とは、生物化学的酸素要求量のことで、水質汚濁の指標のひとつです。生物が水中にある有機物を分解するのに必要とする酸素の量(mg/L)を表していて、川の汚染度が進むほど、数字が大きくなります。

つまり、​​BODが高いと、溶存酸素(水中に溶解している酸素ガス)が欠乏しやすい状態にあることを意味します。溶存酸素は、川の自浄作用や魚類をはじめとする水生生物の生活に不可欠なものなのです。

荒川・川辺川・ 五ヶ瀬川は10年以上連続でランクイン!

令和4年の調査では、全国一級河川の94%が、下記「最も良好な河川(全15本)」とされ、環境基準を満たしていました。

  • 後志利別川(北海道)
  • 尻別川(北海道)
  • 沙流川(北海道)
  • 荒川(福島県)
  • 黒部川(富山県)
  • 庄川(富山県)
  • 安倍川(静岡県)
  • 熊野川(和歌山県)
  • 北川(福井県)
  • 天神川(鳥取県)
  • 小鴨川(鳥取県)
  • 四万十川(高知県)
  • 球磨川(熊本県)
  • 川辺川(熊本県)
  • 五ヶ瀬川(宮崎県)

そのうち、10 年以上連続で「最も良好な河川」と評価された、荒川・川辺川・ 五ヶ瀬川の3本について詳しくご紹介します。

地域の人々の地道な清掃活動により水質をキープ「荒川」(福島県)

福島県・荒川桜づつみ公園
荒川桜づつみ公園

平成22年(2010年)から13年連続で水がきれいな川に輝いた「荒川」は、福島市内を流れる流路延長26.6kmの川です。水源は2,000m級の吾妻連峰で、途中で阿武隈川と合流します。荒川がきれいな理由は、はっきりとはわかっていませんが、急流できれいな山の水が早く町に流れてくること、弱酸性であることが考えられます。

しかし、20年ほど前の荒川は、ゴミ山があったり、家電が捨てられていたりして、決してきれいとはいえない状態だったそうです。そんな状況を見かねた地域の人々が1998年に「荒川づくり協議会」を立ち上げ清掃活動を開始。その後、参加者が増え続け「荒川クリーンアップ大作戦」として年間1000人以上が参加する規模にまでなったといいます。

このように、地域の人々の地道な清掃活動により荒川の水質は守られ続けているのです。

また、荒川に隣接する「荒川桜づつみ公園」は、約220本の桜並木があり桜の名所になっています。公園の背後には吾妻連峰が望め、「吾妻小富士の雪うさぎ」(ウサギの形の雪渓)と一緒に桜を愛でることができるのが魅力です。例年4月上旬〜中旬に桜が見頃を迎えます。遊具や散策路などがよく整備された公園で、芝生でピクニックを楽しむこともできますよ。

尺アユや尺ヤマメ、焼酎づくりなどで有名な清流「川辺川」(熊本県)


平成18年(2006年)から17年連続で、水質の良い川にランクインし続けている「川辺川」は、熊本県南部を流れる球磨川最大の支流です。全長約50kmで、深い山と谷に隔てられた八代市東部の五家荘が水源。上流は五木川といい、一帯は五木五家荘県立自然公園になっています。また、尺アユや尺ヤマメ、焼酎づくりなどで有名です。
 
現在、川辺川に流水型ダムの建設が予定されています。高さの違いによって流速を変えた複数の放流口を設置し、遊泳力の低い魚類でも行き来しやすい設計にするとか。これは全国初の試みだそうです。

とはいえ、希少種であるクマタカの繁殖成功率が低下したり、コウモリなどが生息する九折瀬洞の一部が冠水し、生き物が生息するのに適した環境でなくなったりすることが懸念されています。このダムの建設により、川辺川が実際にどのような影響を受けるのか、まだわかりませんが、動植物や水質に悪い影響をおよぼさないことを願っています。

川辺川付近の人気の観光スポットは「仰烏帽子(のけえぼし)山」です。標高1,302mで、3月は福寿草、5月頃にはヤマシャクヤクが登山道脇の林の中に見られます。さまざまな形をした石灰岩もあり、飽きずに登山できるのもポイント。相良村椎葉地区からの登山ルートは、途中まで道路が整備されており、登りやすいです。なお、登山道入り口から頂上までは約2時間半です。

上流部に蘇陽峡や高千穂峡など深く美しい渓谷を形成「五ヶ瀬川」(宮崎県)

宮崎県・真名井の滝
平成25年(2013年)から10年連続で水が美しい川として評価され続けている「五ヶ瀬川」は、宮崎県、大分県、熊本県の3県にまたがる川です。西臼杵郡五ヶ瀬町向坂山が水源で、岩戸川や日之影川などの支流を合わせ延岡平野に入り、大瀬川を分派後、日向灘に注ぎます。幹川流路延長は106kmです。また、上流部は一部に熊本県阿蘇地方を含み、蘇陽峡や高千穂峡といった深い峡谷を形成しています。

五ヶ瀬川で最も有名な観光地は、国の名勝・天然記念物に指定されている「高千穂峡」です。高いところで100m、平均80mの断崖が東西に約7kmにわたり続いていて迫力満点! この断崖は、太古に阿蘇山の火山活動によって噴出した火砕流が冷え固まり侵食されたものだそうです。

日本の滝百選に指定されている「真名井の滝」、高千穂峡の撮影スポット「高千穂三橋」のほか、神話や伝説が残る神秘的なスポットが目白押しです。間近で柱状節理や、深いV字型の美しい峡谷を観察するなら、貸しボートに乗ることをおすすめします。

[参考]
国土交通省淀川河川事務所
株式会社理工化学研究所
NHK/なぜ荒川は選ばれ続けているのか?
日経クロステック/高さ異なる3つの放流口で魚を守る、川辺川ダムで全国初の工夫
朝日新聞デジタル/クマタカなど希少種への影響も 川辺川流水型ダム 国交省が発表

[All photos by Shutterstock.com]

PROFILE

あやみ

Ayami ライター

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

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