日本の世界遺産【23】墳墓の大きさで権力の強さを示した「百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-」

Posted by: あやみ

掲載日: Jan 10th, 2024

大阪府堺市、羽曳野市、藤井寺市には、古墳時代の最盛期である4世紀後半から5世紀後半にかけて築造された多様な形状の古墳があります。これらは葬送儀礼の舞台としてつくられ、幾何学的にデザインされ、埴輪や葺石などで装飾されました。今回は、世界的にも珍しい「百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-」をクローズアップ。概要や見どころのほか、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。

大阪府・仁徳天皇陵古墳
 


 

墳墓の規模と形により権力を象徴した「百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-」

大阪府堺市・仁徳天皇陵古墳
古墳時代の最盛期である4世紀後半から5世紀後半にかけて、日本列島の王たちの墓群が盛んに築造されました。これらは、大陸に向かう航路の出発点であった大阪平野に位置します。ここは、かつて日本の政治や文化の中心地のひとつだったのです。

これらが築造されたのは、古代中央集権国家が成立する直前の時代です。そのため、激動する東アジア情勢へ対応するため、墳墓によって権力を象徴したと考えられています。

大阪府堺市・履中天皇陵
©️beibaoke / Shutterstock.com

2019年に世界文化遺産に登録された「百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-」は、墳丘の長さが約500mにおよぶ墳墓のほか、世界でも独特な鍵穴型の前方後円墳が多数集まっており、これらと多くの中小墳墓が密集して群を形成しているのが特徴です。また、型式は前方後円墳、帆立貝形墳、円墳、方墳の4種類です。

大阪府・今城塚古墳公園埴輪
©️tera.ken / Shutterstock.com

世界各地で見られる多くの墳墓の墳丘は、棺や室に盛土・積石しただけのものですが、これらの古墳の墳丘は、葬送儀礼の舞台として、幾何学的なデザインが施され、埴輪や葺石といった土製品で装飾された、建築的な傑作だといえます。

「百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-」の見どころは?

大阪府堺市・仁徳天皇陵古墳入口
一度は訪れたいのが、「仁徳天皇陵古墳」です。百舌鳥エリアの中央部に位置する前方後円墳で、日本最大の古墳でもあります。墳丘の大きさは486mと、エジプトのクフ王のピラミッドや、中国の秦の始皇帝陵よりも大きく、世界三大墳墓のひとつに数えられます。

墳丘は3段に築成され三重の濠がめぐり、10基以上の陪塚(小型古墳)があります。ちなみに、この古墳をつくるには、1日最大2,000人の人々が働いたとしても、15年以上かかるそうです。

内部は非公開のため、この古墳の全貌を見たいなら、永山古墳南側の陸橋の上、JR「百舌鳥駅」南側の陸橋の上、堺市役所高層館21階展望ロビーのいずれかに行くのがおすすめです。また、堺市博物館には復元した石棺が展示されており、VRで石棺のCGを見ることができますよ。


二重の濠と堤を持つ、古市古墳群で最も大きな前方後円墳「応神天皇陵古墳」も見逃せません。古墳の南側に位置する誉田八幡宮の神域になっており、まずはこの神社で参拝を済ませてから、応神天皇陵古墳の拝礼所に向かうとよさそうです。

応神天皇陵古墳は大きいため全貌を眺めるのは難しいかもしれませんが、古墳を間近で見ることができます。また、外濠外堤の小径を歩くと、春には桜、秋にはコスモスが古墳に彩りを添えます。

百舌鳥古墳群のほぼ中央にある前方後円墳「いたすけ古墳」も必見です。全長約146m、後円部径約90m、高さ約12.2mで、濠の南側には大規模な堤が築かれているのがポイント。

実はこの古墳は、1955年に住宅造成のため破壊されそうになりましたが、市民運動により保存が決定。後円部から出土した冑の埴輪は堺市の文化財保護のシンボルマークになっています。なお、こちらの古墳も外側からの見学のみ可能です。

仁徳天皇陵古墳、応神天皇陵古墳、いたすけ古墳への行き方

今回、見どころとしてご紹介した3カ所への行き方は下記の通りです。

仁徳天皇陵古墳

JR阪和線「百舌鳥駅」から徒歩約8分

仁徳天皇陵古墳
住所:大阪府堺市堺区大仙町
電話:072-228-7014(堺市文化観光局 歴史遺産活用部 世界遺産課)
公式サイト:https://www.sakai-tcb.or.jp/spot/detail/126

応神天皇陵古墳

近鉄「道明寺駅」から徒歩約15分

応神天皇陵古墳
住所:大阪府羽曳野市誉田3・5・6丁目
公式サイト:https://www.city.habikino.lg.jp/soshiki/shougaigakushu/bunka-sekai/bunkazai/bunkazai/iseki_shokai/kofun_chuki/2386.html

いたすけ古墳

JR阪和線「百舌鳥駅」から徒歩11分

いたすけ古墳
住所:大阪府堺市北区百舌鳥本町3丁338他
電話:072-228-7198(堺市文化観光局 歴史遺産活用部 文化財課)
公式サイト:https://www.city.sakai.lg.jp/kanko/rekishi/bunkazai/

仁徳天皇陵古墳のほか、遠く六甲山、あべのハルカスも見渡せる「堺市役所21階展望ロビー」


堺市を訪れたら、まずは「堺市役所21階展望ロビー」に行くといいかもしれません。地上80mの市役所最上階で、360度の展望が可能な回廊式ロビーになっています。仁徳天皇陵古墳はもちろん、堺の街並み、遠くは六甲山、あべのハルカス、金剛山などを見渡すことができますよ。料金が無料なのもうれしいですね。

あなご寿司のイメージ
また、堺市は「あなご」で有名。臨海工業地帯ができる前までは、あなごが水揚げされており、堺の出島にはあなご屋が軒を連ねていたそうです。たれを塗った「にぎり寿司」のほか、焼いたあなごを使った「箱寿司」「押し寿司」「うどんすき」など多彩な料理がありますので、気になるあなご料理をぜひ味わってくださいね。

堺市役所21階展望ロビー
住所:大阪府堺市堺区南瓦町3-1
電話:072-228-7493
営業時間:9:00〜19:00 ※令和4年8月1日から当面の間
定休日:年中無休(堺市役所全館停電日を除く)
料金:無料
交通アクセス:南海高野線「堺東駅」から徒歩約5分
公式サイト:https://www.sakai-tcb.or.jp/spot/detail/73

[参考]
百舌鳥・古市古墳群
堺市
堺観光ガイド
藤井寺観光サイト

[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

あやみ

Ayami ライター

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

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