誰にとっても旅が楽しいものであるために。「オストメイトのための温泉日帰りツアー」に参加して見えてきたこと

Posted by: 小梅

掲載日: Apr 10th, 2024

出かけた先でよく見かける「オストメイト」対応のトイレ。必要としている人がいるのは分かっていても、そもそも「オストメイト」自体、いまいちよく分からないという方も多いのではないでしょうか? 今回それを学ぶべく、2024年4月1日(月)に行われた「オストメイトのための温泉日帰りツアー」に参加してきました。このツアーに参加したことで“オストメイトではない側”の意識改革も必要だと実感したのでした。

ツアー参加者の集合写真

まずは知ろう!オストメイトとは

オストメイトマーク
「オストメイト」とは、病気や事故などによって消化管や尿管が損なわれ、お腹に排泄のためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した人のことを指します。括約筋がなく便意や尿意を我慢することができないため、それらを溜めておくストーマ装置に繋げて排便するといった仕組みです。

つまり、ストーマ装置に溜まった排泄物を捨てたり、腹部を洗浄したりするためのトイレが「オストメイト」対応のトイレというわけですね。

「オストメイト」は温泉に入りにくい?悲しい現実とは

バス内の様子
今回参加したのは、近畿日本ツーリストと、国産唯一であるストーマ装具メーカー・アルケア株式会社が連携して実施したバスツアー「オストメイトのための日帰り温泉ツアー」です。

オストメイトは、毎日ストーマ装具をお腹に装着して生活しているため、外出することに不安を感じている方が多いのだとか。その中でも、特にハードルが高くなるのが温泉や大浴場。その理由は、「他人の目が気になる」「他の人の迷惑になるのを避けたい」という意見から、「施設から入浴を断られてしまった」という胸が苦しくなる意見までさまざま。

もちろんですが、通常の生活においてストーマ装具を適切に装着していれば、排泄物が外に漏れることはありません。入浴時にも、ストーマ装具を必ず着用するというマナーやルールを守れば、衛生上の問題も一切ありません。

今回のツアー参加者からも、「手術後、大きなお風呂に入るのは初めて」、「温泉へ行くことはあっても、深夜や早朝など人が少ない時間帯にしか入らない」、「実際に入浴を断られ嫌な思いをした」といった生の声を聞くこともできました。

温泉での不安を解消するアイテムが登場!

龍宮城三日月外観
そこで今回のツアーは、「オストメイト」の不安を色々な角度から解消する3つのプログラムが用意されています。

  • 人気の日帰り温泉大浴場でゆったり入浴、脱衣所は専用スペースを用意
  • ストーマ装具のパイオニアであるアルケア工場見学と旅仲間と交流・情報交換
  • オストメイトの災害対策レクチャー

まず到着したのは、千葉県・木更津市に位置する「龍宮城スパ・ホテル三日月」。東京湾を見渡す絶景とともに、60種類以上の温泉が楽しめる人気の施設です。比較的空いている平日の営業開始時間に入館し、脱衣所も参加者専用スペースを用意しているため、脱衣や入浴後のケアも安心してできます。

バスラックシール
入浴の際に一番気になる点である「他人の目」についても、アルケアがサポートしてくれます。それは、入浴用シールである「バスラックシール」。これは、ストーマ装具の上に貼るシールで、防水機能に加えて目隠し機能が備わっています。というのも、ストーマ装具に厚みがあるため、今までのシールではデコボコと盛り上がった部分が目立ってしまうという難点がありました。そのため、シール表面をまだら模様にすることで、ぼかし効果がある錯視デザインとなっています。

入浴中の様子
入浴後には、「今後、積極的に温泉やお風呂に入ろうと思った」、「お風呂っていいなぁと改めて感じ、自分の体のことも大事にしようと思った」、「お風呂の中で、女性同士語りあえてとても楽しかった」と、喜びの声を聞くことができたのでした。

龍宮城スパ・ホテル三日月
住所:千葉県木更津市北浜町1番地
HP:https://www.mikazuki.co.jp/ryugu/

自分たちが使っているものを知るという大切さ

アルケア千葉工場 外観

入浴と食事を済ませ、次に向かうは「アルケア 千葉工場」の見学です。

ストーマ

ストーマ装具は、面板というお腹に貼る部分と排泄分が溜まっていくパウチ(ストーマ袋)で構成されており、それらがどのように完成していくのかを実際に見学することができます。アルケア千葉工場では、一般の工場見学は受け入れていないとのことで、このツアーの醍醐味ともいえるでしょう。

ガシャンガシャンと大きな音を立てながらテンポよく製品ができあがっていく様子は、いつまでも見ていられる「工場見学」ならではの楽しみがありますが、それぞれの工程の最後には必ず担当者がおり、一つ一つ品質を確認して合格したものだけが箱詰めされていきます。その周囲には独特な緊張感が漂っており、いかに真剣な作業が毎日繰り返し行われているのか、見ているだけでも十分に伝わってきます。

品質管理の実演の様子
とても頑丈に作られている

中でも特に興味深かったのは、パウチの耐圧試験の実演。あらかじめ水を入れたストーマ装具に圧をかけ、パウチがギュッと潰れていく様子をチェックするというシンプルなものですが、圧がかかった部分がポコッと丸くなるだけで破裂することはなく、耐久性の高さを間近で確かめることができました。

日常生活でふいに起こるアクシデントにもこれなら安心だなと感じる一方で、圧が徐々にかかっていく様子を見ながら「うわ、怖い……」と目を背ける参加者もおり、オストメイトの方々は、日々色々な不安を抱えながら生活をしているということに改めて気づいた一瞬でもありました。

パウチ製造体験
デコパウチの様子
デコパウチの完成!

その後には、ストーマ装具の製造体験にも挑戦し、自分で作ったストーマに各々がイラストやデコレーションをする「デコパウチ」も楽しんでいました。無機質なストーマ装具にイラストや文字を入れることによって、その人のカラーも出て一気に命が吹き込まれたように思えます。

ちなみに、「デコパウチコレクション」なるオンラインイベントも開催されており、アルケアも協賛しているそうです。

2024年も開催予定。誰でも参加できるので「オストメイト」を知る第一歩としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
 

デコパウチコレクション
問い合わせ先:decopouchcollection@gmail.com

何が起こるかわからない今だからこそ

アルケア・神藤貴徳氏により講義

また、オストメイトとして必要な情報が満載な「オストメイトのための災害対策」の講義も行われました。

非常時でも日常のケアを行えるようストーマ用品の備蓄はもちろん、万が一自宅から取り出せない場合を想定して、親戚宅や友人宅への分散備蓄なども考えておかないといけないことや、各自治体の支援対策も確認しておくことも大切。調べてみると、筆者の住んでいる自治体では、ストーマ用具の保管場所を提供していました。

日本国内のストーマ装具メーカーによって結成された団体「ストーマ用品セーフネット連絡会(OAS)」による無償提供などもあり、何かが起こる前に知っておくべきこと、対策すべきことが明確になった講義でした。

誰もがオストメイトになる可能性がある

工場見学の様子

オストメイトになる要因は、がんや潰瘍性大腸炎、クローン病といった炎症性腸疾患など、誰もがそうなる可能性を持っています。筆者も今回のツアーを通して、決して他人事ではないと思ったのと同時に、正しく知ることは知識に変わることを実感しました。

学びの多いバスツアー

このツアーが行われた2024年4月1日は、「障害を理由とする差別解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が改正施行された日。これにより、温泉旅館やホテルなどの、公衆浴場における入浴の拒否や不当な差別的扱いの禁止、合理的配慮が義務付けされます。

法律が改正されたことで、オストメイトの方々がより快適に過ごせるようになるのが一番ですが、私たち“オストメイトではない側”の配慮も非常に大切だと思います。ツアー参加者からの「生きていてよかった」という感想に心が大きく揺さぶられ、だからこそ旅は誰にとっても楽しいものであるべきと強く感じた旅となりました。

【オストメイトのための日帰り温泉ツアー】
実施日時:2024年4月1日(月) 8:30~18:00
■ツアー行程
8:30 JR 錦糸町駅発
9:30~13:00 龍宮城スパ・ホテル三日月着/温泉入浴、昼食、お土産購入
14:00~17:00 アルケア千葉工場着/講義「オストメイトの災害対策について」/工場見学/ストーマ装具製作体験
18:00 JR 錦糸町駅着・解散
旅行代金:18,000円
食事条件:昼1回
添乗員:同行

<近畿日本ツーリスト>
HP:https://www.knt.co.jp/area/shutoken/
<アルケア>
HP:https://www.alcare.co.jp/

[Photos by koume]
 


 

PROFILE

小梅

小梅 ライター

芸能事務所で約15年若手芸人のマネージメントに携わり、どっぷりお笑いの世界に染まる。退職後ライターに転身。ある日ふいに見た1本の韓国映画に心奪われ、そこから韓国映画・ドラマのチェック追われる毎日を過ごす。コンビニの新商品や地方のおみやげが大好き。

芸能事務所で約15年若手芸人のマネージメントに携わり、どっぷりお笑いの世界に染まる。退職後ライターに転身。ある日ふいに見た1本の韓国映画に心奪われ、そこから韓国映画・ドラマのチェック追われる毎日を過ごす。コンビニの新商品や地方のおみやげが大好き。

SHARE

  • Facebook