東京・文京区「東京カテドラル聖マリア大聖堂」へ
東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅から徒歩15分ほど。場所はホテル椿山荘東京の正面、銀色に輝く独創的な建築と、高い鐘楼が見えてきます。
こちらが今回訪れた、「東京カテドラル聖マリア大聖堂」。
一見しただけでは教会に見えない大聖堂を設計したのは、国立代々木競技場や東京都庁、広島平和記念資料館など、名だたる建築を手がけ「世界のタンゲ」と呼ばれた丹下健三。
1964年に竣工され、2024年には献堂60周年を迎える東京カテドラル聖マリア大聖堂ですが、その洗練されたデザインは今なお新しさをたたえ、名建築として知られます。
異世界のような荘厳な空間に圧倒される
聖堂内へ足を踏み入れると、広がるのはこちらの光景。荘厳な雰囲気にしばし圧倒され、写真を撮ることも忘れていました!
三角形が重なるようにして立体的に形作られた空間には天窓から光が降り注ぎ、コンクリート打ち放しの壁の陰影を照らし出します。
モダニズムの無機質さやコンクリートの重厚さが、祈りの場としての静謐さを演出。スタイリッシュな建築美の中に、凛とした空気が流れていました。
天窓が配置される天井の高さは、最高部で約40m。大聖堂を上空から見た際には、大きな十字架の形になっているのだとか。
さらに聖堂内には柱がないため、空間をより広大に感じられます。
聖堂内の正面、階段を数段上った場所にある祭壇中央には、高さ16メートルという大きな十字架が。背面の黄金色の大理石から差し込むやわらかな色の光が、モノトーンの教会内で特別な存在感を放ちます。
また、祭壇の左手には紋章のついた赤い椅子があります。こちらは司教が着座する椅子で、ギリシャ語の名称は「カテドラ」。
ちなみに「カテドラル」とは「カテドラのある教会」を指す言葉であり、その肩書が与えられる東京カテドラルは、カトリック東京教区の中心を担っているそうです。
信者席後方の2階には、パイプオルガンも配置。こちらは教会用のパイプオルガンとしては、日本最大の規模なのだとか。
ヨーロッパの大聖堂に似た、優れた音響効果も持つという聖マリア大聖堂。1月と8月を除く毎月の第2金曜日には「オルガンメディテーション」が開催されており、プロの奏者による演奏を聴くこともできますよ。
教会に欠かせない洗礼盤と洗礼室も、現代芸術の彫刻作品のよう。
ピエタ像はイタリアのサン・ピエトロ大聖堂にあるミケランジェロ作の原寸大レプリカ。大変有名な作品ですが、コンクリートで区切られた空間に安置されると、どこか違った表情が感じられました。
聖堂と丹下健三の関係とは
前身の聖堂の設立は1899年、カテドラルとなったのは1920年と、長い歴史を持つ東京カテドラル聖マリア大聖堂。当時は木造ゴシック式の聖堂で、信者席には畳が敷いてあったのだそう。
しかし1945年の東京大空襲によって焼失。その後、現在の大聖堂が再設計される運びになりました。
今となっては「世界のタンゲ」と言わしめる大建築家ですが、実は聖マリア大聖堂のデザインは丹下氏への直接の依頼ではなく、コンペで勝ち取ったもの。
しかしながら、1964年に教会をこのようなデザインで造り上げてしまうのは、卓越したセンスが感じられます。
大聖堂の外、教会の敷地の奥には、ルルド(フランスの巡礼地)の洞窟を再現した祭壇があります。
丹下健三はこのルルドを経由してから聖堂に至る動線を採用しました。これには、参道を経由して本堂に至る、日本古来の信仰の在り方が踏襲されているのだそうです。
そして丹下健三本人の葬儀も、ここ東京カテドラル聖マリア大聖堂で行われました。
大聖堂は見学自由!訪れる際の注意点も
東京カテドラル聖マリア大聖堂は、基本的に9時から17時まで開堂しています。聖堂入口にある受付に声をかければ、手続きなどは不要で自由に見学できますよ。
注意事項として、内部の写真撮影や飲食などは禁止。また、教会を訪れる際の基本的なルールもあわせてご確認くださいね。
また、主日のミサ(日曜日8時から14時頃)間の見学はできません。土曜日には結婚式が行われる場合もありますので、ご注意ください。
異質ながらも圧倒的な「東京カテドラル聖マリア大聖堂」。丹下健三の建築美と、信仰の場としての荘厳さが見事に融合した空間となっていました! 気になった方は、ぜひ実際に訪れてみてください。
[Photos by ぶんめい]