人気の観光地・金沢に遊びに行ったついでに、「ちょっと温泉にでも入りたい」と感じる瞬間もあるはず。金沢旅行に合わせて近場で楽しめる温泉地と言えば、どこになるのでしょうか?
そこで今回は北陸に在住する筆者が、金沢の奥座敷と言われる湯涌(ゆわく)温泉について紹介したいと思います。
加賀藩の大名も湯治に利用した金沢の奥座敷
金沢と言えば、もともと加賀藩の拠点があった街。最後の藩主である前田慶寧(よしやす)に至るまで14代も続いた名門が築き上げた文化都市ですが、そのお殿様たちが湯治に利用した加賀藩御用達の温泉が、湯涌温泉になります。
開湯の歴史は幾つか説があるようですが、西暦718年ごろに地元の農夫が、泉で体を癒すシラサギを見つけたところから、歴史が始まると言われています。
その説をとると、現在は開湯から1,300年。その間に加賀藩の湯治湯になったり、大正期にはドイツで開催された万国鉱泉博覧会で日本の名湯として紹介されたり、詩人で画家の竹久夢二が長期滞在したりと、さまざまな歴史を刻んできました。
地元の金沢人も日帰りで通う肌触りのいい温泉
現在は総湯である白鷺の湯を中心に、9件の宿泊施設が軒を連ねる静かな温泉街として人々を楽しませています。筆者が先日再訪した際には、雨が降っていたため客足はそこそこでしたが、普段は外国人観光客を含めて、浴衣姿で散策する人の姿でにぎわっています。
総湯の白鷺の湯は日帰り入浴が可能で、なんと料金が大人380円。大きな浴室と露天風呂があり、営業時間が午前7時から午後10時と長くオープンしているため、地元の人もちょっと足を延ばして通う人気の温泉となっています。
白鷺の湯の目の前にある駐車スペースに並ぶ車を見ると、金沢ナンバーの自動車も少なくありませんから、やはり多くの地元民が日常的に利用している様子が分かります。
湯涌温泉は無色透明で柔らかい肌触りで、泉質は低張性弱アルカリ性温泉、公式ホームページによると、
<神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・くじき・うちみ・切り傷・関節のこわばり・冷え性・動脈硬化・痔病・慢性消化器病・虚弱児童・やけど・慢性皮膚病・慢性婦人病>(湯涌温泉観光協会のホームページ より引用)
といった効能があると言います。白鷺の湯で話す機会のあった地元の年配女性に聞くと、通い詰めているうちにひざの関節の痛みが和らいだと語っていました。さすがの湯治場ですね。
金沢から日帰りで往復も可能
湯涌温泉には、素泊まり可能なゲストハウスを含めて、9件の宿が軒を連ねていると述べました。総湯からの大まかな距離順に言えば、さかえや 、山音(やまね) 、やました 、かなや 、金沢湯涌ゲストハウス 、湯の出 、百楽荘 、あたらしや 、秀峰閣 ですね。
その他、貴船商店、高尾食堂、湯の川食堂、陶器を扱う日暮らしなどのお店がメイン通り沿いにあり、白鷺の足湯、竹久夢二歌碑、薬師寺、稲荷神社、玉泉(ぎょくせん)湖の散策路など、耳目を楽しませてくれる施設も点在しています。
金沢湯涌江戸村 もあり、ホタルの生息地、みどりの里での朝市などもあるため、できれば一泊して楽しみたい温泉街。ただ、時間的に宿泊が厳しい場合は、金沢から日帰りで楽しむ方法もあります。
金沢駅から湯涌温泉のバス停まで、平日は1時間に1本程度、休日は1時間に1~2本程度のバスが運行しています。片道600円。所要時間は45分ほど。自家用車であれば30分ほど、人気の兼六園からの所要時間は20分ほどです。
金沢観光のついでに湯涌温泉に足を運び、白鷺の湯で日帰り入浴を楽しんで、食事や買い物をして金沢に戻るという楽しみ方ですね。
群馬県の草津温泉や静岡の熱海温泉など、大規模な温泉街といった印象ではありません。しかし、山間にたたずむ静かな隠れ湯といった温泉地で、メイン通りを取り囲んだ森の中からはヒグラシの声が聞こえてきます。
今年、金沢に足を運ぶという人は、サイドトリップとして湯涌温泉に足を運ぶというプランも楽しいですよ。
[湯涌温泉観光協会 ] [All photos by Masayoshi Sakamoto]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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