オランダと聞くと、「ドラッグ(すべての種類ではない)や売春が合法である」と思いつく人も少なくないと思います。そう、オランダは「自由の国」。これはドラッグや売春の合法化にみられるだけでなく、個人の自由を尊重し、外部からの移民を寛容に受け入れてきたオランダの伝統からもしっかりと伝わってきます。
とりわけ16世紀から17世紀にかけてヨーロッパ内で吹き荒れた宗教改革では、人文主義者エラスムスなどの影響を受け、プロテスタントの分離を勝ち取ったオランダ。この歴史が、「自由と多様性の革新の源流」になった事は間違いないといえるでしょう。
また、その後もカトリック教徒やユダヤ教徒を寛容に受け入れ、19世紀後半にはオランダの政治は、宗教団体が別々に共存し、唯一の政府のレベルで作用する、pillarisationのシステムに変身。カトリック、プロテスタント、社会民主主義党が共存し、それぞれが政府としての役目を果たすというシステムでした。戦後は、この体制が廃止され、若者の間でヒッピーカルチャーが広がります。
このような歴史を背景に、ドラッグの一部、そして売春が合法化されました。
合法化する事によって政府が厳しく管理できる体制になっており、オランダでは一般的にそれが良いことだと考えられています。実際、他のヨーロッパの国に比べてドラッグをする人の数は少なく、売春婦も登録性になっているので透明性という点では他の国より優れていると思います。
しかしその一方で、合法化をするという事は、「ドラッグ使用を撲滅する事を諦めているかのような姿勢である」、また、「女性をモノ扱いする事を認める態度だ」と批判する人もおり、賛否両論のあるトピックである事に間違いはありません。
どちらにしても、異なる歴史によって、国の在り方がここまで左右されるという事は非常に興味深い事ですよね。