福岡県宗像市・玄界灘に浮かぶ「沖ノ島」は、本土から約60キロメートル地点にある無人島。現在ユネスコの世界遺産リストにも登録されているこの沖ノ島は「神様が宿る島」として地元人を中心に崇められています。約10万点もの神宝が発見され、一躍脚光を浴びることとなったのは1954年。
これだけたくさんのお宝が、なぜ現代まで発見されなかったのか?そこには沖ノ島特有の「掟」があるからなのです。
「田心姫神」が祀られる神領の島
沖ノ島は、同じく宗像市にある「宗像大社」の神領とされています。宗像大社は天照大神の三柱の御子神を祀る神社で、三宮(沖津宮・中津宮・辺津宮)から構成されており、それぞれに「田心姫神(たごりひめのかみ)」「湍津姫神(たぎつひめのかみ)」「市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)」という名の女神が祀られています。
沖ノ島には「沖津宮」が鎮座、「田心姫神」が祀られており、神領であるゆえ一般人は許可なく立ち入ることはできません。この沖ノ島に滞在が許されているのは宗像大社の神職ただ一人。
女性は上陸不可、男性は1日限定
「田心姫神」は女性の神様なので、沖ノ島で古くから守られているのが「女人禁制」という掟です。理由は女性に対して嫉妬心を抱くことや、手漕ぎ舟での渡島が女性にとって過酷であることなど諸説あります。
たとえ男性であっても、沖ノ島に上陸できるのは年に一度だけ。日本海海戦(日露戦争)の慰霊を行う「現地大祭(5月27日)」のみ、参加希望の一般男性から限定200人が選ばれます。しかし、上陸の際には、裸になって禊を行わなければなりません!
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謎多き島に根付く「禁忌」とは?
これほどまでに神への信仰心を根強く残す沖ノ島。九州と朝鮮半島とを結ぶ玄界灘のほぼ中央という立地から、4世紀後半から9世紀末にかけて、中国大陸および朝鮮半島との交流の成就(国家の安泰と海路の安全)を願う重要な国家的祭祀が行われていたそうです。
「神領」として崇められている沖ノ島には、女人禁制や上陸前の禊の他にも、古くから言い伝えられている掟があります。
沖ノ島で見たり聞いたりしたものは、一切口外してはならない。
「一木一草一石たりとも持ち出しを禁ず」
沖ノ島からは、一切、何も持ち出してはいけない。
「四本足の動物を食すること禁ず」
牛や豚などの四本足の動物を食べてはいけない。
沖ノ島が長らく「未開の地」となっていたのは、人々が古くからこれらの禁忌を守ってきたから。その結果が、1954年から3次にわたって行われた発掘調査で発見された鏡、勾玉、金製指輪など約10万点の神宝です。このうち約8万点は国宝にも指定されました。現在、沖ノ島は「海の正倉院」とも称されています。
2002年にエジプト考古学者の吉村作治氏の提唱が発端となり、世界遺産を目指す運動が進められている沖ノ島。上陸することができない「世界遺産」誕生となるか!?今後の動向が注目されています。