チェコのモラビア地方北部、テルチという小さな町には、世界一美しいと言われるおとぎの国のような広場があり、1992年にユネスコ世界遺産に登録されました。
シュチェプニツキー池とウリツキー池、2つの水辺に挟まれたテルチは、美しい建物が目立ちます。中でも抜きん出て美しいのが、町のすべてが集まっているといっても過言ではない広場です。
大火を逆手にとって生まれた美しい広場
テルチの町は火災によりたびたび被害を受け、特に16世紀の大火は被害が大きいものでした。しかしそのとき復興にあたった領主がイタリア芸術に傾倒していたため、広場に面したすべての家の高さをそろえ、ルネサンス様式か初期バロック様式にするよう命令したのです。
その領主の名前をとって、広場は「ザハリアーシュ広場」と呼ばれています。細長い三角形の広場には、クリームイエロー、コーラルピンク、シルバーグリーン、アイスブルー、スモーキーベージュなどパステルカラーの建物がずらりと並び、あまりの統一感にテーマパークかと思うほど。これほど色彩豊かにかつ統一された広場は、世界にも類を見ないそう。
ザハリアーシュはかならずアーケードを造り、1階を公共通路とすることを定めたので、すべての建物がそれにならっています。現在はホテルやカフェ、陶磁器店などアーケードにはたくさんのお店や飲食店が軒を連ねています。
一方、色や装飾に関しては自由だったため、住民たちは自分たちの富と社会的地位をアピールするため、競うように外観の美しさにこだわったそう。そうしてこの、屋外美術館のような景観ができあがったのです。
広場の奥には泉があり、ペストで亡くなった人々を慰霊する聖母マリアの像が広場を見守っています。
ピンチはチャンス、とよくいいますが、ここテルチの広場の美しさはまさにそんな発想から生まれたよい例だと思いました。
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