実物大の恐竜を展示した博物館、拷問の道具が展示された博物館、世の中にはいろいろな博物館があるかと思います。富山にもユニークでエキサイティング、かつ風変りな博物館があるんですよ。しかも、県立の公的な博物館だから驚きます。
そこで今回は立山のふもと、芦峅寺(あしくらじ)にある立山博物館の一部、地獄と浄土(仏・菩薩の住む世界)を五感で体験できる「まんだら遊苑」について語りたいと思います。
山岳信仰の舞台である霊山・立山の世界観を再現した県立の施設
(C) 坂本正敬
富山県には富士山、白山と並び日本三大霊山の1つに数えられる立山があります。かつての修験者にとっては入山して地獄と浄土を体験し、生まれ変わって下山するという山岳信仰の対象となる山でした。
その世界観を表現した絵画が「立山曼荼羅(まんだら)」になりますが、その絵に描かれる地獄と浄土、さらには2つの世界をつなぐ登拝の道を、現実世界に再現した施設が富山には存在します。
同地は県立の博物館。その公的な施設の一部に、地獄の「地界」、浄土である理想郷の「天界」、さらには両界をつなぐ道「陽の道」が、建築家の六角鬼丈の手によって再現されています。
入場口から地獄の不吉さ体感させてくれる
(C) 坂本正敬
駐車場に自動車を残し、森の中の歩道を歩いていくと、前方に「まんだら遊苑」の料金所が見えてきます。同地はスタートから演出が魅力的。料金所に近付くと園内の方から不快なうめき声が地鳴りのように響いてくるのです。
乳幼児を連れて訪れていた他の観光客が、思わず入園をためらうほど・・・。不快な声を四六時中聞きながらチケットの販売をしているスタッフを気の毒に思い、ねぎらいの声を掛けると、遠いまなざしでこちらを見詰め返してくるだけで、何も返事はもらえませんでした。
スタートは立山の地獄を再現した「地界」から。これから訪れる人の楽しみを奪わないように最低限の情報を記すのみにとどめますが、最初に入る閻魔(えんま)堂はまさに地獄の雰囲気たっぷり。神経を逆なでする赤い稲光と叫び声、ごう音が、的確に来場者の神経を消耗させていきます。
「怖くないよ」と、彼女に豪語しながら胸を張って閻魔堂を出てきた大学生風の男子の顔も、青白く引きつっていました。
(C) 坂本正敬
他に地獄(地界)には、自分の声が鬼の声になって返ってくる井戸や、ふたを開けると地獄のにおいや寒さを体験できる洞窟などが存在します。常願寺川に突き出した不安定な精霊橋の先端に立つと、耳の錯覚なのか、風の音が鬼のうなり声に聞こえてきました。
胎内を体験できる天界・天卵宮では瞑想(めいそう)の時間も
(C) 坂本正敬
地獄を抜け、浄土(天界)へと続く道を歩くと、間もなく別の料金所が見えてきます。あらためてチケットが必要なのかと近付くと、料金所のボックスの中で女性の係員が先を促すようなそぶりを見せました。その通り先へ進もうとすると、
「ここからは天国です」と、女性係員の声が後ろで聞こえます。ユーモアだと思って笑って振り返ると、優しく笑い返してくれました。
同じく詳細は伏せますが、天国の中でも最も印象に残った場所は「天至界」。静かで広く穏やかな空間に天界・天卵宮と呼ばれる巨大な球体が横たわっています。
中では瞑想(めいそう)が許されていますので、靴を脱いで入り、心静かに目を閉じてみてください。遠くの方で何かの鼓動がゆっくりと聞こえてくるはずです。
閉じたまぶたの向こう側では、優しい光が浮かんでは消えていきます。聞こえてくる音は全てが揺らいでいます。近くに居た係員に聞くと、「胎内を再現しています」とのこと。時間が許せば何時間でも座っていられそうな空間でした。
天国の最後には、暗く曲がりくねったトンネルが待ち構えています。入り口で足が一瞬止まってしまうくらい、真っ暗な空間が口を開けていますので、手探りで進み、扉の外に飛び出してください。きっと太陽の明るさのありがたみを再認識すると思いますよ。
以上、立山のふもとにある県立の博物館を紹介しました。知名度は決して高いとは言えませんが、“いい意味で”期待を裏切ってくる施設です。富山の黒部や立山観光に訪れた際にはぜひとも立ち寄ってみてくださいね。
[立山博物館]展示館/遙望館/まんだら遊苑 – とやま観光ナビ ] [Photo by Shutterstock.com ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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