歴史あるナポレオン広場になぜモダンなピラミッドが建てられたのかと、疑問に持った方も少なくないと思います。古典的建物の中にぽつんと近代的なガラス張りのピラミッドがあるのは、かなり革新的です。
このルーブル美術館のピラミッドは80年代の建設当時大変な論争になりました。歴史的景観の中にモダンなピラミッドがあるのは全くふさわしくないという意見と、このピラミッドは古典と現代の融合という肯定的な意見で世論はにぎわったのです。
なぜこのようなガラス張りのピラミッドが作られたのでしょうか。またガラスが666枚使われたという都市伝説、この666という数字にまつわる獣の伝説を紹介したいと思います。
ミッテラン大統領の「グラン・ルーブル」の計画
1980年代、ミッテラン大統領は「パリ大改造計画」を発表しました。その計画の中に展示面積を2倍に拡大させる「グラン・ルーブル」の計画も含まれていました。当時ルーブル美術館は展示スペースを拡大し、450万人の入場者を受け入れる体制を整える必要があったのです。
大蔵省が入っていたルーブル宮殿を改築し、現在のようなルーブル美術館に。ミッテランはこの改築にあたってアメリカの建築家イオ・ミン・ペイにエントランスのデザインを依頼しました。
建築家イオ・ミン・ペイはなぜルーブルにピラミッドを置きたかったのか
(C) Nanako Kitagawa
アメリカ人建築家イオ・ミン・ペイはワシントンの「ナショナルギャラリー」など、すでに世界的に有名な美術館などの設計を手がけていました。イオ・ミン・ペイによると、デザインのピラミッドの下ではルーブル美術館の地下から来場者が入場し、観光客の新しい流れが生まれることを想像したそうです。
ガラスのピラミッドは太陽の自然な光がさします。地下に自然な光が包まれ、入場者が四方から行き交うイメージが湧いたのでしょう。
またイオ・ミン・ペイは新しいルーブルのエントラスをデザインする際に、歴史を強く意識したそうです。世界有数の美術品をコレクションをするルーブルに文明のシンボルをピラミッドを置くことは文明の回帰を示したかったのかもしれません。
ミステリアスなルーブルのピラミッド
(C) Nanako Kitagawa
エジプトのピラミッドにはミステリーがつきまといます。現在のように科学も発達していなかった時代にエジプトであのようなピラミッドが建設されたのは人類の不思議の一つ。このミステリアスなイメージのピラミッドを現在のルーブルに建設することは、多くの憶測が飛び交いました。
その一つが、ルーブルのピラミッドのガラスが666枚使われたという都市伝説。エジプトのピラミッドは666枚の石で作られています。666は魔の数字。666は獣を呼ぶ反キリスト的な意味を持つそうです。
実際ルーブルのピラミッドは673枚のガラスが使われていると公式発表されているので、都市伝説に過ぎません。しかし、大ヒットした小説「ダ・ヴィンチ・コード」でルーブル美術館が舞台となっており、再びこの都市伝説が囁かれるようになりました。
現在ルーブル美術館のピラミッドは観光客が訪れるパリのシンボルの一つとなりました。こんな観光スポットに隠された都市伝説があったのには驚きですね。大ヒットした「ダ・ヴィンチ・コード」はルーブル美術館をますますミステリアスな存在へと仕立てあげました。ルーブル美術館の都市伝説は再び脚光を浴びています。
[LE FIGARO.fr]
[LOUVRE]
[Photo by Shutterstock.com]
Nanako Kitagawa ライター
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。
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