ずっと先のことかもしれませんが、誰にもいつかは訪れる死。「死に様は生き様」と言われますが、その名を人々の記憶に刻んだ人物たちは、この世を去る瞬間、どのような言葉を残したのでしょうか。
死にとうない(一休)
「とんち」で有名な室町時代の禅僧、一休さん。その臨終の言葉は「死にとうない」だと伝えられています。悟りの境地にたどり着いたとされる一休さんが最後に「死にたくない」と呟いたというのは、なんとも興味深いですね。一休さんほどの高僧が残した言葉。文字通りではなくもっと深い意味があるのかもしれませんが、その真意は誰にもわかりません。一休さんが私たちに残してくれた、究極の禅問答なのかもしれませんね。
あと10年生きたいが、せめてあと5年の命があったら、本当の絵師になられるのだが(葛飾北斎)
死後170年近くが経った今も、日本のみならず世界で高い評価を受けている葛飾北斎。そんな巨匠のなかの巨匠が最後に呟いたとされる言葉は「あと10年生きたいが、せめてあと5年の命があったら、本当の絵師になられるのだが」。
まさに北斎の画家としての妥協なき、尽きることのない探求心が集約された言葉ですね。北斎はあと5年、10年生きて何を表現したかったのでしょうか。生涯情熱をかけて追い求める「何か」がある人生は、なんとも力強いエネルギーに溢れています。
いっぱい恋をしたし、おいしいものを食べたし、歌もうたったし、もういいわ(越路吹雪)
「日本のシャンソンの女王」と称される越路吹雪。戦争、そして戦後と、激動の時代を大好きな歌と共に、駆け抜けるように生きた越路さんは、56歳という若さでこの世を去りました。
「あの時ああしていれば・・・」と最後に後悔するよりも、たった一言「やりたいことは全部やった、生きたいように生きることができた。もう、満足」と笑顔で人生を締めくくりたいですね。
おい、いい夫婦だったなあ(徳川夢声)
作家、俳優など多方面で活躍された徳川夢声は、奥様に「おい、いい夫婦だったなあ・・・」と伝えて息を引き取ったのだとか。「この人と生涯を共にできてよかった」。心からそう思える人と巡り合い、その人に見守られながら目を閉じることができる人生はどんなに温かく幸せでしょうか。そう思うと、残りの人生、一分でも一秒でも大切な人と過ごせる時間を慈しみたいですね。
幸せだ(ラファエロ)
ここまで日本の偉人の言葉をピックアップしてきましたが、ヨーロッパからもひとつお伝えしたいと思います。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロと肩を並べる「ルネサンスの三大巨匠」とされるラファエロは次のような言葉を残してこの世を去ったと言われています。
「幸せだ」
神さまのもとへやっと行くことができる・・・そう思って呟いた言葉なのかもしれませんが、ただ一言「ああ、幸せな人生だった」と幸福な感覚に包まれて旅立つことができるなんて、本当の本当に最高な人生ではないでしょうか。
露と落ち 露と消えにし わが身かな 浪速のことは 夢のまた夢(豊臣秀吉)
最後にお伝えするのは秀吉の辞世の句。この句の解釈には諸説ありますが、「人生は露のよう。栄華の日々も何もかも、まるで夢のように儚いものであった」という意味が込められています。
貧しい農民の子から天下人にまで登り詰め「わしの意のまま、万とぼしからず」とまで唱えた秀吉。私たちが「これがあれば幸せになるだろう」と日々追い求めているものを全て手に入れたような人物でさえ、最後にこのような言葉を残したのですね・・・。
「儚」という漢字は「人の夢」と書きますが、人の一生とは夢のように一瞬でなんとも儚いもの。だからこそ、一瞬一瞬をかみしめて、大切に生きたいですね。
まさにこの世から去ろうというその瞬間、あなたはどんな言葉を残すと思いますか?
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