世界には街全体が世界遺産に登録されている場所があります。
それが世界遺産の登録名称に「旧市街」や「歴史地区」と名の付くところ。一歩足を踏み入れればタイムスリップしたかのような気分になる、ヨーロッパの美しい世界遺産の街10選をご紹介します。
ドゥブロヴニク旧市街(クロアチア)
近年日本で人気、知名度ともに急上昇しているクロアチアのドゥブロブニク。ジブリアニメ「紅の豚」のモデルとなったことでも知られています。
かつてこの街は海運交易によって発展した小さな共和国でした。旧市街は、街を守るために8世紀に建設が開始され16世紀ごろに現在の姿となった、高さ25m、周囲約2kmの城壁で囲まれています。
紺碧のアドリア海と、旧市街にひしめくオレンジ屋根の歴史的建造物が織りなす風景は「アドリア海の真珠」の名にふさわしい絶景です。
エディンバラの旧市街と新市街(スコットランド)
イギリスの構成国のひとつであり、ヨーロッパ最古の歴史をもつ王国スコットランド。その首都が堅牢な城塞であるエディンバラ城をシンボルとするエディンバラです。
エディンバラの街は、エディンバラ駅を挟んで南側の旧市街と北に広がる新市街の両方が世界遺産。旧市街の石畳の道路や重厚な石造りの建物の数々はこの街が歩んできた歴史の長さを物語ります。
訪れる人にどこかなつかしさを感じさせる、詩情あふれる街並みがそこにあります。
ポルト歴史地区(ポルトガル)
ドウロ川の河口に位置しポートワインの積出港としても知られるポルトは、ポルトガル第2の都市。貿易で栄えたローマ時代には「ポルトゥス・カレ(カレの港)」と呼ばれ、国名「ポルトガル」の由来にもなりました。15世紀にはエンリケ航海王子の外洋進出の拠点となり、さらなる発展を謳歌します。
そんなポルトは街全体が歴史文化遺産の宝庫。旧市街を歩けばまるでここだけ時の流れが止まっているかのように感じられます。
坂の街としても知られるポルトでは、家々が坂にへばりつくように立ち並ぶ姿が見られます。他のどの場所とも違う、ここにしかない哀愁のにじむ街がここポルトなのです。
世界で最も美しい本屋と壁画、町全体が美術館のようなポルトの町
コルドバ歴史地区(スペイン)
スペイン南部、アンダルシア地方に位置するコルドバは、8世紀にイスラム勢力に征服されイスラム文化を受容、発展させてきました。その後13世紀にカスティリャ王国に占領されてからは、すでにあった建物をベースにキリスト教徒の街を築いてきたのです。
そんな歴史から古今東西の文化が融合した街並みがゴルドバの魅力。西ヨーロッパの他の国や地域とは異なる独特の景観や雰囲気が随所にあり、まさに街全体が博物館のような場所です。
最大の見どころは785年にイスラム美術の粋を集めて建設された巨大モスク、メスキータ。
16世紀にキリスト教の大聖堂に改装されましたが、手が加えられたのは中央部のみ。現在でもイスラムの芸術美が楽しめる教会なのです。
フィレンツェ歴史地区(イタリア)
「屋根のない博物館」とたたえられるフィレンツェは、古代ローマ時代より花の女神フローラの街として繁栄しました。12世紀に自治都市となってからは毛織物業や金融業を発達させてトスカーナ地方を支配、フィレンツェ共和国の首都となりました。
「花の都」フィレンツェは、同時にルネッサンスの発祥地でもあります。キリスト教があらゆる物事の中心となり、個人の感覚や感情までが制限されていた時代に、愛や美、自由といった価値を大切にし、「人間の再生」を目指した動きがルネッサンスでした。愛と美を求めた人々が育んだフィレンツェの街並みは、今なお甘美で華やかで、誇りにあふれています。
タリン歴史地区(エストニア)
バルト三国のひとつに数えられるエストニアの首都タリン。「タリン」とは、「デンマーク人の城、街」という意味で、その名の通りデンマーク人が丘の上に城を築いたのが街のはじまりです。
13世紀頃に開かれた港はバルト海きっての良港として栄え、街はにぎやかに発展を遂げました。
「中世が生きた博物館」とも呼ばれるほど、中世が色濃く残る街はまるで絵本の世界。ロシアや北欧など他国の影響を受けながら独自の文化を発展させてきたこの街は美しき歴史の証人です。
プラハ歴史地区(チェコ)
チェコの首都プラハは1000年以上の歴史を誇る古都。その美しさから「黄金の街」「百塔の街」「魔法の都市」といった数々の異名をとり、人々を惹きつけてやみません。プラハの歴史は6~7世紀にさかのぼり、9世紀には現在も街のシンボルとなっているプラハ城のもととなる城が建てられました。
14世紀にボヘミア王カレル1世が神聖ローマ帝国皇帝カール4世となってからは、プラハを代表する壮大な建築物が次々に建設され、「黄金のプラハ」として栄華を誇りました。
街にはロマネスク、ゴシック、ルネサンス、さらにはロココ、アール・ヌーヴォーといったあらゆる建築様式が混在し、その美しさを競い合っています。重厚でありながらも繊細で華やかなプラハの街並みには心を動かさずにはいられません。
リヨン歴史地区(フランス)
フランス南東部、ローヌ・アルプ地方に位置するリヨンはフランス第2の都市。日本でも有名なポール・ボキューズをはじめ数多くのシェフを輩出した美食の街としても知られています。
紀元前1世紀にはローマ帝国のガリア植民地の首府として栄えていたという古い歴史をもち、15世紀以降はフランス・ルネッサンスの中心地となりました。
旧市街には車が通れないような細い道が張り巡らされており、路地散策も楽しみのひとつ。フランスを代表する大都市でありながら、中世からルネッサンスにかけての古い街並みを残す姿に感銘を受けることでしょう。
サンクト・ペテルブルグ歴史地区と関連建造物群(ロシア)
ロシア観光のハイライトとなるサンクトペテルブルクは、ロシアでも比類ない美しさを誇る街。街のあちこちに運河が走るその景観から、「北のヴェニス」とも呼ばれています。
1703年にピョートル大帝が莫大な費用をかけて街を建設、のちのエカテリーナ2世がエルミタージュ美術館を建て、芸術都市としての存在感を強めていきました。
世界三大美術館の一つで、建物自体が豪華な芸術品といえるエルミタージュ美術館や、金色のドームが輝くイサク聖堂など見どころも多く、街全体が優雅な建造物で埋め尽くされています。
クラクフ歴史地区(ポーランド)
クラクフは11世紀半ばからおよそ550年のあいだポーランド王国の首都として栄えた街で、「ポーランドの京都」とも称されます。ポーランドの他の都市が第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けたなか、クラクフは戦災を免れたため、街は中世そのままの趣を残しています。
ワルシャワに首都の座を譲った今も、クラクフは文化、芸術、学問の都であり続け、ヨーロッパで最も美しい街の一つに数えられています。
街全体が世界遺産に登録されているだけあって、歴史・文化的な重要性が高く、美しい街ばかりですね。世界には、他にもたくさんの世界遺産の街があります。
あなたも世界遺産の街を訪ねる旅に出かけてみませんか。
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