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日本からは2冊ランクイン!目利き書店員が選んだ死ぬまでに読みたい世界の本25

Posted by: トゥルーテル美紗子
掲載日: Oct 15th, 2016. 更新日: Jan 13th, 2017
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人生に旅心をくれる、読書の秋に読みたい本7選

アメリカはポートランドにある、世界で一番大きいといわれている古書店「パウエルズ・ブックス」。その書店員が「死ぬまでに読みたい世界の本25冊」を選びました。アメリカ以外の国から小説を中心に様々な作品が選ばれ、日本からは2冊選出されました。選ばれたのは、一体どの本でしょう。


『半分のぼった黄色い太陽』(ナイジェリア)

ナイジェリア南部の町、エヌグ生まれの女性作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの長編小説です。1967年から1970年までナイジェリアの南東部に存在した、ビアフラ共和国の物語。アティーチェはこの小説で、2007年にオレンジ賞(優れた女流作家に与えられるイギリスの文学賞)を史上最年少で受賞しました。

英題:Half of a Yellow Sun
著者:Chimamanda Ngozi Adichie

『チェルノブイリの祈り』(ベラルーシ)

ウクライナ東部のチェルノブイリで起きた原発事故は、今でも多くの人の生活に影を落としています。数百人にも及ぶその被害者をインタビューしたノンフィクションが、『チェルノブイリの祈り』です。2015年にノーベル文学賞を受賞したことでも話題になりました。

英題:Voices from Chernobyl: The Oral History of a Nuclear Disaster
著者:Svetlana Alexievich

『丁子と肉桂のガブリエラ』(ブラジル)

物語の冒頭で、主人公は自分の妻の不倫現場に出くわし、妻と不倫相手を銃殺します。そんな衝撃的な場面から始まる長編小説です。

英題:Gabriela, Clove and Cinnamon
著者:Jorge Amado

『巨匠とマルガリータ』(ロシア)

「もし人生でたった一冊しかロシア文学が読めないとしたら、この本を読みなさい」とパウエルズ・ブックスの書店員が絶賛する傑作長編小説。ウクライナ生まれの作家、ミハイール・ブルガーコフの代表作としてロシア、ウクライナで絶大な人気を誇ります。

英題:The Master and Margarita
著者:Mikhail Bulgakov

『見えない都市』(イタリア)

現代イタリア文学を代表する作家、イタロ・カルヴィーノのファンタジー小説。マルコ・ポーロがフビライ・ハーンが同時代に生きるという奇想天外な設定が楽しい長編です。

英題:Invisible Cities
著者:Italo Calvino

『傾城之恋』(中国)

中国で最も尊敬されている現代小説家の一人、アイリーン・チャン(張 愛玲)の6つの短編が収められています。映画化・舞台化もされています。

英題:Love in a Fallen City
著者:Eileen Chang

『マイケル・K』(南アフリカ)

ノーベル賞作家、J.M.クッツェーの代表作です。内戦の続く南アフリカで、自由を求めて逃走するマイケルが主人公。「自由な世界に生きていられることに感謝したくなる本」との評です。

英題:Life and Times of Michael K
著者:J. M. Coetzee

『石蹴り遊び』(アルゼンチン)

これは、普通の小説ではありません。なぜなら冒頭から普通に読む方法と、小説内の指示に沿って様々な章をとびとびに読む方法の2種類があるからです。書店員はその手法を「イライラする」と言いつつ、絶対読むべきだと薦めています。

英題:Hopscotch
著者:Julio Cortázar

『私の素敵なお友だち(未翻訳)』(イタリア)

1950年代のナポリ郊外から、物語は始まります。二人の女性の、何十年にもわたる友情を描きます。友情だけでなく、階級社会や政治、フェミニズムなど様々なテーマを持つ作品です。

英題:My Brilliant Friend
著者:Elena Ferrante

『あまりにも騒がしい孤独』(チェコ)

映画『英国王給仕人に乾杯!』の原作者として知られるボフミル・フラバルの長編小説です。一度は発禁になったこともあるこの作品は、ナチズムとスターリニズムに支配されたチェコの状況を克明に描き出しています。

英題:Too Loud a Solitude
著者:Bohumil Hrabal

『鏡(未翻訳)』(ウルグアイ)

ウルグアイのジャーナリストであり作家のエドゥアルド・ガレアーノによる、詩的なノンフィクション作品。5000年にも及ぶ人類の歴史を再認識できる一冊です。

英題:Mirrors
著者:Eduardo Galeano

『骨人間たち(未翻訳)』(ニュージーランド)

ニュージーランドの先住民マオリ族を題材にした、ミステリーともラブストーリーとも、冒険譚ともとれる作品です。この作家唯一の小説にして、1985年のブッカー賞受賞作。

英題:The Bone People
著者:Keri Hulme

『少女ソフィアの夏』(フィンランド)

ムーミン谷シリーズの作者として知られるトーベ・ヤンソンの短編集。少女ソフィアとその祖母の温かい交流、そしてスカンジナビア半島の美しい夏を描いた、隠れた名作です。

英題:The Summer Book
著者:Tove Jansson

『アニー・ジョン』(アンティグア)

カリブ海に浮かぶ小国、アンティグアに生まれ育った少女の生涯を描きます。作家ジャメイカ・キンケイド初の作品にして自伝的な小説です。

英題:Annie John
著者:Jamaica Kincaid

『独立の民』(アイスランド)

1955年にノーベル文学賞を受賞したハルドール・ラックスネスによる小説。20世紀初頭のアイスランドを舞台に一介の羊飼いが自立を求めて奮闘する、ユーモアにも富んだ物語です。

英題:Independent People
著者:Halldór Laxness

『ニア・トゥー・ザ・ワイルド・ハート(未翻訳)』(ブラジル)

ブラジルの女性作家クラリッセ ・リスペクトールが、23歳の若さで書き上げた初めての小説。小さな借家の一室で書き上げた傑作は発刊されると同時に話題をさらい、作家は「ハリケーン・クラリッセ」と呼ばれました。

英題:Near to the Wild Heart
著者:Clarice Lispector

『白い心臓』(スペイン)

ノーベル文学賞候補にしばしば名前が挙がるハビエル・マリウスの作品。愛と秘密、そして殺人が交差するストーリー。人間同士わかりあうのはなんて難しいんだろうと思わせられる名作です。

英題:A Heart So White
著者:Javier Marías

『絶妙なバランス(未翻訳)』(インド)

舞台は1975年、インドの海沿いにある名もない町。インド、そしてそこに生きる人々を生き生きと描いた友情と愛の物語です。

英題:A Fine Balance
著者:Rohinton Mistry

『塩の都市(未翻訳)』(サウジアラビア)

西洋の産業主義と、サウジアラビアの伝統。相容れない二者の対立を描いた問題作は、当初サウジアラビアで最初発禁になりました。「20世紀に発刊されたアラビア語の小説の中で、最も重要な一冊では」と書店員に絶賛されています。

英題:Cities of Salt
著者:Abdelrahman Munif

『人生使用法』(フランス)

フランスの知性、ジョルジュ・ペレックによる長編小説です。ジョルジュ・ペレックは過去に「e」を使わずに長編を書くという大胆な試みをしており、そんな言葉遊びの技巧が本書にも発揮されています。

英題:Life: A User’s Manual
著者:Georges Perec

『白の闇』(ポルトガル)

世界中の人間が次々に失明していくというストーリー。1998年、ポルトガルで今のところ唯一のノーベル文学賞受賞者、ジョゼ・サラマーゴの長編小説です。1995年に刊行され、2008年には日本・ブラジル・カナダ合作で映画化もされ、話題を呼びました。

英題:Blindness
著者:José Saramago

『肉桂色の店』(ポーランド)

第二次世界大戦中、ゲシュタポの銃に倒れたユダヤ系作家、ブルーノ・シュルツの短編集です。日本語では『シュルツ全小説』で読むことができます。現実と虚構が混ざり合う世界観は、今までにない読書体験をもたらしてくれるでしょう。

英題:The Street of Crocodiles and Other Stories
著者:Bruno Schulz

『土星の環』(ドイツ)

ドイツに生まれイギリスへ移住した作家、W.G.ゼーバルトによる長編です。名もなき語り手が、イギリスのサフォーク州を徒歩で旅してまわる様子を綴ります。そう聞くと旅行記のようにも思えますが、旅行記ではない。なんとも不思議な作品です。

英題:The Rings of Saturn
著者:W. G. Sebald

いよいよ最後は、日本から選ばれた2作品です。

「羅生門」

日本人にはおなじみ、芥川龍之介の『羅生門』です。西洋では「黒澤明の映画『羅生門』の原作」として知られており、芥川龍之介の知名度はいまひとつ。芥川作品の多くは短編小説で読みやすく、かつ日本の古典への導入にもなるので、もっと海外の人にも読んでもらいたいですよね。

パウエルズ・ブックスでは芥川龍之介を、「近代短編小説の父。悲劇的で短すぎる生涯、そして邪悪な影を感じる作品性から、カルト的に崇拝されている」と紹介しています。

『羊をめぐる冒険』

世界で最も著名な現代作家の一人といっても過言ではない村上春樹の長編小説です。アメリカでは比較的初期の作品が好まれている印象があり、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』は未だに書店店頭で見かけます。

その中でもパウエルズ・ブックスが選んだのは、『羊をめぐる冒険』。これは村上作品で最初に英訳された本であり、「たまらない魅力、そしてとどまることを知らない独創的なエネルギーを見せつけ、後に世界的な人気を生むきっかけになった」と評されています。確かに、次々とページをめくりたくなる独創的な展開に魅了された人が多いのではないでしょうか。

ちなみに英題の『A Wild Sheep Chase』は、古くはシェークスピアの『ロミオとジュリエット』にも言及がある「Wild goose chase」という表現のもじりでしょう。
Wild goose chaseとは、日本語でいう「いたちごっこ」のように堂々巡りでらちがあかないこと、または無理難題のことを意味します。まさに羊を見つけ出すために主人公が奮闘するこの小説をぴったり表した、最高にいかしたタイトルです。

いずれの本も、小説家が生まれた国の歴史や文化をいきいきと描いています。読んでいるだけで、その国を旅した気分になれるかもしれません。

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トゥルーテル美紗子

Misako Treutel ライター/翻訳業
1986年生まれ。大学では英米文学・英語学を専攻していたが、授業そっちのけで留学、国際インターンシップ、旅に明け暮れる。大学卒業後は出版社に入社し、約80点書籍を制作。2015年に退社し、現在は米国シアトル在住。

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